2011年11月11日

ついにLCHがイタリア国債のマージン率を引き上げ

今日はやはりこれでしょう。

ただでさえ忙しい時なのに、週末に風邪をひいてしまって・・・おかげでブログも更新できませんでした。すいません。でも、いわゆるサラリーマン風邪ってやつで、週末具合が悪くなって週末は台無しにしてしまうのに、月曜が来るとそこそこ回復して会社に行けてしまうという悲しきサラリーマン風邪・・・残念ながらもう大丈夫です。


さて、ブログを更新してない間に、前回の更新以降、ギリシャパパンドレウ政権の信任決議案が可決されました。
・・・結局なんだったんだという感じですが・・・
でも、その後パパンドレウ首相は辞任表明。
イタリアのベルルスコーニ首相も辞任表明。
G20は何も決まらず・・・そりゃそうか。
そのくらいですかね。


で、イタリアの国債が一気に価格下落しました。15%くらい下落しましたかね。10年債、5年債、2年債、いずれもあれよあれよという間に次々に7%を超えて、このブログでよく例えている「滑走路」に入ってしまいました。ついには2年債利回りが10年債利回りを上回り・・・

極めつけがこれ。今日のタイトルにもさせていただきましたが、LCHがイタリア国債のレポ取引のマージン率をこれまでの6.65%から11.65%に引き上げました。

???という方、大丈夫です。ちゃんと説明します。
まず、LCHが何者かというと、LCHクリアネットという決済機関です。それも世界最大級の。欧州ではもちろん最大、世界でもたぶん2番目に大きな決済機関です。決済機関が何をするところかというと、平たく言えば2者間の取引の間をもち、お互いのとりっぱぐれがないようにしてあげるところ、です。

で、その決済機関が引き上げたのが、レポ取引のマージン率。

レポ取引というのは物凄く簡単に言うと、2者間で国債と現金を短期間交換する取引。国債持ってるんだけど売るわけにはいかない、あるいは今は売りたくない、でもお金必要、でもそんなに長い期間必要なわけじゃなくて目先ちょっとだけ現金が必要でその後は別にいらない、という人が一旦国債を売って現金を作って、用が済んだらまた同じ国債を買い戻すってのは非効率なので、お金が余ってる人の運用にもなりますし(もちろん金利がつく)、ちょっとの間だけ交換すればいいじゃんというもの。これがレポ。

これをA銀行とB銀行でやる時に、A銀行が国債を渡す、B銀行が現金を渡す、はずがA銀行が国債を渡した瞬間にB銀行がばっくれてA銀行は国債だけ渡して現金をもらえないまま茫然・・・ということを防ぐために必要な機能がさっきご説明した「決済」です。この決済、というのは地味に見えて実はものすごく重要なファクターで、金融市場の根幹であり、血管であり、心臓であり、血液であり、とにかく超重要な機能なんです。決済を馬鹿にすると本当にエライ目に遭います。覚えておきましょう。

で、マージン率というのは、例えばA銀行が渡す国債がギリシャ国債100億円分で、B銀行が渡す現金が100億円分、だったらどうでしょうか。こんなものは成立しませんね。市場で40億円以下で売買されている国債と100億円の現金を交換できるはずがありません。ここで「マージン」という考え方が必要になってきます。もうわかりますね。額面100億円の国債だけど、実際には40億円以下の時価しかないから、この国債を使って交換できる現金は40億円、という風に決める。この時、マージンとしてさっぴかれる60億円分、60%がマージン率、となります。

じゃあ今のギリシャ国債のマージン率は?今はギリシャ国債を渡して代わりに現金を引っ張ってくるなんてことはできません。みなさんなら現金渡せますか?無理ですよね。みんな無理です。そんな取引は成立しません。

これでもう大丈夫でしょう。先ほどのをもう一度言いますよ。
「LCHがイタリア国債のレポ取引のマージン率をこれまでの6.65%から11.65%に引き上げました。」

ハッ!(゚ロ゚;) そういうことか!

ぇぇ。そういうことです。

ちなみに、これは結構どうでもいい話かもしれませんが、LCHというのはイタリア国内の銀行で取引されるイタリア国債のレポの決済はあんまりやってなくて、主にイタリア国外の銀行が取引するレポの決済をしています。イタリア国内のイタリア国債レポは主にCC&Gという決済機関がやっていますが、当然ながらここもLCHに合わせてマージン率を既に引き上げてます。

閑話休題。

これまではイタリアの国債を100億円分渡せば、マージン率6.65%を差し引かれた93.65億円のお金を引っ張ることができました。ところが、マージン率が引き上げられてしまったため、100億円のイタリア国債では11.65%のマージン率を引かれて、88.35億円しか引っ張ってこれません。皆さんがそんなイタリア国債を持っている銀行だったらどうしますか。たまらんですよね。売ったら大損、持っておいてもたいして資金を引っ張れない・・・

