2012年07月08日

いつ円安に向かうのか

私らしくないタイトルですが、今日の話は最終的にそういう話になっていきます。


まず、一昨日書いたこの記事(
http://jovivi.seesaa.net/article/279126952.html
)の中でお話ししたバークレイズの件ですが、米シカゴの女性投資家がバークレイズを相手取り、訴訟を起こしたそうです(先ほどツイッターのほうでニュースをシェアさせていただいてます。ソースはBloombergです。)。この女性はバークレイズ以外にもJPモルガンとシティを訴えているようですが、バークレイズが不正操作をしたことでLiborが歪められ、自身の先物取引が被害を受けたとのことです。さすがアメリカ人。アメリカ人によるアメリカ人らしい訴訟です。

さらに、関連取引を2005年1月1日〜2009年12月31日までの間に取引した米国拠点の投資家全てを代表する集団訴訟として認定されることを目指しているそうです。物凄い範囲です。また、イギリスのSFO(重大不正捜査局)がこの件で刑事捜査を開始するとのことです。米司法省は既に刑事捜査を始めております。



さて、昨日、アメリカの6月の雇用統計が発表になりました。いつもの表をアップデートします。

UE201206-1.bmp

前月と比べて、民間人は189千人増加、うち労働力に含まれる人が156千人増加、労働力に含まれない人が34千人増加。労働力に含まれる人のうち働いている人(雇用者)が128千人増加、していますがそのほとんどが、経済的理由でパートで働いている人の112千人の増加によるもの。失業者は29千人増加。失業率は前月と変わらず8.2%。

労働力人口に含まれない人のうち、働きたくない、仕事求めてない、という人が大きく減少していまして1,5119千人の減少。働きたいけど、今、就職活動をしてなくて、去年も職探しをしてない人が524千人増加。言い換えれば、ずっと就職活動してなくて就職を諦めていただ人が就職したいって思うようになった、でもまだ就職活動始めてない、そういう人が524千人増えたってことです。

という今回の雇用統計をどう見るか・・・



・・・何も言えない・・・取り立てて言うようなことが何もない。状況はあんまり変わってなくて、人々が働きたいと思い始めたと。金が底を尽きてそろそろ働かないとやばいと思ったのか、景気がよくなり始めて求人増えてきてるかも、それなら就職先見つかるかも、と思ったのか、は分かりません。



続いて推移のグラフ。

UE201206-2.bmp

まぁ、緩やかに回復・・・くらいしかコメントのしようがないですが、ご覧の通りです。以前から申し上げてますが、失業率と言うのは急に劇的に改善するような数字ではありません。新聞とかテレビのニュースなんか見てると大げさに言ってるから、一気に改善みたいな印象を受ける時もあるでしょうが、実際はこんなもんです。これまでの推移を見ても、失業率というは悪化するのは結構なペースで進んでも、改善するのは緩やかーに進んでいくものです。まぁまだしばらくかかるでしょうね。そのくらい今回の傷は深いってことです。

こういう傾向があるので私は失業率の数字を非常に重視してます。いろんな指標がいっぱいあって、どれ見たらいいか分かんない、どれか1つだけ見るとしたらどれ?と聞かれたら、私は失業率をお勧めします。経済の状態を象徴している数字だと思うので、いろんな方面に応用がきくと思いますし、あんまり方向性を見誤らなくて済むと考えています。緩やかーに推移していくのであんまり振り回されないで済みますしね。新聞やテレビの報道で失業率の数字を追っていくと大げさに報道されるので振り回されちゃうかもしれませんが、こういう風に自分で見れば、そういう心配もありません。



ところで、先ほどの失業率推移のグラフに、米政策金利とドル円レートの推移を合わせてみるとこうなります。期間はプラザ合意後の86年からの約26年間です。

UE201206-4.bmp

薄い水色がドル円レートですが、この期間中に4回円安方向に大きく動いているところがあります。87年から、95年から、99年から、2004年から、の4回。いずれも濃い紺で示した政策金利の上昇と同時または後追いで発生しています。金利が上がった時に円安ドル高が進んでます。もう1つ見ておいて頂きたいのは紺色の政策金利と失業率の関係です。紺色で示した政策金利が引き上げられていっているところはいずれも失業率の低下局面です。

一番最近の2004年から2007年のところの円安は記憶に残っている方も多いんじゃないでしょうか。2004年の1%から2007年の5.25%までアメリカの金利がどんどん引き上げられていった局面です。2007年にはドル円は124円まで行ってました。ドルで運用すれば5%以上で運用できるわけですから、みんな低金利の円なんて持っててもしょうがないと、多くの日本人が持ってる円を売ってドルに、外人は金利の安い円を借りてきて円を売ってドルを買って高金利のドルで運用するっていうキャリー取引をやって、というわけでみんなして円売りドル買いをしていた時期です。米ドル建ての外貨預金や、MMF、保険なども結構な利回りがあって人気がありました。グロソブに代表されるような外債ファンドにお金が集まり、この頃の米国債、先進国債はたぶん多くの人がほぼ無リスクと感じていたことでしょう。どんどん進む円安で為替リスクは良い方にしか出ず、リスクはほとんどなくてしかも高利回りで円安で更に上乗せリターン、みたいな。最近の豪ドルと同じパターンです。

ところが、サブプライムローン問題に端を発する今回の金融危機の中でアメリカの金利はどんどん低下、利回りのとれない米ドルは2007年までのようにもてはやされなくなりました。

