2011年12月17日

中国の格付会社によるとアメリカはA、イギリスはA+、中国は?

ちょっとおもしろいかなって。

格付機関といいますと、S&P、ムーディーズ、フィッチが3大格付会社なんて言われていますが、他にも格付会社というのはいっぱいあって、例えば日本にはR&IとかJCRといった格付機関がありますし、韓国にはKorea RatingsとかKorea Investors Serviceがありますし、アフリカにはGCRなんてのがあります。で、中国の格付会社で大公国際資信評価というのがありまして、ここの格付けが独特で、結構ニュースに出てたりします。見てみると結構おもしろいんですよ。

というわけで、主要国の3大格付会社による格付け、日本のR&IとJCRによる格付け、そして中国の大公国際による格付けを比較してみましょう。あと、市場の評価ってことで5年もののCDSのスプレッドも載せておきます。CDSスプレッド順に並べておきますね。あ、ムーディーズの格付けはBaa1とかAa3とかで分かりにくいって方も多いと思うので、他と同じようにBBB+、AA-みたいな表示に置き換えておきます。

以前からこのブログを読んでくださっている方には今さらという感じでしょうが、一応CDSの簡単な説明を。CDSって何よ?って方もいらっしゃるかもしれないですからね。CDSというのは倒産保険みたいなもんです。お金を貸した人、債券を買った人が、お金を貸した相手に万が一のことがあった場合、貸したお金が返ってこないと大損になってしまうので、保険料を払って保険をかけておき、保険対象がデフォルトした場合には保険金をもらって損失額を穴埋めするというもの。当然ながらデフォルトする可能性が高い相手を対象にしたCDSほど保険料は高くなり、この保険料がCDSスプレッドという数字で、通常bps(100bps=1%)単位、1年当たり、で表示されます。

例えば5%の利回りのA国の国債を100億円分買う、A国に何かあるといけないので100億円分のCDSを買って保険をかけておく、A国のCDSスプレッドは現在400bpsだとすると、1年間に100億円の5%の5億円の金利が稼げるけど保険料が400bps=4%なので4億円が保険料で飛んでいき、手元に残る金利は1億円、ということになります。格付け機関の格付けは、極端な話ぜんぜん実態を反映してなかったとしても、AAAの格付けのところが吹っ飛んだとしても、まぁ格付会社としての信用が低下するだけで、AAA格を与えてたところが吹っ飛んだからといって罰金を払うわけでもないですし腹は痛みませんが、CDSは違います。CDSを引き受けた側は、その対象が本当に吹っ飛んだ場合はCDSを買った人に実際にお金を払わないといけませんから、自分の財布のお金をかけてCDSスプレッドを提示しますので、格付け機関の格付けとは当然違ってきます。というわけでCDSスプレッドは刻一刻と変わりますし、何かあればすぐに反応します。なので、CDSのほうがタイムリーですし、市場の本当の評価、潰れた時にはお金を払わないといけない人たちの本気の評価をシビアに表しています。

こないだの欧州債務危機対策で、そんなCDSの根本を揺るがすようなひどい話がありましたが、他に代わるものもないし、やっぱり保険をかけときたい人はいるので、その後もCDS市場は機能してます。その時の話はこの辺の記事をご参照ください。
http://jovivi.seesaa.net/article/232600830.html
http://jovivi.seesaa.net/article/235954316.html

さて、前置きが長くなってしまいましたが改めて各格付機関の各国の格付とCDSスプレッドです。

1217.bmp

1217.bmp
(↑サムネイル画像をクリックすると別窓で大きく表示されます。)

個人的におもしろいなぁと思うところはオレンジにしておきました。なんつってもアメリカがAですw  でも中国は米国債めちゃくちゃ持ってますからね。それはそれ、これはこれ。イギリスやフランスもA+だし、ドイツですらAA+です。イタリアなんてBBBで投資適格ギリギリ。一方で、ロシアの格付が他と比べて高いです。何せアメリカと同格ですから。

あ、自貨は自国通貨建て、外貨は外貨建て、です。ギリシャ政府のユーロ建ての借金は自国通貨建て、ドル建ての借金は外貨建て、ということになります。自国通貨建ての格付けのほうが外貨建てよりも高い国が結構ありますよね。例えばS&Pはトルコを自国通貨建てでBBB-の投資適格にしていますが、外貨建ては投機的格付のBBと2ノッチも下にしています。これはトルコ政府は自分のところの通貨であるトルコリラ建ての借金であれば、インフレでトルコリラの価値が落ちようが、トルコリラが外国為替市場で暴落しようが、トルコリラを1億借りてれば1億分のトルコリラを印刷して返せば済む話ですが、ドル建てなど外貨建ての場合はそうはいきません。トルコリラの価値が下がってしまえば、1億ドルの借金を返すために必要なトルコリラの量は増えてしまいますからね。

中国の大公国際が日本と中国の格付けを外貨建てのほうを高くしていのもおもしろいです。円で返すよりもドルで返すほうが信用力があるってことです。ドル資産いっぱい持ってますしねぇ。為替もほったらかしにすれば上がっていきますしねぇ。いいんじゃないでしょうか。これこそが格付機関の独自色だと思うんですよね。R&Iには中国の格付け自国通貨建てのほうが外貨建てよりも高い理由を聞いてみたいもんです。

