2011年01月08日

米雇用統計、ブラジルのレアル高対策と投信の分配金の話。

今日はそんなお話。

まずアメリカの雇用統計。
昨日発表されたアメリカの雇用統計では、失業率が11月の9.8%から9.4%に改善。あちこちのニュースで「大幅に改善」と報じられています。市場予想は9.7%でしたから市場の予想以上の数字ではあります。大幅に改善.・・・私には違和感ありますね。「大幅に改善」と聞いた人はどういうイメージをするでしょうか。

まず、過去5年の推移を見てみましょう。

une1.bmp
(出所:Bloomberg)

「大幅に改善」という言葉を聞いてイメージしたのと、このグラフとでズレを感じるという人は多いんじゃないでしょうか。


ちょっと別の角度からも見てみましょう。12月の失業率の9.4%という数字はどうやって計算されているかというと、失業者1,449万人÷(失業者1,449万人+就業者1億3,921万人=1億5,369万人)=9.4%。
つまり、失業者と就業者の合計=労働力、の中に占める失業者の割合で、職探しを諦めてしまった人の人数は含まれません。じゃあここでの「労働力」に入っていない人がどのくらいいるかと言うと8,520万人。16歳以上の人口が2億3,889万人ですから、この内訳はこのようになります。
@就業者: 1億3,921万人
A失業者: 1,449万人
Bその他: 8,520万人
合計: 2億3,889万人

今回発表された雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比で10万3,000人増加しています(市場予想は15万人増)。つまり@が非農業部門で10万人増えたということです。@全体では29万7,000万人増えています。一方、@+Aの合計は25万9,000人減少しています。@が増加して、@÷(@+A)が9.8%から9.4%に改善した、でも@+Aの合計である労働力とカウントされている人口が26万人も減ったということです。ちなみにBは前月比で43万人増えています。失業し、就職活動を始めた人は@からAにうつります。そして、あまりにも就職できなくて職探しすら諦めた人はAからBにうつります。

Bは労働市場に参加していない人たち。@とAの合計が人口に占める割合を「労働参加率」なんて言いますが、この労働参加率は前月の64.5%から64.3%に低下しています。ちなみに1年前は65.4%でした。失業率は改善してるけどね。失業率の低下には労働力人口の減少、労働参加率の低下、が大きく影響していると思いませんか?

また、失業者のうち、失業期間が27週以上になっている長期失業者の割合は44.3%に上昇しています。ちなみに1年前は40.1%。

失業者に加えて、パート就労をせざるを得ない人や職探しを諦めた人を含めた広義の失業率は12月時点で16.7%。これも過去5年の推移を見てみますとこうなります。

une2.bmp
(出所:Bloomberg)

私が見た今回の米雇用統計は「大幅な改善」とは言いがたい内容でした。

っていうか、失業率が9%超えなんていう水準なんだからそもそも・・・って言ってしまえばそれまでですが。
失業率が6%超えてくると、ちょっとウーンな感じと思っておくといいと思います。



次。
ブラジルが次のレアル高対策を打ってきました。
内容を詳しく解説するとかなりややこしくなるので内容の説明は割愛します。要は
@ブラジルの財務省と中央銀行がタッグになってレアル高に立ち向かうぞ
A雲行きが怪しくなったらこっちはすぐに動くぞ
B(明示してませんが)対ドルレートが1.70以下の状態はまかりならん。1.65以下になりそうな恐れがあれば即対応。
というものです。

日本のあちこちで、ブラジルはオリンピックとワールドカップがあるから、とかって聞きますがそんなものはどうでもいい話。ブラジル政府がレアル高を阻止するって気合入れてるんだから。その人たちを相手に回して上がるも何もあったもんじゃないです。私は中長期的にブラジルには全然強気ですが、目先の話は全く別物。日々の基準価額の動きを追いかけちゃうような人や、買ってから1ヶ月だの3ヶ月だの半年だの1年だの2年だのっていう短い期間であれこれ考えちゃうような人はブラジルのオリンピックとワールドカップなんぞ関係ないです。そんなものは除外して考えたほうがいいです。むしろブラジル政府の強い意思をきちんと考慮すべきです。

今回の措置は以前この記事(http://jovivi.seesaa.net/article/165904686.html?1294462213)でご説明した金融取引税と同様に、直接的な効果と間接的な効果の2つがあります。

直接的な効果はブラジル国内の銀行のドル売りポジションを減少させることと、ドル売り取引のコストを増大させること。間接的な効果はもちろんレアル高の阻止とそれを本気出して取組んでいくよという意思表示。



