2007年06月02日

北京オリンピックと上海万博が終わったら中国株は下がる!?

今週、中国で政府が印紙税引き上げによる株式市場へのメッセージを発したことで上海A株が1日で6%超の下げを記録し、他の各国の市場も連れ安となり、メディアなどでは世界同時株安突入を危惧する声も聞かれましたが、ほとんどの市場関係者は影響は限定的だろうというコメントを出していました。実際、他市場の連れ安も小幅でしたし、その後すぐに回復し、アメリカ経済の底固さを示す強い数字が出てくると、アメリカ株主導で日本株も含め各国の市場は終わってみればそこそこ、というような感じで週末をむかえました。ところで、中国株投資の話題で必ずと言っていいほど出るのが北京オリンピックと上海万博の話。「中国株が上がるのは北京オリンピックと上海万博が終わるまで」、「北京オリンピックと上海万博が終われば中国株は下落する」、「中国株に投資するなら北京オリンピックと上海万博が始まるまでの短期で」、「2008年の北京オリンピックと2010年の上海万博後には中国発の世界同時株安が」、なんて声まで聞こえてきます。マジっすか?ホントに?という話を今日はしようかなと思います。「中国株が上がるのは北京オリンピックと上海万博が終わるまで」、「北京オリンピックと上海万博が終われば中国株は下落する」、「中国株に投資するなら北京オリンピックと上海万博が始まるまでの短期で」、と断言してる方々にはそんなに確信してるなら是非両イベントの開催終了後にあっちこっちから借りれるだけお金を借りまくって空売りするなり、プットオプション買うなり、で北京オリンピックと上海万博の終了後に起こると確信している中国株の下落に思い切り賭けてみていただきたいものです。今日のお話は、中国株に投資しようと思って相談したら、あるいは中国株に投資を始めたという話をしてみたら、回りの人に<北京オリンピックまで説>を聞かされて不安になったというような人に、こんな見方もあるんだなって思っていただきたくて書いてます。<北京オリンピックまで説>を言う人が1999年の世界の破滅を予言したノストラダムスとなるのかどうかは北京オリンピックや上海万博が終わるまで分かりませんが・・・とりあえず私はこう思いますよってのをつらつらと書いてみます。

まず、中国は北京オリンピックがあるからここまで成長してきたのでしょうか?全然違うと思います。そりゃあオリンピックの開催と開催に向けての都市整備には、大きな経済効果があります。これは間違いないです。ただ、これだけ、ではないと思いますし、これはあくまで一要素でしかないんじゃないかなと思います。この10年間の中国の成長の原動力は北京オリンピックのための北京の都市整備だと本当に思いますか?世界最多の人口を背景にした巨大な労働力と安い労働コストが圧倒的なアドバンテージとなり、「世界の工場」としての地位を確立するまでになったプロセスがこれまでの中国の経済成長のキーだと私は思います。中国の2006年の輸出額は9691億ドルで、2兆5,542億ドルのGDPに占める輸出の割合は36%にまで達しています。2005年から2006までのGDP成長率は10.7%、これに対し、輸出額の伸びは前年比27.2%です。また、10年前の1996年と2006年を比べて見ると、GDPは8,560億ドル→25,542億ドル(198%増)、輸出額は1,511億ドル→9,691億ドル(541%増)、GDP増加額が1兆6,982億ドルで、輸出額の増加額は8,180億ドル、つまりこの10年間のGDP増加額の実に半分は輸出額の伸びが占めています。

また、あれほど広大な国土と巨大な人口を持つ国が、首都とは言え一都市の北京の道路を整備したりオリンピック関連施設作ったり、空港やら駅やらを綺麗にしたり、インフラ整備をしたり、その程度だけでここまでの経済成長ができるでしょうか。また、オリンピックと万博が終了し、北京と上海での施設建設や道路整備、インフラ投資が一段落したところで現在の経済成長が止まってしまうんでしょうか。中国の成長力をイメージするにはまずはなんつってもこの記事(http://jovivi.seesaa.net/article/43181442.html)なんですけれども、ゴールドマン・サックスが描いたこの未来には、当たり前ですけど2008年に北京オリンピックが終了することも、2010年に上海万博が終了することも織り込まれています。

そして、ここからの中国の新たな成長力のキーとして加わってくるのが、消費の伸びです。「世界の工場」としての地位を確立し、日本を抜いて外貨準備高世界一となった中国は、今後その成長が個人の所得の伸びを加速させていき、個人所得の伸びに伴い、消費が爆発的に伸びることが期待されています。世界最大の人口を誇る中国で、家計の所得が10%、20%と増えるインパクトというのは人口1億人の日本に暮らす私たちの想像を絶するものです。今後の中国に最も期待されるのは「世界の工場」というタイトルに「世界最大の消費地」というタイトルが加わることです。世界の工場としての生産能力に加えて、今後伸びることが期待される中国国内消費向けの生産能力の拡充に世界中の企業がこぞって新たな拠点設立に動いています。だからこそ、中国への海外からの直接投資の額が今も伸びているのです(ここに10年ちょっとの中国への日本と世界の直接投資の推移を示したグラフが出てます。http://www.jcipo.org/toukei/toukei2.html)。直接投資というのは現地法人の設立や工場の建設、現地企業の買収など、永続的な権益を取得することを目的とする投資のことで、ジョン太郎がやっている間接投資と対になる概念です。私はいずれ、何十年先になるかわかりませんが、キャピタルゲインを得て、究極的にはいつか売却することを前提に投資しています。つまり、株式投資によるインカム・ゲインとキャピタル・ゲインを目的として行っている投資です。これの特徴は、なんつっても「いつでも引き揚げ可能」ってことです。その気になれば明日、中国に投資している資金を全て引き揚げることも可能です。中国株の投資信託を全部解約しちゃえばいいんですから。あっという間に資金を回収できます。これに対し、直接投資というのはそう簡単に資金を引き揚げることができません。現地に法人を作って、工場を建設して、人を雇用して・・・というのは、ハイやめたー、というわけにはいきません。また投下資本の回収にもかなりの年数を要します。つまり、かなりの覚悟をもって行うことになりますし、慎重にやらないといけないわけです。世界の名だたる大企業が中国に現地法人を作ったり、中国に工場を建設したり、というのは私たちの中国株投資なんかと違って、ものっすごい下調べをしますし、とにかくハンパな覚悟じゃないわけです。失敗したー、やっぱやめたー、なんてわけにはいかないんですから。北京オリンピックが終わったら撤退、上海万博が終わったら撤退、なんて覚悟で、凄まじい金額のお金が必要な直接投資をすることなんてできないんです。

