2011年08月08日

バブルとマネートレイン

今日はバブルとマネートレインのお話をさせていただきます。

これまでに何度も、バブルの話とか、マネートレインの話をしてきましたが、記事があっちこっちバラバラになってしまっていて、リンクする時にもちょっと不便なので、まとめを書いてみようかなと思いまして。



まず、そもそも価格がどうやって決まるのかという話から。

金融市場で取引されている、株や債券、通貨、REIT、デリバティブ、コモディティなどの金融商品はもちろん、果ては不動産や絵画やレア物まで、モノの値段というのは買い手の買いたい値段と、売り手の売りたい値段、の合致したところで決まります。あるものを100円で買いたい人、90円で買いたい人、80円で買いたい人がいて、売り手のほうには120円で売りたい人、130円で売りたい人、140円で売りたい人がいる。この状態では取引は成立せず、売買できないわけですから売買価格も決まりません。そこに、120円でも買う!という人が現れると120円で売りたい人との売買が成立し、120円という売買価格が生まれます。もちろん、100円でも売りたい!という人が現れてもOKです。これを需給バランス(需要=買いたい人、供給=売りたい人、のバランス)と言います。

金融商品や不動産といったものには、本来、「絶対的な価値」というものはありません。今、100円の売買価格が成立しているものは「絶対的な価値」として100円の値段があるというわけではなく、明日には100円の価値はないかもしれないのです。その「確からしさ」はもちろんモノによって変わってきます。例えば国債は政府が償還日になったら額面にある金額を返してくれると約束してくれているものですが、そんな国債でも値段は変わります。もちろん、投資家が要求する利回り水準の変化によって国債の価格が変動することが多いわけですが(より高い利回りを要求=債券価格下落、低い利回りでもOK=債券価格上昇)、信用度合いによっても、需給バランスによっても国債の価格は動きます。同様に、というよりももっと不確かなもので例えれば、100円で取引されている株式はいつまでも絶対に100円というわけでもなければ、100円という絶対的な価値があるわけでもありませんし、5億円で取引が成立した土地だって絶対に5億円の価値があるというわけでもなければ、1年後も5億円で売れるというわけでもありません。

更には、価値を測るモノサシとなっている「お金」の価値自体もインフレやデフレによって変わってしまいます。極端な例ですが、1億円だった土地が10年後に1億円のままの価格を保っていたとしても、インフレが進行して物価が10倍、お金の価値が10分の1になっていれば、1億円という価格を保っていたその土地の価値は実質的に下落していることになります。
(もちろん、インフレが進行すれば土地の値段も上がるのが普通ですが、ここで言いたいのはそういうことではなくて1億円というモノサシの目盛自体が変わってしまうこともあるという話です。釈然としない、気持ち悪い、という方は「土地」を「債券」に置き換えて読んで頂いても結構です。)



そんな不安定な「価格」ですが、「本来的な価値はこのくらいのはずだ」「本源的な価値としてこのくらいの価格はつくはずだ」という考え方もあります。こうした考え方を使うと便利なことも多いので、結構いろんなところで使われます。例えばこんな会社、A社の株があったとします。

【A社】
@ 発行済株式数:10株
A 利益:10万円
B 1株当り利益:1万円(A÷@)
C PER:20倍
D 株価:20万円(B×C)
E 配当性向:100%
F 1株当り配当:1万円(B×E)
G 配当利回り:5%(F÷D)

株の取引に慣れている人であれば、PERが20倍だし、配当利回り5%なので、そんなに極端に「割高」でも「割安」でもないだろう、と感じるのではないでしょうか。PERやPBR、配当利回り、といった指標は銘柄間の「割高」「割安」を比較することができるだけでなく、「本来的な価値」とか「本源的な価値」とか「妥当な価格」はどのくらいなのかを考え、現在の価格がそれに対して「割高」なのか「割安」なのかを考えるアプローチでもあります。

