2014年06月14日

ハイイールド債やREITは「金融商品はギッフェン財」ということを具現してるよね

久々の更新です。ご無沙汰しております。生きております。

さて、今日はハイイールド債や米国のREITについて。日本の投信市場では今、というか2〜3年くらい前からずっとですが、ハイイールド債やUSリートに投資するファンドが人気です。買ってる人に買ってる理由を聞くと、大体が「米国の景気回復の恩恵があるから」とかその類のことを答えてくれます。その割には、見通しを聞かれることが多いのが不思議でならないのですが・・・「いいと思って買ってるんじゃないの?」と聞きたくなります。

まず、ハイイールド債のほうからいきますが、めちゃくちゃ割高だと思います。私はこんな水準では絶対に買いたくないです。米ドル建てハイイールドの上乗せ金利(スプレッド)は400bps(4%)を割り、3%台です。借金の返済や利払いが怪しい企業に金を貸して、国債に比べて3%ちょっとしか上乗せ金利をもらえないなんて本当にどうかしてます。ユーロ建てに至っては3%前後しかありません。なんでこんなことになるのかと言うと簡単で、買う人がいるからです。例えばハイイールド債ファンドに毎日流れ込むお金は、そのままにしておくわけにはいきません。ファンドの債券組入れ比率が下がってしまいますからね。ファンドを運用するファンドマネージャーはどれだけ割高になっていようと手に入るハイイールド債を買い集めるしかありません。それがどれだけ値上がりしていて割高で、どれだけ利回りが低くてもです。

債券取引というのは取引所みたいなものはなく、相対での取引です。債券を発行する時に債券を引き受けて、つまり借り手に直接金を貸して債券を手に入れるか(プライマリー)、持ってる人を自分で見つけて譲ってもらって買うか(セカンダリー)、しかありません。自分の運用するハイイールド債ファンドに毎日物凄い資金流入があり、毎日大量のハイイールド債を買わないといけないファンドマネージャーたちが、ハイイールド債を持ってる人のところに行って、$105?私は$105.1で買う、いや私は$105.2で買う、と値段を釣り上げて確保します。債券は価格が上がると利回りが下がります。セカンダリーで債券がいくらで売買されようと、借り手が払う利息は自分が借りた金額に借りた時に約束した金利をかけた金額だけです。$100を3%で借りた人は毎年$3の利息を払えばいいわけで、その債券が$150で売買されたからと言って、$150の3%を払う義務はありません。当然$150で買った人は$3の利息しかもらえないので利回りは3%以下になりますし、$150で買った債券が借金の返済日、つまり債券の償還日には$100で返ってきて$50のキャピタルロスになりますから、この-33%のキャピタルロスも加味した利回り(最終利回り、終利、YTM)は3%どころかマイナス利回りになります。こうして債券の買取価格が上がると、利回りが下がります。そのへんの話はギリシャ国債の利回りが500%だの1,000%だのついたころに書いてますのでご興味ある方はこのあたりの記事を読んでみてください。
http://jovivi.seesaa.net/article/225805786.html
http://jovivi.seesaa.net/article/233299687.html
http://jovivi.seesaa.net/article/258362832.html

というわけで、ハイイールド債ファンドをみんなが買いまくれば、利回りがどんどん下がるのは当たり前、値段が上がっていくのは当たり前のことです。ハイイールド債の在庫は無限にあるわけではないですし、新規発行もあるけど、償還もありますからね。市場規模は米ドル建てのもので100兆円を超える程度です。ここまで異常な資金流入が続いて価格が上がり、利回りが低下してくれば、あちこちから警鐘を鳴らすレポートなどが出てくるのは当然です。もちろん、ハイイールド債を販売したい人からは大丈夫、という声しか聞こえてこないと思いますが。こういう状況でも大丈夫、という声は2006年〜2007年ごろにもよく聞かれました。というのも今起こってることは2000年代前半とよく似た状況で、当時も同じようなことが起こったのです。人間は学習できない生き物なのではないかと疑いたくなってしまいます。

2000年代前半に起こったことというのは、2000年ごろから2003年ごろにかけて米国債の利回りが低下していき、その他の主要先進国の国債の利回りも低下していく中で、もっと高い利回りがほしいというお金が、いわゆるクレジットものに流れ込んでいきました。クレジットものというのは信用リスクをとり、国債の利回りに信用リスク分をプラスした利回りを得られるもの全般を指します。こうして米ドル建ての社債、米ドル建て新興国国債、米ドル建てハイイールド債、劣後債、優先証券、バンクローンへと、次々にお金が流れ込んでいきました。今と全くおなじ流れです。そしてお金が流れ込んだものはどんどん価格が釣り上げられていき、利回りが下がっていきました。利回りが下がると、さらに大きなリスクをとってもいいので高い利回りを、という流れです。こうなると、手に入るものはいずれも流動性が低く、条件が投資家に不利で、リスクに見合わない低い利回りのものばかりです。それでも後から後から流れ込む資金によって押し上げられた価格が、こうしたものへの投資を正当化していきました。