円安になるきっかけはいろいろ考えられると思いますが、1つ手っ取り早いのはアメリカの金利が上がっちゃうってのがありますね。アメリカの金利が5%で円の金利が0%だったら、結構なお金がまた円売りドル買いをしていくことでしょう。そうした資金はドル円を円安方向に持っていきます。

先ほど見ていただいた過去のケースでは金利が引き上げられていくのは失業率が低下していく時ですから、失業率が低下するのはいつだって話になります。現に失業率はピークから既に下がり始めてます。もう金利が上がってもいいんじゃないかと。このグラフだけから考えればそういうことになりますが、実際に今のアメリカが政策金利5%に耐えられるかというとそれは無理です。今のアメリカの景気はそこまで強くありません。失業率が下がっていって、景気が良くなっていき、インフレ率が上がりはじめ、それから金利が引き上げられていく、というのが通常のパターンです。

今回の失業率のピークはかなりの高水準を記録しました。そこからちょっと下がったくらいでも普段の不景気よりもずっと高い位置にあります。やっぱり8%くらいの今くらいの水準から6%に向かっていかないと金利の復活は期待しにくいんじゃないかと思います。

じゃあ、たとえば失業率が6%まで下がるのにあとどのくらいかかるのか、これを考えるにはどうすればいいかと言うとご自分の答え・考えを見つけるには、グラフの線を引っ張ってみてそこまでの月数を数えてみたらいいと思います。たとえば、こんな感じ。

UE201206-3.bmp

最後のところで線が4本になってます。4本は私が線を引いたもので、4本に別れるところまでが実績値。4本の線には12、24、36、48という数字がふってあります。これはここからの月数を示しています。もしここから先の失業率の低下ペースが一番右の一番遠くまでいっている線くらいの角度になると思う人は、失業率が青い線で示した6%にタッチするまで48ヵ月、ということを示しています。一番左の一番急角度で低下する線だと思う人は12ヵ月後に失業率が6%まで下がるというシナリオを想定することになります。これだと、これまでのペースよりも明らかに早いペースで急低下していくことになりますね。結構楽観的なシナリオと言えるんじゃないでしょうか。

私が考えている角度はまぁ24か36かってところです。米失業率がこれまでの改善ペースを保って行っても6%まで下がるのにはまだあと2〜3年かかると私は考えていることになります。そうすると、もしこの考え方に基づくなら、私が今年のうちにどんどん円安に進んでいくことを期待すると、自分の考えている景気回復のペースと合わないことになります。それ以外の要素をきっかけに円安が進んでいくというものを見つけて説明付けないといけないことになります。もちろん、為替を決める要素は他にもたくさんあります。今さら言うことでもないかもしれませんが。



くれぐれもご注意いただきたいのですが、こんなもので未来を占う必要はありませんし、これに大切な財産を賭けられるような信頼性のあるものではないですし、その有効性が確認されたものでも私がその保証をするものでもありません。あくまでもこんな考え方もありますよってだけのことです。円安が期待できる時期を考えるのにこういうアプローチもありますよってことでお話しさせていただきました。未来を知ってる人がいないはずの投資の世界で、いつ円安になるんだという疑問に対して明確な答えを期待しても虚しいだけ、というのは皆さんよくおわかりだと思います。そんなもんが分かればそこら中で借金してフルスイングで突っ込みますよね。

これは、各人が自分の考えるアメリカの景気回復シナリオを、ある程度具体的にするためのものに過ぎないんです。でも、怪しげな情報に基づいて大切なお金を投じるよりも、自分自身の考えに合ったものにするほうが遥かに良いと私は思います。本職のほうでも、いつ円安になりますかね、と聞かれるとこれを使ってお話しすることが多いです。でも実はこれで出てくるのはその人その人のシナリオということなんです。自分でもよく分からない自分の考えを知るための方法です。

また、念のため申し上げておきますが、私自身は別に円安を願っているわけではありません。多くの投資家の方は円安を願っていると思いますが。私は別に円安を待っていたりはしないので。円高が悪だとも思ってませんし。そんな善悪には私は全く関心がありません。

最後にいつものご注意事項を申し上げますが、このブログは私が知っている制度・用語・仕組みの話をご説明したり、答えのない分野の話で私はこう思うというのをお話しするためのもので、議論をするためのものではありません。金融市場や金融商品の制度や用語や仕組みといった答えのあるものについては、私が知っていることをお話しするもので、ある程度の正確性はあると思いますが、私は未来を知っているわけではありませんので未来の話や答えのない分野の話はあくまで私の個人的な考えをお話しするだけのことです。私の考えが正しいと言うつもりも、これが正解と言うつもりも、私の意見に同意してくれと言うつもりもありません。ご承知おきください。

今日はこんな感じでございます。

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posted by ジョン太郎 at 00:31| Comment(2) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おお!連続更新ですね。
嬉しいです。
参考になります。

円高に振れようが、円安に振れようが、
私も今は利害はないのですけど、
常日頃からアンテナを張って、
シュミレーションしておくことは大切だと思っているので。
Posted by mushoku2006 at 2012年07月08日 07:24
mushoku2006さんへ
おはようございます。
書ける時にはできるだけ書きたいと思ってるので、本当は毎日でも書きたいんですが、なかなか・・・

こんなペースですがこれからもよろしくお願いします。
Posted by ジョン太郎 at 2012年07月08日 09:34
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