2008年01月28日

株と債券の動き方の話。絶対的なメカニズムや法則なんてありません。【オススメ】

kenさんにいただいたご質問に対するお答えです。株と債券の値動きの話や円高とかの話とか円キャリーの話なんかも。

Kenさんにいただいたご質問はこちら。
http://jovivi.seesaa.net/article/80751973.html#comment

ジョン太郎さんはじめまして。 今まで更新を楽しみにちょくちょく覗いて見てました。 さて少し質問させてください。 @なぜ世界同時株安の時には債券価格も一緒に下がるのですか?一般的には株が下がれば債券は上がると言われてますよね?(間違ってたらごめんなさい) Aまた、@の時って必ず円高になりますよね。ドルもユーロも。為替と連動するものなのですか? 初歩的な質問ですみません。 以前書き込みしていましたらここを見よ!って教えて頂けますようお願いします。



まず、「絶対に」忘れてはいけないことは、金融の世界に「絶対」はない、「必ずこうなる」はないということです。株が上がれば債券が下がる、ということはおっしゃる通り一般的に言われていますが、それも絶対ではありません。同時に上がる時もあれば同時に下がる時もあります。また、「こういう時には必ず円高になる」「株価は為替と必ず連動する」なんてことはあり得ません。必ず●●とか絶対に●●という言葉は、この世界をちゃんと知っている人は使いませんし、詳しくない人ほどそういう言葉を使用します。

株価も為替も、生き物ではありません。株は過去を振り返えらない、とよく言われますが、株は自分自身がたどってきた足跡やこれまでのペースを振り返ってそこから先の進む道を自分で決めたりはしません。また、マニュアルも読みません。ルールもありません。法則もありません。株価も為替も債券価格も、マニュアルもルールも法則もなく、そんなものを読んでいちいち確認してから自らの方向を決めるのではなく、勝手に動きます。それに対して人間が勝手な解釈をつけたり、その傾向をとらえようとしているだけです。株が上がれば債券は下がる、これは人間が勝手につけた解釈で、株や債券に確認をとったわけでも約束してもらったわけでもないのです。また、その原則と逆の動きをしたところで、なぜ逆の動きをしたのかという理由をつけるのも人間で、それすら株や債券自身に理由を聞いたり確認することなどできないのです。

バカバカしいことかもしれませんが、これが大原則です。しかし、この原則がわかっていない人、身についていない人、が多いです。もちろんプロの中にもこの原則がわかっていない人はたくさんいます。だから注意しないといけないのです。

なんで?と疑問をもったところで株価や為替が答えてくれるわけではない、正解はだれも知らない、先のことや未来のことは未来から来た人しかわからない、動きの理由を説明するのは人間であって株価や為替は自分がなぜそう動いたかを説明してくれない、ということをまず大原則として覚えておくべきです。みなさんが疑問に思うこと、答えを求めることの多くは、この原則を知っているだけで解決するのです。私はみなさんからその手の質問を受けて、「わかりません」「知らんです」「どうなんでしょうね」とお答することが多いですが、それはこの手のことを聞かれている時で、私はこの原則を信じているからです。みなさんにそう言っても、なかなか何故私が答えられないか、を理解していただけないこともありますが、それはこの原則が身についていないためです。その手のものに疑問を持ってもどうせ答えなど誰も知らないし、確かめる術もないから、私はそんなものの答えを求めようとはしていないんです。他に知るべきことがたくさんあるし、考えるべきことがあるし、そんなものの答えがなくても投資判断はできる、そんなものの答えを前提に投資判断をしたら間違う、と考えているからです。

で、いただいた質問の1つ目。

なぜ世界同時株安の時には債券価格も一緒に下がるのですか?一般的には株が下がれば債券は上がると言われてますよね?


答えは、「次回の同時株安の時にも債券価格が下がるとは限りません」「今回もすべての債券価格が下がったわけではありません」「世界債券と世界株式というような大くくりにした2つのものの価格がたまたま同時方向に動くことは、アメリカの株と債券が同方向に動く、日本の株と債券が同方向に動く、というのと頻度や確率、メカニズムが違うと思います」あたりでしょうか。そして、おそらくご質問の趣旨は「株と債券は逆方向に動くはずだから組み合わせて持つことで分散効果が出るはずなのに、両方一緒に下がったら意味ないじゃん」ということだと思います。

それに対するお答は「そういうこともありますよ」です。「絶対」はないです。そして短期的に見るのと中長期で見るのは全く違います。やっととらえた「確からしい」傾向や「存在すると思われる」メカニズム、も膨大なサンプルの中から抽出した傾向です。それが当てはまるためには、サイコロで言えば100回振るとか、この世界なら5年とか10年という期間をとってあげるとか、十分な数を確保する必要があります。

