2011年12月23日

ECBの資金供給オペは朗報?

今日はこの話題。

21日のヨーロッパ市場で、ECBは史上初の3年物資金の入札を行いました。
1,134日物のオペですので応札した銀行は3年間の資金を得たことになります。応札した金融機関は523機関。2009年実施の1年物オペの4,500億ユーロを上回る過去最大規模の4,892億ユーロが供給されました。同日に定例の14日物ドル資金入札でも330億円を供給、合わせて53兆円が供給されることになります。これを受けてユーロは一瞬上昇しましたがその後腰折れ。イタリア国債やスペイン国債の価格も上昇しましたが、その後腰折れ。

さて、このECBの資金供給オペ、金額を見るとかなりの規模です。欧州の銀行の資金調達がかなり苦しくなっている中での大規模な資金供給、果たしてこれは朗報なんでしょうか。以下、私の考えを。



まず、欧州の金融機関にとっては間違いなく朗報です。

欧州の金融機関以外にとっては、朗報かどうかはわかりません。私にとっては別に朗報ではありません。今回の資金供給は「やらないとしょうがないもの」でしかなく、やらないといけないものをやっただけで、やらなければシャレにならん道をどんどん進んでいくというだけのことのように見えます。

欧州の銀行間取引はお互い疑心暗鬼状態でその規模はかなり縮小しています。あんなところいつ潰れるかわかんないから怖くて資金なんか出せるか、とお互いに思っている状態です。当然Libor(銀行同士が資金を融通し合う時に使う金利)が上昇します。で、上昇していました。そうすると手元の資金がキツイところが、資金を調達できなくなって破綻、というケースが当然ながら出てくるわけでそれが連鎖を呼ぶことになります。今回の資金供給はこれを防ぐのが一番の目的だと思います。しかも供給された資金は3年物と足の長い資金であり、銀行は大助かりです。欧州の銀行にとっては朗報以外の何物でもないでしょう。

それ以外の人にとってはどうでしょうか。ブルームバーグのニュースによれば、フランスのサルコジ大統領はECBが長期オペを通じて1%の超低金利で資金を供給していることに言及し「イタリア政府がはるかに低い利回りで国債を購入するよう同国の銀行に求めることが今後可能になるだろう。それを理解するのに金融の専門家は必要ない」と発言しています。1%で調達した資金で自国の国債を買うのに6%の利回りは必要ないだろう、4%とか3%でいいだろう、そういう利回りでイタリアの銀行のイタリア国債を買うことに期待しているわけです(現在、イタリアの10年国債利回りは6.9%)。

サルコジだけでなく、今回の資金供給による資金で欧州の金融機関がユーロ圏の国債を買い支ることが期待できると見る向きは結構多くて、そういう報道もいっぱいあるんじゃないかと思います。ECBが銀行に資金供給→供給してもらった資金で銀行が国債買う→国債価格上昇し利回り低下→ユーロ圏政府の調達金利低下→借金返済楽になる→バンザーイ、という話ですね。

無理っしょ。
可能性はゼロじゃないだろうけど・・・
欧州の金融機関が今回供給された資金でユーロ圏の国債を買う可能性はあると思いますよ。ゼロじゃないと思いますよ。

でもね、今の欧州の金融機関が、近いうちに格下げされることが予想されている国債を買うのか、買った瞬間格下げされて価格が下がるかもしれない国債を買うのか、買った後にずるずる値段が下がっていくかもしれない国債をバランスシートに載せていいことがあるのか、自己資本規制でやいのやいの言われてる時に?という素朴な疑問があります。ただでさえ、やれストレステストだの、やれ持ってる国債の明細を明かせだの、やれこのデータを開示しろだの、リスク量を報告しろだの、ずーっと言われまくっている銀行が、そういう国債を買うんでしょうか。わざわざユーロ圏国債の保有額増やすの?不自然じゃない?

こないだ10月の包括合意でギリシャ向けの債権を50%カットしろって強要されたばっかりなんですよ?
(その時の詳しい解説はこちら)
http://jovivi.seesaa.net/article/232600830.html
http://jovivi.seesaa.net/article/235954316.html



例えば、欧州圏の某銀行は今回のオペで110億ユーロを調達しましたが、この銀行の来年の社債償還額はちょうど110億ユーロです。調達したお金でユーロ圏の国債を買うとはとても思えません。

今回供給された額は4,892億ユーロ、来年満期を迎えて乗り換えが必要な欧州の銀行の債務は6,000億ユーロ以上と言われています。今回供給された資金のうちユーロ圏の国債購入に充てられる資金はどのくらいになるんでしょうか。私はかなり限定的だと考えています。


結局、ユーロの国債はECBが買うしかないんだと思いますよ。買ったところで問題の根本的な解決にはなりませんし、永遠に買い続けることはできないわけですが・・・でもECBが買うしかない。他に買う人いないし。実際、ここんところののユーロ圏政府の必要調達額とECBの国債購入はほとんど同じくらいと言われてます。今回の資金供給オペもECBの国債購入も、結局はユーロの価値や信頼を少しずつ削っていくことになります。流動性をどんどん供給して、お金印刷しまくって、というだけのことですからね。


資金供給オペを行う張本人であるECBのドラギ総裁はFTとのインタビューで「資金の使途を決めるのは銀行自身だ」と発言したうえで「銀行には実態経済、特に中小企業に資金を供給することを期待すると」と言っています。国債を購入させるために資金供給するわけではないとECB総裁が言ってるわけです。ドラギ総裁はECBの本来の役割・責務・法で定められた業務の範囲内でしか行動できないとハッキリ言っています。また、人々はその事実を受け入れる必要があるとも言ってます。ECBの責務というのはユーロ圏の物価の安定です。



今回の資金供給で、ここんとこ上昇していたユーロLiborは低下しました。銀行にとっては大変ありがたい資金供給となりました。
でもキツイ銀行が市場から調達しないで済むようになった、というだけの話で銀行同士の疑心暗鬼や不安を解消したわけではありません。ですからドルのLiborは上がっています。

ユーロは資金供給オペのニュースを受けて上がりましたが、その後腰折れ。
ユーロ圏の国債も上がりましたが、その後腰折れ。

私は今回供給された資金の多くが銀行の借り換え需要や手元資金調達の目的に充てられ、ユーロ圏国債購入にまわる資金は限定的と見ています。



今回のニュースも、頭痛薬を飲んだ、風邪薬を飲んだ、という対処療法に過ぎず、病巣を取り除くには至っていません。構造的な問題解決策はまだ見えていません。(構造的な問題って何よ?って方は先ほどリンクしたこの記事(http://jovivi.seesaa.net/article/235954316.html)の後半にある例え話をご参照ください。


以上、ECBによる史上初の3年物資金供給オペ、過去最大規模の資金供給オペ、に対する私のコメントです。
しんどいクリスマスですなぁ。


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posted by ジョン太郎 at 11:07| Comment(2) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は先日欧米の金融機関のサムライ債を買いました。
これなら欲しいと思える金利条件でした。
やはり、相当苦しいのでしょうねえ・・・
つぶれてしまわない限りは、
我々投資家にとっては、
美味しいものが買えるチャンスので、
ありがたいことではあるのですが、
来年春ごろには状況が好転して欲しいものです。

Posted by mushoku2006 at 2011年12月23日 18:36
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
Posted by 株の資金 at 2012年03月12日 17:03
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