銘柄間の比較というのは、ここに全く同じ経営を行う別の会社B社があって、そのB社の株はこんな感じだったとします。

【B社】
@ 発行済株式数:10株
A 利益:10万円
B 1株当り利益:1万円(A÷@)
C PER:5倍
D 株価:5万円(B×C)
E 配当性向:100%
F 1株当り配当:1万円(B×E)
G 配当利回り:20%(F÷D)

B社の株はPER5倍、配当利回り20%ですから、A社の株よりずっと「割安」に見えます。これが銘柄間の比較です。

ではここで、もし、A社の株価が10倍になったとしましょう。20万円だったA社の株価は200万円に。これは割高になったのでしょうか?あるいは「妥当な」株価上昇なのでしょうか?これを判断するにはもう少し数字が必要ですよね。こんな感じだったらどうでしょうか。

【株価が10倍になったA社】
@ 発行済株式数:10株
A 利益:100万円
B 1株当り利益:10万円(A÷@)
C PER:20倍
D 株価:200万円(B×C)
E 配当性向:100%
F 1株当り配当:10万円(B×E)
G 配当利回り:5%(F÷D)

株価は10倍の200万円になりましたが、PERは20倍のまま、配当利回りも5%のまま、で変わりません。ということは、株価は上がったものの割高になったわけではなく、特に割高にも割安にもならず、A社の株の「本質的な価値」が上がった分を株価が反映しただけ、と言えそうです。

では、こんな感じだったらどうでしょうか。

【株価が10倍になったA社の別のケース】
@ 発行済株式数:10株
A 利益:10万円
B 1株当り利益:1万円(A÷@)
C PER:200倍
D 株価:200万円(B×C)
E 配当性向:100%
F 1株当り配当:1万円(B×E)
G 配当利回り:0.5%(F÷D)

株価は先ほどの例と同じく10倍の200万円になりましたが、利益は全く増えていないため、PERが跳ね上がっています。なんとPER200倍、利益の200年分を株価が織り込んでいることになります。配当利回りも低下して0.5%。配当分だけで株の投資金額を回収しようと思ったら200年かかってしまいます。A社の利益も配当も全く増えていないのに株価だけが上がって、PERは上昇、配当利回りは低下、これは単に割高になりながら株価が上がっただけで、A社の株の「本質的な価値」が上がったわけではないと言えそうです。こんな馬鹿げたことが実際に起こるのでしょうか。残念ながら実際に起こります。もちろん逆も然りで、リーマンショックの時などはあらゆる株が投げ売りされ、利益が激減した会社の株と、利益がめちゃくちゃ伸びている会社の株が全部一緒くたに売られて、物凄く割安な株がそこら中に落ちていました。

こういう事態をよく発生させるのは、取引規模や市場規模に比して大きな資金の出や入りがあった場合です。



以前、こんな例え話をしました。
あるところに小さな魚市場がありました。アジやイワシやサンマなど1匹100円から300円程度の魚が1日に10,000匹程度取引される魚市場です。平均200円の魚が1日に10,000匹取引されるわけですから、200円×10,000匹で1日の取引額は200万円程度ということになります。これがこの魚市場の市場規模、取引規模です。200万円持ってたらその日に魚市場で取引されている魚をほぼ全部買い占めることができちゃうわけですね。


この魚市場ではこんな値段の決め方がされています。アジを買いたい人と売りたい人が自分の買いたい値段と、売りたい値段を黒板に書いていきます。ある日の黒板がこんな感じだったとしましょう。

f1.bmp

一番安く売ってもいいよというのが大海丸さんの110円で400匹。一方で、一番高く買ってもいいよというのは魚八さんの95円で500匹。これでは取引は成立しません。株をやったことはピンと来たと思いますが、株の「板」というのがまさにこれです。で、ここにこんな買い手が現れたとしましょう。魚買さんです。魚買さんがやってきて黒板にこう書きます。

f2.bmp

「120円で600匹買います。」これで取引が成立します。まず、大海丸さんが110円で400匹売ってもいいと言ってるわけですから、これを全部買って、更にあと200匹、黒潮丸さんが120円で300匹売ってもいいと言ってるわけですからこの300匹のうちの200匹を120円で買えば600匹を120円以内の単価で買えます。そうするとこうなります。

f3.bmp

売れ残った黒潮丸さんの希望単価120円が100匹。成立した取引は黒板から消えます。またここで新たに安く売ってもいいよ、高く買ってもいいよ、という人が出てくるまでにらみ合いが続きます。



