2011年04月23日

通貨選択型ファンドの説明をしますよ(その2)

今回は前回のその1に続き、その2。今日は主に先物取引と先渡取引の違い、についてお話しします。

前回の記事その1はこちら(http://jovivi.seesaa.net/article/196079365.html)です。

で、前回の記事で書いたように通常の為替ヘッジ(たとえば米ドル資産を持ってる人が米ドルの為替リスクをなくそうとする取引)や、通貨選択型ファンドが誰かと「お互いが持っている為替リスクの交換」をする場合、誰かと将来の約束をする必要があります。

この時に、通常、通貨選択型ファンドは「先渡取引」というのを使います。字面も響きも使う場面も「先物取引」と似ていますし、英語でも先物がFuturesで、先渡しがForwardで、どちらも「先」を表す英語だし、Fで始まるし・・・でも両者の取引の性格は異なります。

先物も先渡も、どちらも「誰か」と「あるもの」を「約束の日」に「約束した値段」で「売買する」約束をする取引です。この点は共通しています。異なる点は以下の通りです。

◆「誰か」と ◆「売買する」
先物は取引所取引で、先渡は店頭取引・相対取引です。
先物のほうは取引で誰かと取引をする以上、自分が将来の約束をする相手が誰か分かりません。証券取引所で株の売買をしてるのと一緒ですね。株の注文を出して約定したとき、その株を誰が売ってくれたのかは分からないですよね。それと一緒です。ただ、取引した時に株の権利と代金の受け渡しが行われてしまう、言ってみれば「その場限りの」取引とは違い、先物取引というのは将来の約束の日まで取引相手との約束が続きます。誰だか分からない人と「将来」売買をする約束をするというのは不安ですよね。ですから、先物取引には「証拠金」という制度があります。将来売買する金額に応じて一定のお金を「自分には将来ちゃんと約束の売買をするお金がありますよという「証拠」として用意させるものです。これがないと怖くて取引できないですからね。

一方で、取引所取引でどこの誰だか分からない人と将来の約束をする以上、約束を果たしてくれる相手は変わってしまってもいいので、その約束自体を約束の日を迎える前に誰かに転売してしまっても構いません。むしろ、一般的には先物取引の場合にはこの約束が実際に実行されることはなく、通常は「反対売買」と言って持っている約束を売って、その代金の受け渡しで損益を実現させて清算、となります。

先渡取引のほうは、店頭取引・相対取引ですから、お互いの顔が見えています。A銀行とB銀行の間で約束をする、A銀行がお客さんCと約束をする、わけですから、相手方がちゃんと約束を守ってくれるか、約束の日までに潰れないか、といういわゆる「カウンターパーティーリスク」を伴う取引ということになります。相手が誰だかわかっているわけですから、「証拠金」というのは通常ありません。

後の項目でも出てくると思いますが、先渡取引の特徴はなんと言っても、どんな約束でもできる、カスタマイズした取引ができる、という点にあります。顔の見えている両者で将来の約束をするわけですから、当事者間で合意できれば極端な話どんな取引でも契約することができます。

◆「あるもの」を ◆「約束の日に」
先物は取引所でどこかの誰かと取引をするため、取引内容の自由度はかなり小さいです。例えば【「日本国債」を「9月末に」】売買するとか、【「原油」を「来年3月末に」】売買する、といった「あらかじめ決められた」定型のものを売買することしかできません。

一方、先渡取引は相対取引ですから、いつ何を売買するか、というのを当事者間で自由に決めることができます。


これらが先物と先渡の大きな違いです。

で、通貨選択型ファンドが使っているのは、何をいつ売買するかを自由に決めることができる相対取引である先渡取引です。で、この先渡取引には通常の先渡取引とNDF(ノン・デリバラブル・フォワード)と呼ばれる2つのタイプがあります。先渡取引というのは、約束の日に売買をするのが基本です。例えば、私がヴィヴィ子と1年後に豪ドルを買い取ってもらう先渡契約をした場合、1年後に私はヴィヴィ子に約束した額の豪ドルを渡す(デリバリーする)必要があります。もともと豪ドルを持っていてそれを売り渡すつもりだったのであれば持っていた豪ドルをそのまま渡せばいいわけですし、実は豪ドルは持っていなかったという場合は市場で豪ドルを買ってきてヴィヴィ子に渡します。

この時に、実際のデリバリーが難しいものが先渡取引の対象になっている場合があります。人民元やブラジルレアルなどの場合です。人民元やブラジルレアルの場合は、そこらへんで買ってきてハイと渡すことができません。そこで、こういったデリバリーの難しいものを対象にする場合はNDFという取引を使います。NDFというのは先渡取引の一形態で、約束の日に約束したものを売買・受け渡しするのではなく(デリバリーしない)、その取引の損益をあらかじめ決められた通貨で当事者間で受け渡しするというものです。

どういうことかと言いますと、今米ドルを持っているファンドが、今すぐに米ドルを売ってブラジルレアルを買ったことにして、1ヵ月後にそのレアルを売却してベイドルを買戻し、1ヵ月間レアルを持っていたら手にしていたであろう為替差損益と金利を受け取ろうとしたします。1か月後にレアルを売渡してあげる先渡契約を結べばいいだけのことなんですが、問題は、1か月後に渡さないといけないレアルです。ブラジルレアルと言うのは人民元などと同様に管理通貨であり、自由に売買することが認められていない通貨です。レアルをそこらへんで買ってきてハイヨッと渡すことは難しいのです。そこで、あらかじめ、期日には受け渡しをしない契約にしておきます。約束の日になったら、結局この1か月でレアルは10%上昇し、金利が1%ついたから、11%儲かったことになりますね、私は100ドル分の契約をしていましたから、11%で11ドル儲かったことになります、11ドルください、みたいな具合にするわけです。もちろん、反対に損をしてたことになる場合はこの1ヵ月でレアルが20%下がって、金利の1%分を差し引いても私は19%負けたことになりますので、負けた分の19ドルを払います、といった具合です。

