2012年07月05日

で、バークレイズって何をしたの? 〜5京円分の金融取引に影響する話〜

今日は今話題のバークレイズの話。

ご無沙汰してます。ちゃんと生きております。更新間隔があいてしまってすいません。



今日、先輩から質問がありまして、内容は「バークレイズって結局何をしでかしたの?社長が謝ったりしてるけど何やったの?」というもの。

結論から言いますと、LIBORを不正操作しました。

順を追ってご説明しますね。

LIBORというのはライボと読みます。London Inter-Bank Offered Rateの略で、ロンドン銀行間取引金利のことを指します。これは何かと言いますと、銀行などの金融機関が日々の資金を融通し合い、資金を運用したり、資金を調達したり、という金融機関同士のお金の貸し借りに使われている金利のことを指します。

集計・発表をしているBBA(英国銀行協会)に対して、聞き取り対象銀行に選ばれている銀行が毎日自分のところのレートを報告して、それをBBAが集計して発表しています。金利は通貨ごとに違いますから、レートは通貨ごとに発表されます。聞き取り対象銀行も通貨ごとに違います。現在の通貨ごとの聞き取り対象銀行はこんな感じ。

AUD:バークレイズ、HSBC、JPモルガン、ドイチェ、など7行
CAD:バークレイズ、HSBC、SG、ドイチェ、など9行
DKK:バークレイズ、HSBC、JPモルガン、ドイチェ、など6行
EUR:バークレイズ、シティ、HSBC、JPモルガン、みずほ、UBS、ドイチェ、など15行
JPY:バークレイズ、三菱東京UFJ、HSBC、JPモルガン、みずほ、住友三井、農林中金、UBS、ドイチェ、など13行
NZD:バークレイズ、HSBC、JPモルガン、など7行
GBP:バークレイズ、三菱東京UFJ、シティ、HSBC、JPモルガン、みずほ、UBS、ドイチェ、など16行
SEK:バークレイズ、HSBC、JPモルガン、ドイチェ、など6行
CHF:バークレイズ、三菱東京UFJ、HSBC、JPモルガン、シティ、UBS、など11行
USD:バークレイズ、BOA、三菱東京UFJ、HSBC、JPモルガン、住友三井、農林中金、UBS、ドイチェ、など18行

ご覧のようにバークレイズは全ての通貨の聞き取り対象行になっています。
ちなみに対象銀行のレートの平均ではなく、上端のほうと下端のほうを除外して、荷重して計算します。



さて、このLibor、世界中で凄まじい数の金融取引に使われています。個人の住宅ローンから、金融機関同士のデリバティブ取引まで、幅広く使われている非常に重要な金利です。このLiborを使った金融取引の額はデリバティブだけで554兆ドル、約5京円にもなります(ソースはロイター。Bloombergは360兆ドルの証券に使われていると報道。)。例えば、支払う変動金利のレートを定義するのに、「Libor+1%を払うこととする」みたいな感じで使われます。この場合、Liborが1%なら1%+1%で2%を払うことになりますし、Liborが3%になれば3%+1%で4%を払うことになります。

なぜこの数字を操作する必要があったのか。1つには、自行の調達金利が跳ね上がっているのを隠ぺいする目的があります。他の銀行が3%で調達できている中、自分の銀行だけが5%でしか調達できていないということが明らかになれば、金融市場から締め出される可能性があります。金融機関同士のプライシングは非常にシビアです。借りようとしている相手先がやばいと思えばお金の出し手は高い金利を要求してきます。本当にやばければお金を出しません。結果、同じ金融機関の立場から見て、あそこはやばいと思われている銀行は調達金利が上がります。こうした不正報告がかなりなされていたとされる2007年・2008年というのは、今回の金融危機のまさにど真ん中と時代で、金融機関同士の疑心暗鬼が広がり、お互いにあそこは潰れるんじゃないかという警戒感からどんどん信用収縮が起こっていった時期です。バークレイズはこの時期に、自分の調達金利が高くなっていることを隠す目的で、調達金利を低く報告していました。

