さて、ECBが国債購入プログラムを発表し、市場はリスクONモードになりました。
今回の国債購入プログラムは事前に報じられていたものですが、正式に発表されてそれがGo!Go!サインとなったようで、あらゆる市場が一気にリスクONモードに。
今回の国債購入プログラムは「OMT」Outright Monetary Transactionsと名付けられ、まぁ名前はどうでもいいんですが、名前だけでなく中身も、これまでのものとは違います。
キン・ザ・ザさんから頂いたご質問(http://jovivi.seesaa.net/article/289506815.html#comment)にもお答えする形でお話ししていきます。
今回の国債購入プログラムがこれまでのものと比較してどう違うのかと言いますと、
@財政を立て直す計画を立ててちゃんとやりますと約束して、モニターされることを受け入れないとダメ
→これまでのように、国債価格が下がって利回りが上昇してくるとお助けマン的にECBが買い支えてくれる、新発国債の入札前に利回りが上昇しちゃってて新発債の入札が厳しくなりそうな時にはECBが国債を買って利回りを下げてくれる、でもそれをやってもらった当のスペインやイタリアは相変わらずのずぶずぶ財政を続け・・・っていうのは今回はダメよ、ちゃんと財政立て直そうとしないなら国債買ってあげないよ、になっています。
A約束やぶったらそこで購入停止
→これまでみたいになぁなぁにはいかないよと。事前に報じられていたところではこれが「約束破ったら買った国債を売却」だったんですが、そんなわけないでしょと見られてましたがやはり違いました。約束破ったらそこまでで購入を停止、新たに買わない、というものです。
B無制限で買い取る
→今回はこれを宣言したのが大きいです。これまでみたいに、ここまで来るともうそろそろ限界じゃないか?と市場が疑う場面もあったわけですし、「ECBの国債買い入れも無制限にできるわけじゃないんだから」と言われていたところですが、今回は高らかに「無制限に買います!」と宣言しましたから、これはインパクト大きいです。「売りでケンカ仕掛けてくるやつはどこからでもかかってこい!こっちは無制限に買い続けるぞこのやろう!」という宣言ですからね。
C購入する国債は残存1〜3年のもの
→これまで同様に新発債は買いません。これまでと違ってどのへんのゾーンの残存期間の債券が対象となるのか明確になりました。つまり、これから投資家はこのゾーンばっかり買うようになります。このゾーンの国債だったら買ったあとでどんなに下落して利回り上昇してもECBが無制限に買い上げてくれるわけですからね。安心です。結果として財政状態の悪い国の国債の残存期間がどんどん短くなっていく、ということが考えられます。補助輪を外した後の自転車操業がスムーズにいくのか、ちょくちょくやってくる国債の借り換えがスムーズに行われるようになるのか気になるところです。
D購入代金はきっちり市場から吸い上げて、購入代金が結果として流動性供給になってしまわないようにする
→これまでも「不胎化しているので大丈夫」と言われてきました。今回も「きっちり不胎化するから、市場にお金がじゃぶじゃぶになることはない、そんなことにはならんから安心しろ」と言ってます。
EECBが購入した国債は民間債権者と同様の扱いで優先債権者にはならない
→これまではたぶん明確には宣言されていなかったと思います。今回はそう発表されています。ただ、ギリシャの時は民間はヘアカットで公的の分はそのまんまでしたからねぇ・・・本当に?と聞きたくなります。「そう発表していたが、事態は思ったより深刻で、公的機関が購入した国債がヘアカットされると公的機関がダメージを受けて結果としてなんちゃらかんちゃら」みたいなことを言い出したりしないのだろうか・・・と思ってしまいます。私は。
Fどんなに低格付けの国債でも買う
→最低格付基準を撤廃してどんなに低格付けでも買う。ただし、ギリシャは例外。ギリシャ国債は買わない。
細かい話はおいといて概ねこんなような内容です。
あと、おさえとかないといけないのは、
☆ドイツは反対。
ドイツの中央銀行総裁は「紙幣増刷によって政府財政を賄うも同然」と批判してます。今回の国債購入プログラムを決めたECB政策委員会のメンバー23人のうち反対が1人だけいましたが、もちろんこの人。さらに「今回のプログラムは中央銀行が最終的に相当なリスクを多数の国の納税者に再配分してしまう危険がある」としています。ドイツは反対ってことです。たぶんこの結論に納得もいってないんでしょう。この点は今後、不協和音を生まないとは限りません。
☆イタリアは早速、本領発揮
このプログラムはイタリア経済の助けにはならない。だって緊縮財政しないと国債買ってくれないんだもの!これ以上緊縮財政するなんて無理だし、緊縮財政なんてしたらもっと景気悪くなっちゃう。要するに、無駄遣いはやめたくない、無駄遣いやめる条件付きでの救済なんて救済じゃない、そんな条件なしで救済して、ってことです。イタリアの本領発揮です。この辺の気質は新たな火種となる可能性はあります。スペインとギリシャもね。
国債購入プログラムも重要ですが、この2つのポイントはおさえておいたほうがいいと思います。
で、今回の国債購入プログラムでどうなるかって話ですが、
◆問題国の国債価格が安定する
◆投資家心理が改善してリスク回避志向が弱まる、要するにリスクONモードに
◆問題国の国債の残存期間が短くなっていく、借金の借り換え頻度が高くなる
◆ECBの資産が膨らむ
◆ECBの信用力が弱まる(問題国の債券を持つから)、ECBが結構なリスクをとることになる。
◆国債市場の安定に寄与するが、このプログラムで問題国の借金が減るわけでも赤字が減るわけでもない。