金融商品はギッフェン財である、という名言を言った賢者がいますが、まさにそれを具現化した格好です。ギッフェン財というのは、普通のものは価格が上がるほど需要が減退するのに、価格上がるほど需要が増えてしまうという奇妙なもののことを指す言葉です。金融商品は、価格が上がるほど需要が上がる、みんなが買って値段の上がっている割高なものほど人気が出る、流入するお金がかさ上げした価格上昇によってあらゆることが正当化され、警鐘が無視される、まさにギッフェン財です。そしてこの流れの先にあったのがサブプライムローン。あとの結果は皆さんもご存じの通り。米ドル建ての新興国債券は40%、ハイイールド債は50%もの価格下落が起こりました。

リーマンショックのときには、劣後債とかバンクローンは流動性が低すぎて現金化の対象になりにくく、結果的にはハイイールド債よりも価格下落幅が小さくて済んだという皮肉な結果となりました。バンクローンに比べたらハイイールド債のほうがずっとマシなんですけどね。この時のバンクローンの悲惨さも知らずに、バンクローンのリーマンショックの時の下落幅はハイイールド債より低かった、なんて言う人もいますがとんでもない話です。あとは、この頃も言われてましたが、バンクローンは発行体が潰れた時にハイイールド債よりも返済が優先されて、ハイイールド債よりも多くのお金が返ってくることが多いっていう話。

そもそも、バンクローンファンドに入っている銘柄とハイイールド債ファンドに入っている銘柄は発行体が違います。バンクローンファンドに入ってるのは、昔はハイイールド債が発行できたけど今はハイイールド債も発行できなくなった、という銘柄も多いです。つまりハイイールド債ファンドに入ってる銘柄のほうが信用力が高くて(バンクローンに比べればマシというだけで、投資適格債の信用力とは比較になりませんが)、バンクローンに入ってる銘柄のほうが信用力が低いケースが多いです。信用力の低いバンクローンの企業のほうがハイイールド債より潰れやすいのに、バンクローンの組入れ企業が吹っ飛んだ時にその潰れやすい発行体が昔発行していたハイイールド債よりもバンクローンの債権のほうが優先して弁済されることをもってハイイールド債よりもバンクローンのほうが安心とかね。もうムチャクチャです。腐りかけの食べ物のマシな部分とやばい部分の比較をもって、腐りかけの食べ物と腐るまではまだ時間がありそうなものの比較にすり替えてるだけです。

リスクに見合わない利回りで買ってしまった利回りものは大抵あとでしっぺ返しがきます。そもそも利回りが低くてインカムゲインがたまるペースが遅く、しかも利回りが適正水準に戻る過程で価格が下落する可能性があるわけですからね。クレジットものを買うことが悪いことと言うつもりはありません。私もリーマンショック直後にハイイールド債ファンドを買いました。しかし、私がそこで買った時のスプレッドは2,000bps以上、つまり国債に対して20%以上もの上乗せ金利がもらえる時でした。高い利回りでもらえるインカムゲインをいただいていたところ、どんどん利回りが低下して価格が上昇したので売却をしてしまいましたが。今の利回りでは私は絶対に買いません。今の値段は次々に押し寄せるお金が押し上げた割高な価格。資金の逆回転が起こった時が怖いですね。

クレジットものについてもう1つ。銀行に入って融資の研修で教わるのは、会社がぶれやすいのは実は景気回復局面ということです。景気の悪い時よりも、その後の景気回復局面のほうが実は怖くて、財務状態の悪い会社、わかりやすく言えば借金だらけの会社というのは景気回復局面の金利上昇で借金の利払い負担が増えて潰れてしまうことが結構あるということです。覚えておくといいと思います。

さて、REIT。私は今の米国のREITは絶対に買いません。ハイイールド債とどちらかを選べと言われたら地獄の選択ですが、それでもスプレッド4%を割ってる割高なハイイールド債を選ばなくてはならないくらいです。

今の日本の投信市場には1兆円規模で運用する米国REITファンドが3本もあります。米国のリート市場は主要銘柄が140銘柄前後。その時価総額合計は65兆円。売買代金は合計で1日1,000億円程度です。少ない日は800億円前後まで下がります。これを価格上昇で正当化してしまうのがギッフェン財そのものです。どう考えてもおかしいでしょう。

日本の投信市場で銀行窓販が始まって間もなくの2000年2月、野村証券が募集した巨大な日本株ファンドが誕生しました。当初募集期間中に1兆円を集めたそのファンドは「池の中のクジラだ」「あんなサイズで運用できるわけがない」「自分が買って値段を上げ、自分が売って値段を下げてしまう」という批判を浴びました。当時の東証1部の時価総額は450兆円、1日の売買代金は1兆円以上でした。この市場で1兆円を運用することにすら懸念が示されたのに、なんで今のUS-REITに批判が出ないのか不思議でなりません。