これを日本の個人投資家に置き換えると、
まず前者。直接的な影響があるのは、今回の規制対象になった取引をするファンドを買ってる人。代表例は通貨選択型ファンドでレアルコースを買ってる人。規制対象取引をやってないファンドもありますが、そういうファンドでも後者の影響はあります。サワリだけ言うと受け取れる為替ヘッジのプレミアムが下がります。よく、為替ヘッジのプレミアムは短期金利の差、なんて言われますが、実際には短期金利の差−取引相手の儲けとコスト。2通貨間の短期金利の差を単純に計算したものとは違います。先進国通貨とか取引量の多い通貨ならそれに近い数字になりますが、ブラジルレアルなんかは全然違います。ですから、これらを収益の源泉にしているファンドは当然リターンが下がります。下手すると1ヶ月〜3ヶ月ぐらいでぐるぐるロールオーバー(取引のまき直し)をしているのが、つっかえちゃうかもしれないですね。

ってこの辺の話は、分配金は得でもなんでもないし、リターンや儲けとは関係ない、ってことが分からないとどうにもならないですが・・・・以下の2つのQであなたならAファンドとBファンドのどちらを選びますか?

Q1 今の基準価額が9,000円で
Aファンド: 分配金毎月150円、中身の債券の利回り7%
Bファンド: 分配金毎月50円、中身の債券の利回り8%

Q2 今の基準価額が9,000円で
Aファンド: 分配金毎月150円、1年後の基準価額6,800円
Bファンド: 分配金毎月50円、1年後の基準価額8,600円

どちらかの質問でAを選んでしまった人にはさっきの話は難しいと思います。なぜなら、受け取るプレミアムが減ってファンドのリターンが下がっても、運用会社の考え次第で分配金額をそのままにしておくことも、逆に引き上げることさえ可能だからです。それが投信の分配金だからです。投信の分配金というのはただいの自動一部解約金であって儲けとは全く関係ありません。投信の分配金についてちゃんと知りたいって方はこの辺の記事をどうぞ。
http://jovivi.seesaa.net/article/115286658.html
http://jovivi.seesaa.net/article/96236995.html
http://jovivi.seesaa.net/article/153131657.html



そして間が開きましたが、
後者、間接的な影響があるのは、円高ブラジルレアル安だと損して、円安ブラジルレアル高だと儲かる投資をしている人。ファンドはもちろん、ストレートのブラジル株だろうがブラジル国債だろうがFXだろうが、なんでも。だってレアルのレート上げないように政府が全力投球で抵抗してくるんだから。

ちなみにブラジルだけに投資をするファンドだけでその残高は7兆円(笑)。一部でブラジルを組み入れているファンドの分も入れれば10兆円レベルでしょう。国内の公募投信の総残高は63兆円(家計金融資産1441兆円のわずか4.3%)ですから、日本の投信残高の15%以上がブラジルレアルが上がると儲かり、下がると損するお金。メチャクチャです。どこの国の金融関係者に話しても、ウソだろと驚かれます。日本以外の国では冗談にしか聞こえないでしょうね。でも、これが日本の投資社会の今のレベルです。ピーク時のグロソブが5.8兆円で約10%のシェアをもっていたことがありましたが投資するマーケットは残高1千兆円規模の世界の国債市場。1日の取引高が1兆円レベルのブラジルレアルとは全然別次元の話です。



まぁ何はともあれ、いつもお話ししているようにまずは短期と長期を分けて考えることが一番重要なわけですが。
ここさえ間違えなければ今回の措置に対しても冷静に対峙できるはずです。

ブラジル政府は直接投資や株への投資は歓迎しているようですので、今後もブラジルの債券や通貨選択のブラジルレアルへの投資ほどの締め付けはされないと思いますので、ブラジル株を買っている人やブラジルに工場を建てようとしている社長さんはちょっと気持ちを緩めてもいいんじゃないでしょうか。


今日はこんな感じで。
こんなに長く書くなら2回に分ければ、読んでくださってる方も読みやすいし、アクセス数だって増えるだろうにね・・・
分かっちゃいるけど・・・これが私。


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posted by ジョン太郎 at 14:47| Comment(2) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
米雇用統計の数字は?ですね。カリフォルニアとハワイに友人がいますが、日本で報道されているより景気は悪いみたいです。アメリカは広いので州によってかなり差があるようですが。
Posted by みや at 2011年01月09日 19:05
みやさんへ
コメントありがとうございました。

おっしゃるように、日本での報道を鵜呑みにすると危険ですね。また、アメリカは広いので州によってかなり差があるという点も忘れがちで注意したいポイントです。中国とかアメリカのように広い国のことは、狭い日本で暮らす自分の感覚を一旦忘れて考えないと大きく間違えてしまいますね。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。
Posted by ジョン太郎 at 2011年01月10日 09:35
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