そんな魚市場に、「この魚市場で取引されてる魚を買い集めます!」とうたって集められた500万円もの資金を持った買い手が5人現れて、魚を買い漁ったらどうなるでしょうか。市場全体で1日の取引額が200万円なのに、です。「この魚市場の魚を買う!」とうたって集めたお金ですから、他の市場の魚を買うわけにはいきません。また、魚を買えずに現金のまま持っていたら、「聞いてた話と違う!」と言われちゃいますから、とにかく買えるものは何でも買います。

とりあえずさっきの黒板に載ってる売り物は下から上まで全部買います。黒潮丸さんの120円のを全部買って12,000円、海守丸さんの130円のを500匹買って65,000円、大漁丸さんの150円のを100匹買って15,000円、合計しても92,000円にしかなりません。新たに現れた5人はそれぞれ500万円ずつ持ってますから、こんなものでは全然足りません。黒板のもっと上のほうに書いてある200円のも、300円のも、500円のも全部片っ端から買うことになりますが、それでもこの5人が持っている500万円×5=2,500万円にはとても届きません。取引価格はどんどん上がっていきます。

そのうちこの500万円を持っている5人の間で転売が始まります。この500万円を持っている5人をAさん〜Eさんとしておきましょうか。Aさんがこう言います。「さっき買った単価500円のアジ100匹、1匹1,000円でも良ければ売ってあげるよ。」
もうムチャクチャです。ちょっと前まで100円で買うか95円で買うか、というくらいだったのに。それでもBさんが手を挙げます。「しょうがない。買わないわけにはいかないし・・・1,000円で買うよ」

しばらくしてAさんのところにCさんが来ます。「Aさんなら1,000円でも良ければ売ってくれるって聞いたんだけど、1,000円でも良いから売ってもらえない?」Aさんはニヤリと笑いながらこう言います。「1,500円でもよければ売ってあげるよ。」

Aさんは魚市場を後にします。そしてAさんが「この魚市場で取引されてる魚を買い集めて来ます!」と言うのを聞いてAさんにお金を託した人たちのところへやってきました。Aさんはこう言います。「500万円を託されて魚市場に行きましたが、買えた魚は50万円分だけです。」
早速、怒号が飛び交います。「聞いてた話違うぞ!」
Aさんはそれをなだめながら得意気にこう言います。「まぁ、落ち着いてください。私が買って持って帰ってきた魚は50万円分だけです。でも、私が目利きした魚、は凄いですよ。私の目利きに狂いはありませんでした。500円で買ったものがなんと1,500円で売れましたよ!3倍になりました。このお金で明日さらに魚を買いに行きます!あの魚市場は宝の山です。素晴らしい魚がごろごろしてます。私の目利きであの宝の山に行って買い物をして転売すれば大儲けできます!」皆がAさんに札束を押し付けてきます。「これで買えるだけ買ってきてくれ!」

翌日、Aさんは5,000万円もの資金をもって例の魚市場に向かいます。なんと小さな魚市場には、噂を聞きつけてやってきた人たちの人だかりができています。それどころか、アジ2,000円!なんていう値段が飛び交っています。1匹200円×10,000匹で200万円くらいの市場規模だったのが、1匹2,000円×10,000匹では2,000万円ということになります。市場規模は一気に10倍になったことになります。それでもAさんの持っている5,000万円は大きすぎます。これは大変だとAさんは値段なんかおかまいなしに片っ端から魚を売ってくれる人を見つけては魚を買い漁ります。それでも次から次へ噂を聞きつけた人がやってきて、Aさんがこの日平均2,200円で買い付けた魚は夕方には3,000円で転売できていました。