それから、「株と債券が同時に下がる」というのと「世界株ファンドと世界債券ファンドが同時に下がる」というのは全く別次元です。なぜなら後者は為替の影響を受けるからで、おまけに株の動く幅は為替の倍、為替の動く幅は債券の倍、くらいあるからです。株と債券が逆方向の動きをしたところで、たとえば世界債券が+5、世界株が−20、為替が−10だったとしましょう。すると円の世界債券ファンドは−5、世界株ファンドは−30、と両方同時に下がります。また、逆の場合も、為替は株の動きを補うには変動幅が小さくて同じことが起こることがあります。為替の動きは株の動きを反対方向にもっていって消し去るほどには大きくなくて、債券の動きを消し去って反対方向にまでもっていくくらいの力があると思っておいたらいいと思います。でも、これも絶対ではないですし、全然あてはまらない時もあるし、新興国の場合とかは全然通用しなかったりします。

で、こんなのを考えてみてください。為替が入るとややこしいので日本円で考えてみましょうか。こんなものを持っていたとします。

預金100万円:金利2%(中央銀行金利2.5%)<金利2万円>
国債100万円:利回り2.8%(期間10年)<金利2.8万円>
社債100万円:利回り3.0%(期間5年)<金利3万円>
株 100万円:配当利回り2.5%<配当2.5万円>

景気がよくなって、企業の収益が増えて株価が上がったとします。おまけに配当金の額も増えて配当利回りはなんと上昇。で、景気がよくなったもんで、物価が上がり、政府は中央銀行金利を引き上げました。すると債券の値段が下がります。

預金100万円:金利3%(中央銀行金利3.5%)<金利3万円>
国債80万円:利回り3.5%(期間10年)<金利2.8万円>
社債75万円:利回り4.0%(期間5年)<金利3万円>
株 200万円:配当利回り3%<配当6万円>

債券から受け取るクーポンは国債ガ2.8万円、社債が3万円と変わらないため、100万円で買ってくれる人はいないのです。100万円を預金にすればノーリスクで3万円の利子がつくんですから。で、手頃な利回りになるところまで債券価格が下がります。これが債券と株が逆の動きをするメカニズムです。これは同じ国の中での話ですから、アメリカの国債と日本株を一緒にもったら同じ動きをした、なんてことは十分あり得ます。

で、今度は逆のパターン。景気が物凄く悪くなって企業収益が悪くなり、株価も下落しました。業績悪化で配当金も引き下げられました。

預金100万円:金利2%(中央銀行金利2.5%)<金利2万円>
株 70万円:配当利回り2%<配当1.4万円>

ここで金利引き下げ、となれば先ほどのパターンと逆のことが起きて、債券価格が上昇して、株と債券は逆に動くね、ということになります。

ところがこのとき、先行して債券を買いにいって債券価格を引き上げていった人たちがいて、その人たちを尻目に金利が上がらなかったとします。景気は悪くなってるんだけど、物価の上昇が止まらず、中央銀行は金利を据え置き。となると、上がっていた債券価格は下がりますよね。これだけのことでも株と債券が同じ方向に動きました。そして、社債を発行していたA社の株価の急落中に、A社の財務内容が物凄く悪化しているというニュースが出ました。この場合、当然A社の社債の価格も下がりますからA社の株と債券の価格が同時に下がるということもあります。さらに、あまりにもマーケットが不安定すぎて、株価は下がっているけど、債券を買うのもイヤだ、って状態になって株も債券も売られて預金などの短期金融商品市場にお金が流れ込むこともあり得ます。また、債券は償還期間によって全然別物になり、値段も利回りも変わってきますから、特定の期間のものは上がって特定の期間のものは下がったため、下がった期間のものを持っていた人は株と一緒に持っていた債券まで下がってしまった、なんてこともあるでしょう。そして先ほどちらっとお話したように、国が違えば話が違ってきますから、世界株の国別構成と世界債券の国別構成がたまたま組み合わせの相性の悪いものになってしまっていて同時に下がったなんてこともありますし、先ほどの例のようにたまたま円高だったため、債券価格自体はプラスになったのに、為替でそのプラスの分が吹っ飛ばされてマイナスになってしまったということもあり得ます。


ご質問の2つ目、
Aまた、@の時って必ず円高になりますよね。ドルもユーロも。為替と連動するものなのですか?


これも同じです。「そういうこともあるかもしれませんが、いつもそうとは限りません」が私の答えです。そんなルールは存在しませんし、為替はそういったルールを守って動いてくれるようなものではありません。今回の円高はもともと円安を作っていた「円キャリー取引」の取引解消の動きが大きく影響していると言われています。安い金利の円を借りてお金を調達して、その円を売って高金利通貨や日本以外の国の株や債券で運用していく、これが円キャリー取引です。当然円が売られるわけですから円安になります。また、この取引が増えれば増えるほど、あとからあとから次々に円が売られて円安になっていき、本来ものすごく為替のリスクをとっているはずの取引なのに次々に入ってくる円キャリー資金のおかげで為替のマイナスが出てこない。これによって皆の為替のリスク認識が薄れていき、海外の高金利で儲かって、為替でも儲かって、という状態が続き、それが後続者を更に呼び集めます。