で、株価にいきますが、今後の株の成長を考える時にGDPがよく使われますよね。投資信託のパンフレットなんかにもよくGDPのグラフとかが出てると思うんですが。GDPってのはその国で1年間につくられた経済的な付加価値の合計額ですから、経済的な付加価値のほとんどが企業を通じて行われていて、経済活動の中心を企業が担っていることを考えれば、GDPの伸びというのは企業の収益増加につながっていきます。株価というのは短期的には様々な要因で上下しますが、中長期的には企業の収益を反映します。ある企業の株を買うときでも、ある国の株に投資する投資信託を買う時でも、中長期の投資が前提であれば、正しい投資判断をするために絶対に必要なことは、必ず企業の収益をベースに考えることです。そして必ずこれを起点にして基点にして考えることが大切だと思います。収益に比して高すぎる、安すぎる株価は中長期的には調整されますし、例え短期的にいろんな要因で上げ下げしても、中長期のグラフで考えていればそんなに慌てる必要はありません。中国株に投資をしようと思うなら、中国の企業の収益は今後伸びていくと思うのかどうかをまず第一に考えて、あるいはそれを金融機関の人や周りの人に聞いて、それに自分が納得感を持てるかどうか、を起点に基点に考えるべきです。<北京オリンピック説>を耳にした時も同じです。日本株ファンドとアメリカ株ファンドと中国株ファンドのどれに投資するのか迷った時もそうです。印紙税の引き上げでA株が下落したというニュースを聞いたときもです。中国政府が行き過ぎた上海A株市場の過熱にブレーキをかけるために印紙税を引き上げて取引コストを高くする政策を行って、A株市場が1日に6%以上下げた→これでゴールドマン・サックスの描いた中国の成長カーブが下に曲がると思いますか?これが中国の経済成長スピードを鈍化させると思いますか?印紙税の引き上げ程度で中国の成長シナリオが大きく変わってしまうくらいなら、怖くってとてもじゃないですけど工場なんて建てられませんよ。

ところで、オリンピックの開催終了後に株価が下げるという話は私の頭にもちょっと残っていました。まだ金融の世界に入って間もないころにも耳にしましたし、頭のどこかにも残っていて、オリンピックが終わったら短期的かもしれないけど株価はちょっと下げる、というイメージはありました。これは都市伝説のようでもあります。また、いろんな金融機関のいろんな分野で働く周りの人や友人達に聞いても、みんな漠然とそういうイメージを持っていました。で、調べてみました。下のグラフは最近のオリンピック6回分のオリンピック前後の開催国の株価の推移です。

oly9296.jpg
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oly0004.jpg

うーーーーーん。微妙?でも必ず下げるってほどじゃないですし、結構バラバラ?少なくとも私や私の友人達が抱いていたイメージとは全然違ってました。どのグラフもオリンピック終了後にストンと落ちてそこから上がっていくイメージだったんですけど・・・

で、なんつっても日本でしょう!オリンピックの後に万博を開催したわけですし。ところで皆さん、東京オリンピック開催後の1964年末の日経平均株価っていくらだったと思いますか?

1,216円です。

OlympiadTK.jpg

グラフの左下の紫の線で囲った部分がオリンピックと万博を挟んだ期間なんですが、ちょっとわかりにくいので、その部分を拡大したグラフをその上につけときました。あと、最近のところはPERのデータもあったので、一緒につけときました。ちなみにいつも使ってる予想PERではなくて、実績ベースのPERです。なので、目安をPER40倍ラインに引いてみました。

さて、皆さん、友人に「え?中国株に投資してるの?中国株って北京オリンピックまでらしいよ。オリンピック終わったら下げるらしいから気を付けたほうがいいよ。」って言われたらなんて答えますか?


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posted by ジョン太郎 at 10:37| Comment(1) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いやー…ちょうどその話を知人としたばかりで、なんていいタイミング!もちろん、知人がノストラダムス派(笑)なわけですが。わたしは「北京五輪、上海万博後に不況が来るかも知れないが何か?こっちゃ20年単位で考えてるし」と強気でしたが正直不安がないわけではなかったので、このグラフはとても参考になりました。ホントありがとうございます!

それにしても、大阪万博後の激しい上昇は、これは石油ショック後の物価上昇に関連しているんでしょうか?中国経済の一番のインパクトはものすごい外貨準備高→元高抑制→さりとて通貨吸収にも限界→インフレ…かなーとは思いますが、ジョン太郎さんどう思われますか?インフレは中国株投資にとってプラスなのかマイナスなのか単純に考えちゃいけないのでしょうけれど…。
Posted by kos at 2007年06月02日 17:03
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