その翌日も魚市場に向かったAさん。魚市場にはテレビや雑誌の取材が押し寄せていました。「500円で買った魚があっという間にその日のうちに1,500円になってしまう、大人気の凄い市場」「ちょっと前まで100円程度だったアジが今やなんと5,000円!」などと騒ぎ立てています。

なんだかスーツを着た専門家らしき人が知った風な顔で「この魚市場はもともと小さいながらも非常に良質の魚が水揚げされるところだった。事実、ここの魚は今やアジでも1匹5,000円という凄まじい高値で取引されている。実際にそれだけの価値があるということだ。ここのアジが5,000円というのは全く不思議なことではない、それだけ良質な魚なんだから、5,000円くらいで取引されて当然だ。」なんて言ってます。ああいう専門家の人が5,000円の価値があるアジだって言ってるんだから、そうなんだろう、と信じる人がまた市場に押し寄せてきます。

元々この魚市場で取引をしていた人たちは唖然としています・・・ついこないだまで100円で取引されていたアジが今や5,000円で取引されています。馬鹿馬鹿しくて買う気にもなれません。

ところがある日、ふとしたきっかけで、この魚市場の熱気が急激に冷めます。おなかでも壊した人がいたんでしょうか。あるいは、たまたま、一気に利益確定しちゃおうかなと思った人が一気に売り注文を出したのが何人か重なってしまって結構な量の売りがまとまってしまい、熱狂の中でも「アジが1匹5,000円ってやっぱおかしいんじゃないだろうか・・・」「いつか値段が暴落する時が来るんじゃないだろうか」「値段が暴落した時は誰よりも早く逃げたい。逃げ遅れるのは嫌だ。」と思っていた人たちを突き動かしたとか、そんなことがきっかけで魚の売り物が急に増えはじめ、「それ見たことか!」「逃げ遅れるな!」「俺の売りが先だ!」と売りが売りを呼び、そのパニックを見た人がこれは大変とまた更に売りにいきます。5,000円のアジは見る見るうちに値段を下げていきます。4,000円、3,000円、2,000円・・・それでも「もうだめだ」とパニックになった人たちは買いません。500円で買う人もいません。

アジの値段が120円になった時、もともとこの市場で取引していた人たちが帰ってきました。「アジ120円で100匹」と魚政さんが黒板に記入しています。もはやTVも雑誌も取材にきません。あれほど騒いでたのに。ここのアジは良質だから5,000円くらいで取引されて当然だなんて言ってた専門家っぽい人はどこかへ消えてしまいました。結局、このお祭り騒ぎに参加した人たちのお金が吹っ飛び、損して泣いて、それで終わり。



少し前にベトナム株市場でこれと全く同じことが起きました。ベトナム株市場の時価総額はほんの数年で1,000億円から2兆円にまで膨れ上がりました。次から次に押し寄せる資金が価格を釣り上げていきます。企業の利益が増えていくペースよりも株価が上昇するペースのほうがずっと早いため、冒頭でご紹介した株価が10倍になったA社の株のように、PERはどんどん上昇していきます。日本で発売されるベトナム株ファンドは発売と同時に瞬間蒸発。これをマネー雑誌などのメディアが「売り切れ続出!大人気のベトナム株ファンド!」と煽りまくります。

当時のインターネット上の情報やマネー雑誌は本当に「中国はもう古い!時代はベトナムだ!」という内容ばかりでした。FPだの、アナリストだの、経済評論家、ナントカ専門家だの、というもっともらしい肩書をもった人たちがもっともらしく聞こえるコメントを載せていました。今のREITみたいなもんです。猫も杓子もベトナム株。ベトナム株をなんとか買う方法はないものか、瞬間蒸発で売り切れてしまうベトナム株ファンドをなんとか買えないものか、と必死になってる人たちがたくさんいました。そうやって「ベトナム株に投資します」とうたって集められたお金は、ベトナム株を買わざるを得ません。たとえどんな価格であろうとも。たとえどれだけぼったくられようとも、買えるベトナム株を買いまくるしかないのです。