というわけで今日の国債市場が開けば当然イタリア国債は一気に下落・・・するのは目に見えていて、開いた瞬間ガーッと下がり始め、私はその時ずーっと興味深くその様子を見守っていました。すると、後でご説明しますが、ごく自然な成り行きでイタリア国債の価格下落はピタリと止まって反転し、あとは価格がスイスイと上がって、利回りが下がっていき、あっという間に10年債、5年債、2年債、いずれの利回りも7%以下に低下しました。さて、どうしてでしょうか。

簡単ですね。答えは・・・

ECBが買った。他に買う人いませんからね。ECBが買うしかないんですよ。でもECBも永遠に買い支えられるわけじゃありません。いずれ限界がきます。でも、買うしかない。買わなきゃ下がり、下げればマージン率が上がり、また下がる、というのが目に見えてますからね。

しかも、今日はよりによって、という日です。今日はイタリアの1年国債の入札があり、14日には5年物国債の入札が控えてます。今日の1年国債の入札の前に、昨日LCHクリアネットがマージン率を引き上げちゃうタイミングの悪さ。LCHがマージン率を引き上げた翌日のマーケットで入札なんかやったらエライことになります。1年物国債の入札は向こうの午前11時の予定だったので、当然ながら朝早い段階で、イタリア国債を「適切な」利回りまで引き下げる必要があったわけですね。どう考えても今日は買い支える必要があった。

これでもし、マージン率引き上げを受けて更に利回りの切り上がった市場でイタリアの1年国債が行われて、当然のように酷い結果になり、更にそこからイタリア国債が値を下げるとどうなるでしょうか。もうお分かりですよね。LCHが更にマージン率を引き上げ、イタリア国債で引っ張れるお金は更に小さくなっていき、更にイタリア国債の魅力がなくなって買い手がつかなくなるということです。


もちろん、先のアイルランドやポルトガルの時はそれが起こりました。ギリシャの時の数字は控えていないのですが、アイルランドとポルトガルの時の数字はだいたい控えてあります。

アイルランドの時は2010年11月10日にマージン率を一気に15%に引き上げ、17日には30%に引き上げ、25日には45%に引き上げました。ちなみにアイルランドがEUとIMFに支援要請したのが2010年11月21日です。その後はちょっと下がっては上がって・・・で年を越して今年になって3月24日に30%→35%、4月1日に35%→45%、5月6日に45%→55%、5月26日に55%→65%、6月14日には65%→75%、6月29日75%→80%・・・という感じでした。マージン率80%ということは100億円の国債を渡して20億円しか現金を引っ張ってこれないということです。恐ろしいですね。

ポルトガルはもっとあっという間で、今年の4月6日にEU・IMFに支援要請して4月21日に15%から25%に引き上げ、その後見逃して5月11日に35%→45%、
6月14日に45%→65%、6月29日には65%→80%、という感じでした。

イタリアがこの流れに入ってしまうと本当にエライことになります。ギリシャやアイルランドやポルトガルと違って、イタリアは救えませんから。イタリアの借金はこの3ヵ国の合計よりも多いんですから。1兆9,000億ユーロもあるんですから。EFSFなんかじゃ到底無理です。しつこいですけど1兆9,000億ユーロですからね。来年償還を迎える債券だけで3,000億ユーロもあります。借り換えのたびにECBがイタリア国債を買いまくって「適正水準」までイタリア国債の利回りを下げる?無理無理無理無理無理無理・・・

こないだの包括合意で「夜を徹した会議で包括策の合意がなされ、ようやく出口が見えてきたヨーロッパの財政問題・・・」とか「これで最悪の事態は避けられ最も危ない時期をなんとか乗り切った・・・」「やっとひと段落し、肩をなでおろすことができた欧州債務問題・・・」とかって報じられてるものもありましたが、どこの世界の話?って感じです。マーケットはそんな状態じゃありません。
そういうのはマーケットを見てない人がマーケットのことを想像して言ってるんじゃないでしょうか。金融の話はそういうケースが多いというのが相変わらずと言えば相変わらず。他の分野も、その分野の専門家に言わせれば同じ状況かもしれないけど・・・

問題は全く解決しておらず、解決の糸口も見つからず、一歩一歩確実に悪い方向に歩みを進めており、依然として緊張状態が続いています。と少なくとも私はそう感じてます。

↓ランキングです。ポチッと押して投票お願いします。
にほんブログ村 株ブログ 投資信託へランキング参加中!





ど素人がはじめる投資信託の本

ど素人が読める決算書の本
posted by ジョン太郎 at 00:21| Comment(2) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
解説ありがとうございます。
なんとなくですが、
何が起きたか、何が起きているか、
理解できた気になっています。

季節の変わり目です。
お体にはお気をつけて。
Posted by mushoku2006 at 2011年11月12日 14:57
mushoku2006さんへ
いつもコメントをくださってありがとうございます。
ご参考にしていただけたのであれば幸いです。
これからもよろしくお願いいたします。
Posted by ジョン太郎 at 2011年11月12日 18:27
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。