(問題国の借金を減らし、赤字を削減しないと、いつも言っているように問題の根本的な解決にはなりません。何度も言ってますがこの問題は借金問題ですから。)
(借金問題についてはこのへんの記事をご参照ください。)
http://jovivi.seesaa.net/article/255582498.html
http://jovivi.seesaa.net/article/235954316.html
こんな風に私は思います。あくまでも私の個人的な見解です。いつもお話ししているようにこの場で「議論」をするつもりはありません。私はこう思いますというのをお話しするためのブログですから。「議論」は本業のほうでさんざん、本当にいやになるほどたくさん、本当にいろんな人とさせられているのでもうたくさんです。胃もたれがハンパじゃないです。ハイ。
ちょっと時間がなくなってしまったので昨晩発表された米雇用統計についてはまた改めて書きます。失業率は低下しましたが内容は悪いです。これで米国で追加緩和が行われるんじゃないかと市場は期待しています。雇用統計が悪い=追加緩和=お金ジャブジャブで株高というシナリオを描いて、雇用統計の内容が悪いほうが株が上がりやすいと言うおかしなことになっております。これはまた後ほど。
頂いていた質問のもう1つ、量的緩和のデメリットですが、まず、ドルの価値が低下してドル安を招きます。当然ながらインフレも懸念されます。コントロールしきれないようなバブルが発生したりね。それから、これ以上ないほど金利が下がり、さらに下げようがなくなったところでお金を大量につぎ込んで量的緩和をして、それをどんどんやっていっても、既にゴムがだいぶ緩んでいるのでこれ以上緩めてもあんまり効果は期待できないじゃないかって話もあります。必要なところにお金は届かず、いらんって言ってるところにお金が届いちゃう状態ですからね。たいして効果はないのにドルの価値が下がり、インフレの恐れもあり・・・でメリットよりデメリットのほうが多いんじゃないの?あたりが懸念されるところだと思います。
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イタリアは早くもゴネてますか。ドラギもイタリア人だから、事前に意思の疎通がしっかりできているのかと思ったのですが…
「国債市場の安定に寄与するが、このプログラムで問題国の借金が減るわけでも赤字が減るわけでもない。」っていうのが一番重要なんでしょうね。結局、時間を買っているにすぎないという点では、過去の国債購入プログラムと変わらないですよね。
あと、量的緩和のデメリットでインフレ懸念とあるのは、現在の先進国の場合だと、景気があまり良くないので、量的緩和実施国自身に対する影響としてはスタグフレーションが懸念される、という理解でよろしいでしょうか。
コメントありがとうございます。
ご参考になれば幸いです。
スタグフレーションと呼ぶかどうかは別として今の米国でインフレ率が上がっていくというのは好ましくないことだと思います。スタグフレーションの定義自体は不況下のインフレなので、マイナス成長になっていなくても不況下でインフレと認められればそれはスタグフレーションということになるのだと思いますが・・・いずれにせよ今の米国の状態でインフレが進行するのは歓迎されることではないと思います。
これからもよろしくお願いします。
OMTはFRB、BOEがやっている金融緩和政策とちがってB/Sは増えないと思いますが?
私が間違っていればご説明お願いします。
コメントありがとうございます。
今回の国債購入プログラムはECBの資産が膨らむ形だと私は思っています。
ECBが国債を買い入れ、買い入れた国債がどこかへ消えてしまわない限り、誰かのバランスシートに載ります。そしてECB以外の誰かのバランスシートに載るというのは私には思い当たりません。
ECBが手持ちの資金で買える分しか買わないのであれば現金が国債に変わるだけですが、それでは無制限に買うことはできないのでいずれお金を刷ってそのお金で買うことになります。ECBはそのお金を今回は完全に不胎化すると言ってます(私は不胎化までのタイムラグがあったり、微妙に流動性供給の性格を帯びさせてしまおうという誘惑にかられるのではという疑いの目をもっています)。
不胎化するというのは恐らくECBが債券を発行してその債券の購入代金を回収するという形になります。国債購入によって結果的な流動性供給ということになってしまわないように市場から資金を回収するということは言っていますが、債券を発行して国債購入で市場に供給したお金を回収するだけではECBのバランスシートは膨らんだままです。
というのが私の理解です。
ちなみにECBのバランスシートは拡大の一途を辿っています。1年前に2.13兆ユーロだったECBのバランスシートは3.08兆ユーロにまで拡大しています。
私にはこれ以上の理解と知識はありませんので、いや違う、そうじゃない、と言われると返答する言葉がありません。というわけでここでは私はこう理解していますというのをお書きしました。これで回答になりますでしょうか?
ご質問ありがとうございました。
私が想像していたのはドイツに配慮してツイストオペで長期を売り短期を購入してB/Sは増やさないでおこなうものだと思いましたので(これでは無制限には出来ませんが・・・)
でもドイツが本当に納得するのでしょうか?OMTの条件履行をきっちりやったらスペイン、イタリアとも経済を回復させる前に共倒れしそうですけどね
ご参考になれば幸いです。
あくまで私の理解では、という話になってしまいますが。
これからもよろしくお願いします。