そうやってベトナムには市場規模と比べて大きすぎるお金が流れ込んだせいで、市場の売り物を全て買いまくるしかない資金が板の下から上まで片っ端から全部買って、ボッタクリ価格であろうと買いまくって、そのせいで価格がメチャクチャ上がりました。さっきのアジの値段みたいに。にもかかわらず、そんなことは報道せずに、後付けで「ベトナムは超高成長国だから」「若年層が多いから」「真面目な国民気質があるから」と無理やり理屈付けをし、最悪なことに「実際に、ベトナム株市場はこの1年で株価が倍になっている。これが事実だ。これがベトナムの高成長を証明しているようなものだ。」というムチャクチャなことを言います。マネーフローで価格が押し上げられたというのに、その押し上げられた価格の上昇率をもって、後付けした成長力の証明に使うなんて、良心・良識のある人間の言えることじゃないです。

「これだけ株価が上がってるんだから、これこそが成長力の証明だ、早くしないと乗り遅れるよ」こう言っていた人たちは、それに乗せられて大損した人たちのことなんて気にもせずに、また新たな「価格の上がっている市場」を探してきては騒ぎ立てています。市場の上昇率をもって成長力を証明しようとする人の話を聞くときは慎重になったほうがいいです。できれば「そこの市場にはその上昇した期間にどのくらいの資金フローがあったのですか?その資金フローが入るまでの時価総額や1日の取引額はどのくらいで、今は時価総額と1日の取引額がどのくらいになっていますか?」と聞いてみたほうがいいです。

その後、ベトナム株は先ほどの魚市場のアジの値段のように一気に値を下げますが、そうなるとマネー雑誌は知らんぷり。全くその話題に触れません。平気な顔してまた次の話題に。その後は、ドバイだったでしょうか。ドバイも全く同じ道をたどりました。



私はこうやって市場に大量の資金を供給して価格を押し上げるマネーフローを「マネートレイン」と呼んでいます。莫大な資金量と圧倒的なエネルギーを持つマネートレインが停車した駅にはあっという間に活況が訪れ、熱狂的なカーニバルが始まり、そのマネートレインが発車して次の駅へ向かうと、あっという間に駅はさびれ、寂しくなってしまい、人々は「マネートレインの次の停車駅はどこだ!?」と次の停車駅を探し求め、目を血走らせてあちこちの駅に走り出します。

マネートレインの停車駅には、大量の資金が供給され、これによって市場の売り物がどんどん買い上げられていって、価格は押し上げられていきます。この押し上げられた価格の上昇率をもって「この1年で●%も上昇」「●%も上昇している市場で、ここに投資しておけば間違いない!」「乗り遅れるな!」と煽る人たちが出てきます。駅には取材陣が押し寄せ、インターネットにも、雑誌にも、テレビにも、新聞にも、週刊誌にも、その駅の話題が載りまくります。こうした情報に乗せられた人たちが、なんとか便乗して自分も儲けたいとお金を投じて、こうした資金よって新たなマネートレインが生み出され、マネートレインの停車駅には次々と新しいマネートレインが到着し、資金を供給してどんどん割高になっていく価格を更に押し上げていきます。