この先渡取引を「為替ヘッジ取引」と呼んでファンドの仕組みを説明している通貨選択型ファンドが多いと思います。ですから、通貨選択型ファンドのパンフレットとかに書いてある「為替ヘッジ取引をすることで」というのは、あー先渡取引をしているんだなと思って頂ければと。



以上が先物と先渡の違い、NDF取引の仕組みですが、お分かりいただけましたでしょうか。

で、これまでにご理解いただいたことを踏まえて、通貨選択型ファンドの話をしますね。通貨選択型ファンドというのはこういうものです。よくあるパターンは新興国政府が発行するドル建て債券に投資して、そのドルのエクスポージャーをNDFを使ってレアルに変えますよというものや、米ドル建てのハイイールド債券に投資して、そのドルのエクスポージャーをNDFを使ってレアルに変えますよというもの。

米ドル建て新興国債券の上乗せ金利は3%、ハイイールド債は5%です。今、ベースになる米国債の5年ものは2%ちょっとですから、新興国債券は上乗せ金利を入れて5%、ハイイールド債は上乗せ金利を入れて7%、と思っておきましょう。上乗せ金利というのは、米国債よりも信用力のない新興国政府やハイイールド債を発行している格付けの低い、信用力の低い会社にお金を貸す時の上乗せ金利です。

で、これらの米ドル建て債券を買ったことで得られる米ドルのエクスポージャーをレアルに交換します。米ドルのベース金利をあげて、ブラジルレアルの金利をもらう。米ドルの為替リスクをあげて、レアルの為替リスクをもらう。ベース金利をあげちゃっても、新興国債券の上乗せ金利3%、ハイイールド債の上乗せ金利5%は残りますよと。

そうすると、とっているリスクは新興国政府またはハイイールド企業の信用リスク、レアルの為替リスク、米ドルの長短金利差のリスク(自分が持っているのは5年ものくらいの金利なのに、為替ヘッジ(先渡取引)で米ドルの短期金利を渡してるから)、ということになります。

で、リターンのほうは債券の価格変動によるキャピタルゲイン/ロス、ブラジルレアルの為替変動による為替差損益、それにインカムゲインということになります。インカムゲインは先ほどの上乗せ金利部分と、レアルの先渡契約によってもらえるレアルを持っていたら得られるであろう金利、の合計ということになります。後者のほうを、「為替ヘッジ取引により、為替ヘッジプレミアムを受け取る(または為替ヘッジコストを支払う)ことになります。為替ヘッジプレミアム/コストは短期金利の差です。ブラジルレアルの短期金利が12%、ドルの短期金利が0.3%、ですから12%近くのプレミアムを・・・」なんて説明をされてたら、前回の記事を思い出してみてください。理論上は、短期金利の差だけであれば12%近くもらえる「はず」のブラジルレアルの為替ヘッジ取引で5%しかもらえない、なんていうのはレアケースではなく、よくあるケースです。

ということは、新興国債券のレアルコースなら上乗せ金利3%とプレミアム5%の合計で8%、ハイイールド債券のレアルコースなら上乗せ金利5%とプレミアム5%の合計で10%、くらいだ、とれたとしてもそのぐらいだと思っておくべきです。



分配金の額や分配金を元本で割った「分配利回り」なんて呼ばれるものを重視しているとどうしても、こうしたところに目がいきにくくなります。通貨選択型ではない普通の米ドルのハイイールド債であれば7%ちょっと、米国のREITであれば3%ちょっと、新興国債レアルコースなら8%、ハイイールド債レアルコースなら10%、というのが現在の利回りです。分配金がいくら出てこようがリターンは変わりません。

このブログで何度も繰り返し言ってますが、投資信託の分配金というのは自分のお金を取り崩しているだけです。ありがたいものでも、お得なものでも、儲けでもありません。投資信託の分配金支払は自動一部解約機能に過ぎません。毎月分配型ファンドは毎月自動一部解約機能付きファンドです。毎月分配金をもらうことと、毎月同じ額を解約することは、全く同じことです。毎月解約する金額である分配金の額を元本で割った数字を見ても、「自動解約率」が解るだけで、リターンがわかるわけでも、儲けや損失が解るわけでもありません。「分配利回りランキング」は「毎月自動的に解約されて手元に戻ってきてしまう率が高いファンドのランキング」です。特別分配金になっている分配金は儲かっていない分配金、儲かってないから税金のかからない分配金、自分のお金を自分の財布に戻しただけの分配金です。

大変多くの人が勘違いをしているポイントなので、「みんなが・・・」「本とか雑誌でも・・・」に惑わされてはいけません。

通貨選択型ファンドの話にしろ、分配金の話にしろ、分配金利回りの話にしろ、「みんなが言ってる間違った情報」に惑わされず、正しい知識を身につけて、「騙された!」と後で嘆かなくて済むように、自分の考えに合ったものに投資ができるようになりましょう。このブログがそのお役に立てれば幸いです。



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posted by ジョン太郎 at 13:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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