2010年08月08日

したたかな中国 − ”Loan for Oil”と”Oil Back Loan”

中国がドル資産に対する警戒を強めていて、なんてよく言われてますが、今日はそんなお話を。

中国は世界最大の外貨準備高を誇っています。
その額なんと2兆4,500億ドル。
2位の日本が1兆635奥ドルですから、ぶっちぎりの1位。その200兆円を越える資金の中でもっとも大きな比率を占めている通貨が米ドルで、米国を除いた世界最大の米国債保有国でもあります。その額8,677億ドル。ちなみにこちらも2位は日本で7,867億ドル、3位は英国の3,500億ドル。

アメリカの調子が悪すぎて、しかもこの先もしばらくはちょっときつそうだ、米ドル自体が基軸通貨としての信用を失いつつある、ということで米ドルの比率を下げたいわけですが、ユーロもあんなだし、ちょろっと円を増やしてみたりするものの、短期的にはよくても中長期的には円なんか持っててもしょうがないわけですから、今後の中長期的な保有比率変更先としてはなかなか使いにくいと。一方で、米ドルを自分たちが売ることで、米ドルの価値が下落して困るのは中国です。そんなことを軽々にする中国政府ではありません。

豪ドルとかにすればいいじゃん?とか言われそうですが、豪ドルがこれほどもてはやされて、米ドルやユーロと並列で語られるのは日本くらいです。豪ドルはそんな大きな器じゃないです。豪ドルやブラジルレアルをフルスイングで買ってるのは日本人だけです。業界内のウワサでは今のブラジルレアル買いの95%が日本の資金なんて言われてます。

なんで他の国の人は豪ドル買わないの?この話はまたそのうちしようと思ってますが、一言で言えば、市場規模が小さいからです。米ドル、ユーロ、日本円、と並列で語られるほどの懐の深さは豪ドルにはありません。米ドルと豪ドルの為替相場ってどっちが大きく動きますか?豪ドルですよね。なんでかわかりますか?それは市場規模が小さいからです。豪ドルの市場規模はユーロの5分の1以下、米ドルの10分の1以下です。そんなもん、右へ習えの、お隣さんと一緒が幸せ、みんなが買ってるものがいいもの、のお金持ち日本人が一斉に買えばマネートレイン停車でヤッホーで上がるに決まってます。まぁ、右へ習えで一斉に売られたら、結果は火を見るより明らかですが・・・まぁ、その話はまたそのうち。l

というわけで米ドルを減らそうにも、それによって米ドルの価値が下がるのは困るし、他にろくな選択肢がないってのもあるし、というわけで中国政府は悩んでます。難問ですよねぇ。日本政府ならどうするでしょう?米ドルがイヤだなんてそもそも思わないか。思ったとしても、とりあえず、おおどころの通貨をなんかもっともらしい説明のつくような構成で持つくらいでしょうね。むしろヘタに米ドル売りして、アメリカに怒られたらイヤだし、もちろん自分たちの米ドル売りで米ドルが下がって保有資産価値が下がるのも困るし、何より米ドル安円高は実体経済の影響が困るし、かと言って、なんかモヤモヤっとした感じの結論になりそう・・・

でも、中国はそんな難問、米ドルもイヤだ、けど他の通貨もイヤ、に対してこんな解決策を1つの選択肢としてやってますよってのが今日の話。

このあいだ、この記事
http://jovivi.seesaa.net/article/156941628.html
でちょっとお話しした、原油確保のための融資”Loan for Oil”とか、貸したお金は将来原油で返してもらう融資”Oil Back Loan”。また機会があればそのうちお話ししますと申し上げましたが、それです。

これについてはJOGMECから大変素敵なレポートが出てますので、敬意を表してその序章の文章でご紹介させていただきます。

【以下JOGMECレポートより引用】

 金融危機後、中国政府は金融収縮や油価の下落を資源確保の好機と見て素早く動いた。産油国への融資協定と原油長期輸出協定あるいは油ガス田開発やパイプライン投資を組み合わせた、いわゆる“Loan for Oil (Gas)”について複数の産油国との間で合意した。合意額は2009年2月から7月までの半年で465億ドルに達しており、ロシアやエクアドルに対して段階的な融資が始まっている模様である。