マネートレインによってかさ上げされた価格、1匹5,000円のアジの価格は、ふとしたきっかけで熱狂が覚めると急落するというケースがほとんどです。だいたい熱狂のピーク近くになってくると、お祭り騒ぎに参加している人たちも「ひょっとしてシャレにならないところまで来ているんじゃないか」「これっていつか急落する日が来るんじゃないか」「そろそろやばいんじゃないか」「下落し始めたら絶対に自分だけは乗り遅れたくない」と考えていますから、メチャクチャ神経過敏・疑心暗鬼状態になっています。そこにふとしたきっかけがあれば、あとはあっという間にパニックが発生し、もともと情報に流されやすい人たちのお金ですから、売りが売りを呼ぶことで下がっていく価格の下落率を見て更に焦りを高め、いくらでもいいからとにかく売りたい、早く逃げたい、と価格を更に下げていきます。こうなると今度は「価格はどこまでも下がってゼロになってしまうんじゃないか」とこれまたムチャクチャな人が出てきます。

しかし、多くのケースでは先ほどの魚市場の例のように、もともとそこで取引していた魚屋さんが買ってくれる100円前後まで価格が落ちてくれば、もともとそこで取引をしていた人たちが戻ってくるというケースが多く、また、株であればPER・PBRが低下、配当利回りが高くなり、債券であれば利回りが高くなって、割安感が出てきて投資魅力が出てくれば買いたいという人が出てくるものです。

また、マネートレインの停車によってかさ上げされた部分がそっくり全部、必ず剥離する、というわけではありませんし、一時的にマネートレイン停車によって利益は全く増えていないのに株価が10倍になってPERが10倍になったとしても、あっという間に本当に利益が10倍になってしまえばPERはまた元の水準に戻るわけですからね。ただ、マネートレインの停車で価格がかさ上げされている懸念のある市場に投資する際には、かさ上げされた部分あるいはそれ以上の部分が、マネートレインが次の駅に向かって発車することで剥離してしまうかもしれない、という覚悟は必要だと思います。

不動産価格やコモディティ価格でもそうです。住まいにしろオフィスにしろ商業施設やインフラなど不動産の需要というのは一定量あるわけで、土地の価格はゼロになることはまぁないでしょう。平均年収の10分の1、例えば東京で50万円で土地付きの家が売ってればそりゃあ誰か買うでしょうから、実需があるくらいのところまで下がればマネートレインの停車でかさ上げされた価格も下げ止まるのが普通です。原油や小麦、大豆といったコモディティも、実需というのはあるわけですから、投機マネーの流入でマネートレインが停車して価格がかさ上げされていたとしても、価格が落ちて行って実需があるくらいのラインまで下がれば下げ止まるはずです。

例えば今の世界の経済力で原油は1バレル80ドルくらいであれば買える、何とかなる、としましょう。あくまで例え話ですが。ここに将来の需要拡大をにらんだお金が流入し90ドルくらいまで上がったとします。問題はこの後で、「こんな短期間で10%以上も値上がりした」ということに釣られて、お金が流入して100ドルになり、「もう25%も値上がりしている」となって更に120ドル、140ドル・・・といくとだいぶ実需から乖離をしてしまっていると言えるでしょうし、実需がそのくらいにまで追いつけるようになるまでの間は、いつ実需が支えられるレベルまで落ちてもおかしくない、という覚悟が必要だと思います。あっという間に実需が上がって140ドルでも実需で買える、となれば140ドルという市場価格は「先取り」に成功したことなるわけですが、その「先取り」を狙った人たちや便乗で儲けてやろうと向かった人たちは、マネーフローという薄情なものでフワフワにかさ上げされた部分にお金を投じていることになりますから、いつマネートレインが出発してしまって、フワフワな部分が消えて、硬い実需の地面にまで落っこちて叩きつけられるかわからない、と思っておいたほうがいいと思います。この相場が長く続きますように、って祈りながら。



特に、「売れているものが好き」「みんなが買っているものが好き」「お隣さんと違うのはイヤ」「自分だけ他の人と違うものを買うのはイヤ」という右へならえ・ムラ社会気質の日本にいると、こうしたマネーフローによる価格のかさ上げには、余計に注意する必要があるんじゃないかなと思います。豪ドルしかり、ブラジルレアルしかり、グローバルREITしかり、恐ろしいことに日本人のこうした気質は5兆円とか10兆円というとんでもない金額のマネートレインを作り出してしまいますからね。もちろん、日本人の作り出したマネートレインが停車していなければ、豪ドルもブラジルレアルも米国REITも今の価格にはなっていないと思います。じゃあそんな日本人が「みんなが解約してるなら私も解約する」「他の人がこっちに乗り換えてるなら私もそっちに乗り換える」「私だけ逃げ遅れるのはイヤ」と一斉に動けばどうなるか。果たしてその値段で買ってくれる人が日本以外にいるか、ですよね。