もう1つの目的は、自分たちの手金での取引、自分のお金を賭けて儲けてやろうとする取引を有利にするために、Liborを不正に
報告していました。例えば、固定金利3%を渡し、Libor+1%をもらう、という取引を行う場合、本来Liborが2%であれば2%+1%をもらって3%を払う取引になりますが、談合をするなどしていくつかの金融機関がわざと高い調達金利を報告すればLiborが高くなり、例えば先ほどの例で4%になれば、同じ取引で4%+1%の5%をもらえることになります。3%を払って5%をもらうわけですから儲かりますね。

ざっくり言うとこの2つの目的のために、バークレイズは調達金利を不正に報告していました。当然ながら、Liborの元になる金利が不正に報告されて、Liborが操作され、本来と違う数字になったことでこの期間中の凄まじい量の取引が歪められていたことになります。住宅ローンを借りていた人が、本来よりも高い金利を支払ってしまっていたり、お金を運用している人が本来もらえるべき金利をもらえなかったり、本来と違うリターンとなってしまった取引をしていたことで出た損失のために潰れてしまった会社もあることでしょう。被害は甚大です。

バークレイズの14人のトレーダーは2005年から2009年の間に257回に渡って不正を行っていたと報じられています。また、BBAは2007年以降で少なくとも5回はLiborが適正に報告されていない懸念について報告されています。また、2008年にはウォールストリートジャーナルがLiborが不正に操作されていることを報じています。にも関わらず、こうした問題は解決されないまま、時間だけが過ぎていきました。

BBAへの調達金利の報告を歪めて銀行間取引のレートが跳ね上がっていることを隠しても、例えばCDSスプレッドなどは金融機関同士が考えるお互いの信用リスクがそのまま表に出てしまうわけですから、CDSスプレッドなどから見るとあそこの調達金利があんなに低いのはおかしいだろ、という話になります。Liborの数字がおかしいという話は2007年以降、5年もの長い期間に渡って続いてきたわけですが、それでもいまだにLiborが使われているのは、使われている範囲があまりに広く、いまも有効な契約の額が尋常なく存在していてそれらを修正するのに途方もない時間と労力とコストがかかるからです。また、Liborの代わりになるような指標がないことも大きな要因の1つです。

こうしてこの問題の調査と処分にはかなりの時間がかかってしまっているわけですが、事態の収拾にはまだまだ至っていません。また、全容が解明されたところで、広範囲に渡る歪められた取引を全て正しい形にするなんていうのはもとより不可能です。今回の問題はバークレイズだけの問題ではなく、他の金融機関も不正を行っていたと考えられており、既に複数の金融機関に調査が入っていて、具体名も出てきています。今後も処分が続くだろうという見通しも出てきています。そしてそれらの処分が終わったところで、制裁金が支払われて社長が引責辞任をし、不正をしていたトレーダーのクビが切られたところで、先ほど申し上げたように歪んでしまった取引が元に戻るわけではありません。



これが今、バークレイズがニュースに登場している問題です。
今後も他の金融機関の処分や、新たに判明した事実などの続報が出てくるはずです。



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posted by ジョン太郎 at 22:48| Comment(3) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ジョンブルの名折れとならぬよう
身内には特に厳正な調査と再発防止の徹底を望みます。

信用は金融立国の生命線ですから。
Posted by ジョンブル魂 at 2012年07月06日 15:48
お元気そうで何よりです。

しかし、こういうことだったんですか・・・・・・
背景などが良く分かりました。
詳細な解説、ありがとうございました。m(_ _)m
Posted by mushoku2006 at 2012年07月07日 07:55
ジョンブル魂さんへ
こんにちは!コメントありがとうございます。

ちなみに今回辞任したバークレイズ元CEOのダイアモンド氏はアメリカ人です。ジョンブル魂はありません。イギリス人にとって身内ではないと・・・というのはどうでもいい話ですね。

おっしゃる通り、信用は金融立国の生命線です。今回の件を誰もが納得いくように処することはかなり難しいと思いますが、多くの人がまぁこんなもんかなと思うところまではやってほしいなと願っています。

これからもよろしくお願いいたします。


mushoku2006さんへ
コメントありがとうございました。
ご無沙汰しております。いろいろありまして、なかなか更新できずにおりました。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
Posted by ジョン太郎 at 2012年07月08日 00:36
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