2011年に日本の60兆円の投信のうち10兆円がブラジルレアル、という記事を書きましたが(http://jovivi.seesaa.net/article/201078447.html)、この時は「ブラジルはワールドカップとオリンピックが終わるまでは大丈夫」というのが念仏のようにあちこちで言われていました。ほら、実際こんなに価格が上がってるじゃないか、と。お金が入ってるだけでしょ、と言っても取り合う人はいませんでした。その後、資金の逆流が起こり、「ワールドカップとオリンピックが終わる前に」資金が流出すると、ブラジルレアルはワールドカップとオリンピックが終わっていないのに、大きく下がりました。分かりきっていた結末でした。このころのブラジルレアルの取引規模は1日1兆円程度で、100億円の売りでも1%になるレベルでした。

1兆円規模のファンドに1%の解約注文が入れば100億円分の現金を用意しなければなりません。1,000億円しか取引規模のない市場に100億円の売り注文を出せばどうなるか。結果は火を見るより明らかです。そのきっかけは何もアメリカの不動産市場の暗いニュースである必要はありません。たとえ、米国不動産市場に明るいニュースが続いていたとしても、例えば、分配金が引き下げられて解約が増えたとか、米国債利回りの上昇で米国REITの価格が下がって怖くなった人が解約したとか、そんなことでもいいのです。とにかく、今は分配金をたくさん払うREITファンドを通じて毎日大量の資金が米国REIT市場に流れ込んで価格を下支えしているどころか押し上げているところに、なんらかのきっかけでまとまった解約が入り1,000億程度の取引規模の米国REIT市場に50億とか100億の売り注文が出れば価格が下がり、下がった価格で不安を覚えた人が解約にまわり、自分は逃げ遅れたくないという人が売りを急ぎ・・・売りが価格下落を招き、価格下落が更なる売りを招く、という悪循環に入る可能性があります。

今はまだいいのです。資金が流入して、マネートレイン(http://jovivi.seesaa.net/article/218970323.html)が停車した状態ですから、次々に押し寄せるお金が価格を上げてくれています。その価格上昇を描いたグラフを見せて、後講釈で「ほら、米国の景気回復で米国REITはこんなにパフォーマンスが良くなっています」「ほら、実際に価格はこんなに堅調です。心配いりません。」「米国の景気回復で米国の不動産市場はなんちゃら・・・」と言っていても、資金の逆流が起きた時にどうなるか。それらの後講釈とは無関係に価格が下がるだけのことです。5年くらい前には10兆円だった米国REIT市場の時価総額はいまや65兆円にまで膨らんできています。もちろん、新規発行や価格上昇による分はありますが6.5倍までは価格は上がっていませんし、資金流入によって価格がかさ上げされている分もありますからね。しかも、リーマンショックで大きく値下がりしたところからの上昇ですからね。何にしても、時価総額が5年で6.5倍というのは凄いですよ。

ベトナムブームのころを思い出しますよね。ベトナム株ブームが起きたとき、2005年末に500億円くらいだったベトナム株指数の時価総額はその2年後の2007には2兆円を超えました。で、その間に200ポイントくらいだった指数が5倍以上の1,200ポイント近くまで上がり、そこで資金が逆流していつものパターンとなって、その2年後の2009年にはもとの200ポイント近くまで下がるという結果になりました。でも、資金流入で価格がかさ上げされたグラフは「ベトナムは成長が期待されていて、実際にほらこんなに価格が上がっている」「大丈夫、実際に株価はこんなに堅調に上がってきている」と講釈されていました。資金流入でかさ上げされた価格は、資金流出でそっくりそのまま上昇分を吐き出しましたけどね。

過去の教訓から学べないのはなぜなんでしょうね。
また週が明けると私はいろんな人からハイイールド債や米国REITの見通しを聞かれるわけですが、明日からはこの記事を読めと伝えて済ませることができるのでだいぶ楽になります。何人もの人に同じ説明をする手間が省けただけでも書いた甲斐があったというものですが、皆様のご参考にもなれば幸いです。読み直しをせずに書きっぱなしで投稿しますので、乱文誤字脱字ご容赦ください。

今日はこんな感じで。


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posted by ジョン太郎 at 16:06| Comment(1) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
久々にアクセスすると久々に更新されていて驚きました。なんというタイミング。いつも勉強させていただいております。
数年後に退職金を得る予定のため、長期的には円安ドル高とふんで今から海外投資をふやしたいのですが、米国株、米国債、記事にあるハイイールド、REITすべて高くて買えるものがありません。しばらくは様子をみるしかないかと考えております。ドルコストでコツコツですかね。
Posted by かずゆき at 2014年06月15日 20:22
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