そしてマネートレインが停車してだいぶ時間が経っていて、そろそろ次の駅に向かって発車するかもという時の緊張感ときたらハンパじゃないです。それでも、「まだ間に合うかしら?」っておそるおそる・・・でも欲に勝てずに更にまだお金を入れようとしている人がいるものなんですよね。時々、日本人が作り出すマネートレインの粘り腰って凄いなぁと思うことがあります。普通ならプツンといっててもおかしくないくらいのところで、まだプツンといかない。その心理状態は、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」に似ています。でも後半でお祭りに加わろうとしている人ほど、「大丈夫よね?」「今もこれが一番人気なのよね?」「分配金が出てるから大丈夫よね?」と保証を強く求めたがります。そういう人も自分が赤信号を渡ろうとしてることは薄々気づいてるんでしょうね。それでも、自分だけ乗り遅れるのがイヤで、リスクをとっている人たち同士で「大丈夫よね」「大丈夫だよね」「大丈夫さ」と言い合って励まし合い、誤魔化し合い、気を紛らわし合って、目をつぶって赤信号を渡り始めると。いずれ、その中から遠くで車の音がしただけで逃げる人が出てきます。幻聴を聞いただけで逃げる人もいるでしょう。逃げる人を見て焦って逃げる人がいて、逃げる人を見てパニックになって騒ぐ人がいて、その騒ぐ人を見てまた逃げる人がいる。そういう集団心理がマネートレインを作り出し、マネートレインを次の駅に向かわせます。

お隣さんと一緒がいいです気質の日本にいると、マネートレインに振り回され、惑わされることが他の国と比べて多くなる気がするんですよね。これは完全に私の個人的な感覚論ですが。まぁ私のイメージ論はおいておいても、価格上昇がマネーフローによるものなのかどうかは検証するくせをつけておいたほうが投資の世界ではケガをしなくて済みます。くれぐれも「価格が上がってる」ことを安心材料や成長力の証明に使われてもそれに惑わされませぬように。

日本の有名なバブル経済の時の不動産価格や株価の上がり方はまさにこうしたマネーフローによって価格が押し上げられた形でした。価格が押し上げられたその上昇率によって儲けた人の話が更なるマネーフローを呼び、そのマネーフローによって更にかさ上げされた価格で儲けた人の儲け話がまた更なるマネーフローを・・・その回転が続いているうちはよかったですが、その回転が止まって逆回転し始めた時に何が起きたかは皆さんご存知の通り。企業利益の伸びをはるかに超えた株価上昇、経済力や実需のレベルをはるかに超えた不動産価格の上昇、いずれもリーズナブルな価格になるまで下がり続けましたよね。ベトナム株の時もそうでした。

果たしてマネートレインは次にどこに向かうのか。マネートレインの停車駅にお金を投じるのは、短期的な売買を繰り返してお金を増やそうとする投機をやる人にはおもしろい場所かもしれませんが、私のように長期の投資をしようとしている人間にとっては最も避けたい場所の1つです。マネートレインがいなくなって価格が下がったらまた検討しよっと、で他に目を向けるようにしています。ご用心ご用心。


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posted by ジョン太郎 at 00:42| Comment(1) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「マネートレイン」
うまいたとえですねえ・・・
感服しました。(^^)

君子危うきに近寄らず、が正解なんでしょうけど、
出来れば次の停車駅でお待ちしていたい。(爆)
Posted by mushoku2006 at 2011年08月27日 17:49
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