日本の格付会社は日本の社債の格付だけでいいんじゃないかと思うんですけどね・・・見てると分かるんですが、3大格付機関が見通しを変えるとそれに追随し、3大格付機関が格付けを下げればしばらくして後追いで下げ、3大格付機関が格付けを上げればしばらくして後追いで上げ、と全く主体性が感じません。JCRはスペインの格付けをAAAにしてますが大丈夫ですかね。いつ下げるんでしょうか。後追いするにしてももう少しスピーディーにやらんと・・・周りにAAAつけてるところはありませんよ。大公国際なんてとっくにAですw

CDSで市場の評価を見ると、スペインのCDSスプレッドは448bpsでベトナムの414bpsよりも高く、スペインの信用力に対する評価はベトナム以下ということになります。フランスの信用はインドネシア以下、オーストリアの評価は南アフリカやフィリピン、タイよりも低いです。デンマークはここに載せたすべての格付機関がAAAを与えていますがそのCDSスプレッドは中国と同レベルです。新興国でもっとも低いCDSスプレッドのチリはドイツに次ぐレベルになってます。で、そのドイツは香港以下と。

夏ごろに「守株 - 先進国は安心&安全で、新興国は怖い&高成長?」というテーマの記事を書きましたが覚えてますか?
http://jovivi.seesaa.net/article/212974519.html
まさにそういうことです。世界は大きく変わり、あらゆる前提や条件が覆され、従来のやり方はうまくいかず、以前は機能していたものが機能しなくなり、かつての理論では説明のつかないことがあまりに多くなってしまいました。「守株」という言葉を常に頭の片隅においておきたいものです。この時の記事にも当時のCDSのスプレッドを載せてありますので比較していただくとこの期間の変化が分かります。

ちょうど年末ですし、来年以降の世界を考えてみるのにも、来年以降の投資を検討するのにもいい機会だと思います。今回の格付のテーブルと併せて見比べていただくのに同じ順番で国が並んでいたほうが使いやすいと思うので同じ順番にして、各国のデータをまとめておきます。予想はIMF予想です。

1217-2.bmp

1217-2.bmp
(↑サムネイル画像をクリックすると別窓で大きく表示されます。)

予想経済成長率はインフレ率差引後の実質成長率、予想経済成長率から予想失業率までの列の単位は%です。皆さんのイメージと比べてどうですか?「あれ?こんなに成長率低いの?」って国もあるでしょうし、「この国よりあの国のほうが成長率が高いの?」なんてのもあるでしょう。失業率も考えさせられる数字が並んでます。よくこのブログでお話しさせていただいていますように、私は「経済指標はたくさんあってどれを見たらいいか分からない」「あっちの数字は良い結果でこっちの数字は悪い結果が出たりしてどちらを信じたらいいか分からない」「しょっちゅう発表されるし全部見てられない」という方には失業率だけ見ることをおすすめしてます。私はそのくらい失業率という数字を重視してます。IMF予想を2012年、2013年、と見てみると、失業率というものはそうそう劇的に改善するもんじゃないというのがお分かりいただけると思います。IMF予想が正しいかどうか、当たるのかどうか分かりませんが、少なくとも私にはIMFよりも優れた予想は出せませんからね。

次にはGDP(単位:10億ドル)、人口(単位:百万人)、1人当たりGDP(単位:ドル)、を載せてます。で、予想財政収支(GDP比、%)。政府に入ってくるお金から、政府の使うお金を差し引いた財政収支の額がその国の経済規模と比べてどのくらいか、というのを表す数字です。財政黒字の国がレアなことが分かりますね。で、政府債務のグロスとネット(GDP比、%)です。政府債務は政府の借金の額で、それがその国の経済規模と比べてどのくらいかを表す数字。グロスとネットの違いは、グロスは借金の額そのもので、ネットは借金から政府が保有している金融資産を差し引いた額です。財政収支と政府債務残高を見ていただくと、ノルウェーのCDSスプレッドが世界一低いのも、チリのCDSがドイツ並みなのもうなずけるのではないでしょうか。

こういう数字見てると楽しいですよね。
私だけ?

今日はこんな感じで。

↓ランキングです。ポチッと押して投票お願いします。
にほんブログ村 株ブログ 投資信託へランキング参加中!





ど素人がはじめる投資信託の本

ど素人が読める決算書の本
posted by ジョン太郎 at 12:11| Comment(2) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
失業率だけ見ていると、
日本って、全然他国より大丈夫のように見えますが、
気のせいですかね?(^^)
Posted by mushoku2006 at 2011年12月17日 21:00
mushoku2006さんへ
こんにちは。コメントありがとうございます。
日本の失業率は低位安定していますね。
「大丈夫」の意味するところにもよると思いますが、失業率の点では日本は他の主要国に比べてかなりマシな水準にあると思います。
失業した人たちがあちこちで暴動を起こしたり、ということも発生していないですしね。

これからもよろしくお願いします。
Posted by ジョン太郎 at 2011年12月18日 23:28
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。