 中国が資源分野への対外投資を加速していることについて、資源企業の買収が集中した豪州など一部の資源国では警戒の声が高まっている。しかし、少なくとも“Loan for Oil”については産油国政府あるいは企業にとり資金調達コスト軽減、安定した供給先(市場)の確保、中下流を含む事業提携など複数の利点がある。

 世界最大の外貨準備保有国である中国にとって、“Loan for Oil”は石油の安定供給(調達多様化)はもちろんのこと、原油や天然ガスという実物資産を担保に持った上で、外貨を長期かつ安定的に運用することができ、銀行の「国際化」戦略にも合致する有効な手段のようだ。

【以上JOGMECレポートより引用】




ドル資産の代替として、外貨準備の運用先多様化として、素晴しい選択肢だと思うんですよね。ドルの使い道として大変有効なものだと思います。原油の先払い代金として米ドルで融資を行って、返済を原油で受け取るオイルバックローンはその最たるもの。しかも、エクアドルなんかは、このオイルバックローンで貸してくれ!って中国に頼んでます。オイルバックローンは産油国としてもメリットのある方式です。

みんなが資金繰りのために必要としていて、中国政府としてはどうにかしたい、米ドルを貸して、
将来、原油で返してもらう。あるいは原油を確保する。

有効活用ですねぇ。


現預金や貸付金といった資産というのは通常、どれかの通貨になります。当たり前ですけど。米ドルを売ったら、それは米ドル以外の何かの通貨になります。世界中の通貨がいやだ!というわけにはいきません。円なのか、ユーロなのか、豪ドルなのか、カナダドルなのか、スイスフランなのか、ブラジルレアルなのか、南アフリカランドなのか、トルコリラなのか、チリペソなのか、とにかく何かの通貨になります。

ところが、中国のオイルバックローンは米ドルを他の通貨に換えず、いわば原油を通貨にしています。貸した米ドルを将来また米ドルで返してもらう通常の融資であれば、米ドルの為替リスクをとることになります。10年貸して10年後に返してもらう時に米ドルの価値が下がってしまっていれば、貸したお金は元本より減ってしまいますよね。みなさんが米国債を買って換金する時に円高になってしまっているのと同じ状態です。でも、中国のオイルバックローンは米ドルで貸しても、返してもらうのは原油ですから、返済してもらう時に米ドルの価値が下落してようが、関係ありません。円もユーロも関係ありません。

有り余っている米ドルを使っているのに、米ドルの下落リスクをヘッジできています。この状態だと、中国政府はどの通貨建てでもない運用をしていることになります。どの通貨も関係ない運用。

ちょうど今週こんなニュースが出ていました。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920011&sid=aFJdUQ1EhWtc
【以下、ブルームバーグHPより引用】
ベネズエラ:中国に原油20万バレル出荷、債務200億ドル支払いで

南米最大の産油国ベネズエラは中国に向け日量20万バレルの原油を出荷している。電力や農業、技術開発プロジェクトで中国から借りた債務200億ドル(約1兆7000億円)の支払いに充てる。
  ラミレス石油相は4日のインタビューで、2012年までに対中原油輸出を100万バレルに引き上げる方針を明らかにした。10年間の融資の返済のため原油は実勢価格で売却する。対中原油輸出の半分は債務の返済に充てる。
  ベネズエラ石油公社の総裁を兼務するラミレス氏は「原油の輸出市場の多様化を図っており、その方向に進んでいる。国際協定では、原油を値引きしていない」と述べた。
  ベネズエラは現金を求めて、原油を必要としているアジア諸国に輸出を打診している。チャベス大統領は貧困層の雇用拡大や燃料不足への対応など自国経済を建て直すために資金を求めている。
  中国は4月に、原油供給の見返りにベネズエラに200億ドルを融資することで合意した。
更新日時: 2010/08/05 14:13 JST
【以上、ブルームバーグHPより引用】

これは原油を実勢価格で中国に売却し、売却した資金の半分をそのまま債務の返済に充てる”Loan for Oil”のほうですね。他の国に原油を売ってドルをもらい、そのドルで中国に借りた原油を返す、のではなく、「その返済資金を用意するための原油輸出をうちにまわせよ、うちが買ってやるから。うちの借金を返すために他の国に原油を売るな、うちに返す金を作る分の原油はうちに売れ。」という方式です。これが”Loan for Oil”。別にベネズエラとしては全然困りませんし。

スマートですなぁ。



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posted by ジョン太郎 at 08:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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