外国の債券や株に投資する投信も同じです。一種の円キャリー取引でしょう。そして外国に投資する投資信託の資金も円安を支え、更に儲かる人を産み、それが更に新たな資金を呼ぶ、というサイクルになっていました。このサイクルが円安状態を保ち、高金利と為替のリターンの両方を提供し、それがさらなる資金を外国債券ファンドなどに向かわせてきたわけです。

ところがここにきて、世界的な株安やアメリカ経済の減速、リスク資産からの逃避、で資金を安全資産に戻す動きや、大量に為替のリスクをとっていたポジションから通常のポジションに向かう動き、円キャリー取引の解消、外国に投資する投信の解約や資金流入の減速、などこれまで円安を支えていた要素が違う逆方向に動き始めました。当然今まで借りていた円、今まで売っていた円、を買い戻さなくてはならなくなり、これが急激な円高を招く、これがもともと円安状態を作っていた円キャリーの逆回しによる円高です。この過程では、円を借りて世界中の株を買っていた人がその取引をやめるわけですから、株が売られて株が下がり、円が買い戻されて円高になることになります。世界同時株安の時に円高になる、というのはこうした傾向を反映したものかもしれませんが、こんなのはごく最近のことで、昔はこんなこともなかったですし、この時代だけのものなのかもしれません。つまり、世界同時株安の時には必ず円高になるという法則を現在のマーケットの中で見出して将来にわたって使っていくことは危険ではないでしょうか。

こうした私の説明すら合っているかどうかもわかりませんし、円キャリー取引による円安圧力なんて説明を聞いた為替相場が空から私のことを見て鼻で笑っているかもしれません。投資の法則なんてそんなもんです。正解なんて誰も知らないし、未来のことも誰も知らない。法則や傾向はそれを見守ってる人間が勝手にもっているだけで動いてる当の本人達に確かめたわけではない。

でも、そんなのがわかんなくたって投資はできます。そんなのに基づいて投資判断をする必要はありません。そんなのを掘り下げていったり、調べたり、答えがなくてストレスを感じたり、法則を裏切られて損をしたりするくらいなら、最初っからそんなものに答えを求めず、探究せず、別のことを考えるのに時間を使ったらいいと思います。


よろしければ古い記事ですがこちらもどうぞ。
2006年01月28日
株と債券の違い【オススメ】
http://jovivi.seesaa.net/article/12389773.html

<追記>この記事もおすすめです。外国・世界の債券と株に分散投資しても一緒に下がっちゃった理由についての話です。
2008年04月05日
株と債券に分散投資したのに何故か両方一緒に下がってしまう理由【オススメ】
http://jovivi.seesaa.net/article/92326377.html



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posted by ジョン太郎 at 05:16| Comment(5) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
出張中の多忙にも関わらず、懇切丁寧な説明本当にありがとうございました。知ってるつもりで質問もしない自分の不明さを思い知らされました。お疲れもでる頃、くれぐれもお大事に。
Posted by tobe at 2008年01月28日 19:54
お疲れ様です
息抜きがブログでは、お気の毒かな?
日本でロムさせてもらってる私は、毎日のブログの更新に少々驚いています^^
ブログの更新が飛び飛びになったら、ヨーロッパを満喫されてると考えることにしますね^m^

投資の「絶対」や「法則」はないことを知りました
う〜ん、やはり難しいです^^

Posted by oka at 2008年01月28日 22:55
ブログ更新お疲れさまです。今回改めて、1.ある内容を理解する事 2.その内容を体系立てて覚える事 の大切さを感じました。しかしそれを 3.文章化して人に伝えられるジョン太郎さん を尊敬してしまいます。本当改めてそう思います。そお遠くない将来に未来を支えていく青少年に金融教育を伝えるジョン太郎さんを想像しました。海外出張どうかお体に気をつけて頑張ってこなして下さい。応援してます。
Posted by はじめ at 2008年01月29日 13:50
株・債券・為替が慌しく動く時に、
「底は?」「円高はどこまで?」と周りも慌しくなっている今、
タイムリーな記事、ありがとうございます。

同感です。わからない。1+1=3だったりする^^

アナリスト予想やマネー雑誌に信頼を寄せる人も多いようですが、
寄りかかるのは、椅子の背もたれくらいにしています^^

ジョン太郎さんは椅子の背もたれにも寄りかからず、
前傾姿勢で仕事をこなしているのかしら?
どうぞお疲れでませんように、金髪女性にデレッ〜とでもしてきてください^^



Posted by コジコジ at 2008年01月29日 15:27
早速の回答ありがとうございます。
法則なんてない、色々な要因で相場は動くものと言うことが良くわかりました。法則があれば今頃皆さん大金持ちですよね。
一時の相場に惑わされることなく、
10年20年先を見て気長に投資していこうと思います。ハイリスクではあるが長期投資出来るのなら新興国が良いのかなと最近思うようになりました。自己責任でボチボチとやります。
また質問させて頂くことがあると思いますが、その時はよろしくお願いします。
Posted by ken at 2008年01月30日 21:47
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