2008年06月01日

頂いたご質問への回答<通貨の切り下げと切り上げについて>

ベトナム大好きさんにいただいた質問にお返事です。通貨の切り下げと切り上げについて。



ベトナム大好きさん、コメントとご質問ありがとうございました。
ベトナム大好きさんにいただいたコメントはこちら。

初めまして。ベトナム大好きです。
突然の質問ですみません。
今後のベトナムの予想として
>ベトナム経済は、今年に入って年率25%のインフレが起こっており、経済成長率は9%から7%に減速し、経常収支の赤字は莫大なものに膨れています。その結果ドルにリンクしている現地通貨は、1/3程度の切り下げが予測されています。
というのがあります。
何故、ドルにリンクしていると1/3程度の切り下げが予測されるのでしょうか。
教えていただけますと幸いです。


えっと、まず、ベトナムドンはドルにリンクはしてません。後述しますが、管理フロート制っていう一定の管理下での変動相場制なのでペッグ制(自国通貨とドルのレートを固定し、1ドル=360円とかって決めて、自国通貨ドルに連動させる制度)とは違います。

切り下げが予測されているってのは誰の予測でしょうか・・・ネット上で予測されていることでしょうか。私の知ってるエコノミスト達でベトナムドンの1/3切り下げを予測してる人はいません。ネット上ではプロ・アマ・素人含めていろんな人がいろんなことを言います。これも後述しますが、もちろん私を含めて。本当っぽく見えても本当じゃなかったり、本物に見えても本物じゃなかったり、します。自分だけが未来を知ってる風なことを言う人もいるし、必勝法を見つけたって言う人もいるし、市場のメカニズムはこうだって知りもしないで言う人もいます。ただの老婆心ですが、取捨選択をするのは自分ですし、くれぐれもネットに落ちてる情報からの判断は慎重になさってください。このブログに書いてあることもキホン話半分で。

で、通貨の切り上げ・切り下げというのは、中央銀行が為替レートを変更することを言います。円ドルで言ったほうがわかりやすいと思うので円ドルで言います。円がベトナムドンだと思って下さい。第2次大戦後の日本円は1ドル=360円の固定相場でした。このレートが1971年12月に1ドル=308円に「切り上げ」をされ、その後、1973年からは現在の変動相場になり、85年のプラザ合意などを経て、現在の105円ぐらいのところへ上がってきました。要は円高方向に為替レートを動かすこと、1ドル=360円から308円に動かすことが切り上げ、逆に円安方向に為替レートを動かすことが切り下げ、です。105円までの円高になってきたのは普通は「切り上げ」とは言いません。途中、誘導等はあっても、市場取引の中でこのレートが形成されてきたものですし、今は全く介入せずとも100円ちょっとのところで推移しているのでこれは市場が決めた値段と理解されます。ところが「切り上げ」や「切り下げ」というのは市場取引とは関係なく、「今日から1ドル=500円です。」とか「今日から1ドル=50円です。」と宣言して、無理矢理為替を動かしてしまうことを指します。

ところで、「1/3程度の切り下げ」を日本が行った場合どうなるでしょう。1ドル=105円とすると、このレートの1/3分、つまり35円の切り下げ=円安になるわけですから1ドル=140円、になります。結果、どういうことが起こるか。象徴的なのは
@ 日本の輸出に有利になる→国内経済の回復(日本に対する貿易赤字が大きいアメリカは怒る)
A 日本の輸入に不利になる→1バレル=100ドルの原油は10,500円から14,000円に値上がり
B Aの結果、輸入物価の値上がりからインフレ圧力がかかる
C 外国人の日本に投資している財の投資価値が目減りする(日本人がアメリカに投資をしていて33%円高ドル安になるのと同じ)
こんな感じのことが起こります。

このため、日本が通貨を切り下げることは不可能です。ではベトナムはどうか。ベトナムドンの現在の為替制度は日本のような変動相場制ではありません。「管理フロート制」と呼ばれる方式を採用しています。管理フロート制というのは、中央銀行が介入をして為替レートを一定の水準に保つ、あるいはあらかじめ通貨の変動幅を固定してその幅の範囲内で市場取引されていく、要は中央政府が決めた範囲内で為替が変動していく制度です。つまり、固定しているわけではなく、変動をしているのですが、「管理」をしているため市場あるいは他国が適正と考えている値段よりも高かったり、安かったりするわけで、これをたまに「切り上げ」たり、「切り下げ」たり、して調整をしていくわけです。

ベトナムは中央銀行が発表する公式レートから変動を許容する一定の幅、管理フロートの変動幅、を07年1月に±25bpsから±50bpsに、07年12月に±50bpsから±75bpsに、今年08年3月には±75bpsから±100bpsに、拡げてきました。一方で対ドルでの為替の水準は、他のアジア通貨が軒並み対ドルで上昇を続ける中、対ドルで下落をさせる(ドン安)になるように誘導してきました(99年を100とすると、人民元やタイバーツは120程度、ベトナムドンは85程度)。ところが、高まるインフレ圧力に対抗するため、2007年の中旬以降、方針を転換し、ドン高ドル安の許容をし始めました(切り上げ方向)。ベトナムも他のアジア諸国と同様に、外国資本の流入が続いており、この流れの中で、自国通貨は上昇しやすい状態におかれます。つまり外国からベトナムへの直接投資・間接投資がめちゃくちゃ入ってこようとしてるわけですから、ほっとくと、どんどんドン高ドル安になっていってしまうわけです。他のアジア通貨は実際にそうなってます(*)。取引レベルの上昇と変動幅の拡大は事実上のドン切り上げです。


*中国に対してアメリカやヨーロッパ諸国からの人民元の切り上げ圧力が物凄いのは、本当ならもっとももっと人民元は高いはずなのに、管理フロート制の下で人民元があまり高くなっていかないように無理矢理抑えこんで(=中国の輸出企業に有利)きたので、それを「切り上げ」しろ、と言ってるわけです。中国としてはレートの切り上げ、人民元高を少しでも先送りしたいし、少しでも抑えたいわけです。2005年7月まで中国はドルペッグ(対ドルレートは固定で変動しない)だったわけですが、高まる外国からの人民元切り上げ圧力のために2005年7月に切り上げ&管理フロート制度に移行しました。つまりさっき言った99年を100とすると、ってのは中国の場合は2005年7月を100とするとってのと一緒です。人民元は管理フロート制度移行後、上がりっぱなしで、わずか2年半の間に対ドルで2割上昇しました。管理フロート制のもとで認めている1日の変動幅をもっと大きくすればもっと激しく上がっていた可能性もあります。そのぐらい割安なレートで固定されてたってことですね。ちなみに、ドルペッグだとアメリカの金融政策の影響をもろに受けてしまうため(アメリカが利下げしたら同時に利下げしないと、同じ価値とされてる通貨で金利が違う2つの通貨ということになり、アービトラージ取引の対象になってめちゃくちゃな投機売買を浴びせられる)、あのタイミングでドルペッグを外していなければ、中国は国内景気がめちゃくちゃ調子よくてインフレが進んでるのにも関わらずアメリカの利下げとともに利下げをせねばならず、今の中国のインフレ状態はもっと酷い状態になっていたはずです。ということ問題が起こってるのが中東諸国です。サウジアラビア、UAE、バーレーン、オマーン、カタールはドルペッグ制を採用しているため、原油高で国内景気がメチャクチャ過熱しててインフレも進んでるので金利上げたいのに、アメリカに付き合って利下げをしなきゃいけなくなってしまっています。というのがイヤになって、クウェートは一足お先に去年の5月にドルペッグをやめました。以上余談。


また、インフレ抑制のためのドン高許容(=中央銀行がドン売りドル買い介入をしない)のために、また、インフレ抑制のための金融引き締め政策の影響もあり、今年に入って市中のドンの流通量が減り、ドンの流動性低下と調達金利の上昇が起こりましたが、春先からドン高に伴う輸入増加のためにドル需要が高まりドル不足が発生し、これが春以降のドン安を引き起こしたと言われています。

ベトナムの場合は、外国資本の流入によるドン高圧力と経常赤字によるドン安圧力の間でのバランス、ということになると考えられています。そのバランスを市場参加者が見極めようとする中で、加速するインフレに追い討ちをかけ、外国からの投資成果を目減りさせることになる(=外国企業の進出や外国人投資家の投資を減少させる)、ベトナムの中央銀行がベトナムドンの切り下げを行うっていうのは考えにくいんじゃないでしょうか。ましてや33%もの切り下げをするってのはあんまり現実的とは思えないんですが・・・もちろんベトナムの中央銀行サイドではなく、市場がベトナムの経常収支の赤字拡大とインフレを材料にベトナムドンの価値はもっと低い、と判断して売りを浴びせてきてドンのレートが下がる、なんて可能性はあるかもしれませんが、それはもうわからんですよね。憶測の世界ですから。ただ、その時に防衛線となるのは外貨準備高で、ベトナムの外貨準備高は昨日の記事(http://jovivi.seesaa.net/article/98793343.html)でお話しした通りです。

ってこの辺の見通しとか、この先の相場動向についてどう思うか、をあんまり言っちゃうと、目くじらを立ててその議論をしようとする人がいっぱい来たりして(しかも思い込みが激しすぎて議論にならなかったりもするので)、一般的な話をするにとどめておきます。私はここでご説明したのは一般論であって、これが正解だ、唯一絶対だ、真実のメカニズムだ、なんて言うつもりは全くありません。この記事(http://jovivi.seesaa.net/article/81004706.html)でも書きましたが、どっちかって言うと私はそもそも誰も正解を知らないし、誰もメカニズムを解き明かしてないし、誰も未来を知らないし、絶対の法則なんてない、と考えてます。もちろん私が言ってることも含めて、です。これが正解とは言わないし、他の人が言ってることが正解かもしれないし、それを議論したところでどっちが正解なのかも結局わからないだろうと考えています。ここでお話してることは「間違っているかもしれない」一般論や私の個人的な考えです。正解はどちらだ、の議論に付き合う気は全くありませんし、また、そういう系のコメントは、混乱を招いたり、このブログを見に来てくれてるあまり投資に慣れてない人を困惑させたり不快にさせたりするので、ご遠慮ください。また、自論の展開とかは他でやってください。お付き合いする気は毛頭ありません。そういうのが好きな者同士が集まる掲示板とかでやってください。って断りをしとかないと怖いですからね。ネットの世界はね。すいませんね。

こんな感じでいかがでしょう?


↓ランキングです。ポチッと押して投票お願いします。

にほんブログ村 株ブログ 投資信託へランキング参加中!


マネーブログランキング



カブクンブロ
グマーケットランキング投票





posted by ジョン太郎 at 10:45| Comment(1) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
返信が遅くなりまして申し訳ありません。
大変丁寧な回答有難うございます。
判り易いです。
これからも訪問させていただきます。
宜しくお願いします。
Posted by ベトナム大好き at 2008年07月15日 23:37
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック