2009年07月19日

クレジット

今日はクレジットの話です。



と言っても、クレジットカードの話ではないです。

「信用力」の話です。



企業というのは自社の「信用力」で資金を調達し、商売をしています。
そして、その「信用力」の高低が、資金を調達する際のコストを左右することになります。

最もわかりやすい銀行からの資金借り入れの際の借入金利をイメージしてもらえると簡単です。私とトヨタがあなたに10年間、l100億円を貸してくれと頼んだとします。みなさんだったらどのくらいの金利で貸してくれますか?10年後に返ってくる見込みが高いのはもちろんトヨタでしょう。すると、もし私とトヨタが同じ3%で貸してくれと頼んだ場合、みなさんだったらもちろんトヨタに貸したいと思いますよね?同じ金利なら、返ってくる見込みが高いトヨタに貸したいと思うはずです。では、金利10%だったら私に貸してくれますか?10億円で10%ということは年間1億円です。毎月1回金利をお支払いするとして、毎月1000万近い金利収入になりますよ。

でも、3ヶ月後に私が10億円持ってトンズラしたらどうなりますか?ぇぇ。そうです。丸損です。3ヵ月後にバックレてしまうかもしれないような人に年利10%なんかで、貸したらダメなわけです。私だったらそんな人には金利100%でも貸しません。

これが信用力のプライシング(値付け)です。
信用力が高ければ高いほど、貸りるほうの借入金利は低くなり、貸すほうの運用利回りは低くなります。
信用力が低ければ低いほど、貸りるほうの借入金利は高くなり、貸すほうの運用利回りは高くなります。



じゃあ応用問題。

自分がお金を貸している人の「信用力」が低下した場合はどうなりますか?



答えは、

お金を貸しているという資産(債権)の価値が下がる

です。



10億円を借りるのに1%しか金利を払う必要がない信用力を持つ人の信用力が下がり、10億円を借りるのに10%の金利を払わなければいけないくらいまで下がったとします。するとこの人に10億円を10年間年利1%で貸していた人が、毎年1%の金利を受け取って10年後に返してもらう権利(債権)を誰かに売ろうとします。あなただったら、借入する金利が1%から10%に跳ね上がり、「信用力」が急低下した、10年以内にひょっとしたら潰れるかもしれず、10年後にお金が返って来るかどうか怪しくなってきた「10年後に10億円を回収できる権利」を10億円で買えますか?買えないですよね。つまりこの10億円の「お金を貸しているという資産(債権)の価値」が下がり、10億円以下になりました。

債券を買う、債券に投資する、債券を売買する、というのはこういうメカニズムの市場にお金を投じることを意味します。でも、このクレジットのメカニズムがよくわかっていないという人が多いのではないでしょうか。

そして、このクレジットというのは何も債券市場だけでなく、株式市場にも影響します。株にせよ、債券にせよ、自己資本もしくは他人資本を調達するということであり、その調達コストはこのクレジット、企業の信用力というものに大きく影響されます。



今週、日経の朝刊に「日本企業、格下げ急増」という見出しの記事が載っていました。
(図書館とか家にとってある新聞とかでその記事読んでみようという方のために、7月16日付朝刊、12面です。)

格付機関が2009年上期(1〜6月)に、格下げ、格付けを下げた日本企業は191社と前年同期の6倍に増えたそうです。格付機関による、「格付け」というのはこの「信用力」を表すものに他なりません。AAAとかBB+とかで表示されてるアレです。格付けが高いほど高い信用力があると格付機関が判断していることを意味します。「格下げ」というのは格付機関が、その企業の信用力が低下したと判断し、信用力を表す格付けを引き下げることを指します。格下げされる日本企業が急増、これは日本企業のクレジット、信用力が低下していること、を意味します。

現在、日本の企業で最上位の格付、AAAを持っている企業はありません。トヨタだけがAAAでしたが、そのトヨタすら格付けを先日引き下げられてAAAではなくなってしまいました。

企業の業績が悪化したり、企業の先行きが怪しくなったり、資金繰りが苦しくなったり、調達コストが上がったり、取引先の倒産で債権が焦げ付いたり、投資していた資産が吹っ飛んでしまったり、というわけで日本の企業の「信用力」が低下、格付機関から格付を引き下げされるケースが増えている、というわけです。

日経の記事には「企業収益が最悪期を脱する兆しもあり、格下げのペースは鈍化する可能性があるとの見方も増えている」とあります。いつもの、定番の日経の記事にありがちな論調ですが、この部分だけが印象に残っちゃう可能性もありますよね・・・とりあえず反対の可能性も示唆しておく、それやっとくのが無難、それやっとけばちょっと内容が言いすぎだったり、調査不足でも、まぁ両方示してるからいいよね、的な。私の一番嫌いなパターンですが・・・はおいといて。

私はクレジットについては、かなり悲観的な見通しをもっています。つまり、今後もっと悪い時期が来ると見ている、ということです。当たるかどうか、とかじゃなく、あんまり楽観的になっちゃいけない、甘いプライシングでお金を突っ込んじゃいけない、ちょっと大目の利回りを期待するくらいでちょうどいい、クレジットのリスクをとるなら思い切り高いリターンを期待しないと割に合わない、と思っているということです。もちろん私の個人的な見解ですから、これを皆さんに信じてもらおうという考えもないですし、同意をしてほしいわけでも同意させようとするわけでもないですし、これについて議論をするつもりもないですし、戯言と思って聞き流していただければ結構、むしろそのほうが本望なくらいです。

私は「最悪期を脱する兆しが」なんてとても怖くて言えないです。私の周辺でもクレジットものについては慎重な見方をしている人が結構多いです。もちろん楽観的に見ている人もたくさんいますし、結構強気で突っ込んでる人もいますが(仕事でも、自分の個人資産運用でも)。格付け機関のレポートなんかでも、信用力の悪化やデフォルト率は今年の年末から来年前半にかけて最悪期を迎えるんじゃないか、みたいなものが結構あります。みなさんはどうですかね。あ、デフォルトってのは債務不履行のことで、要は借金の元本返済や金利の支払いができなくなることです。信用リスクが顕在化しちゃった状態、クレジットリスクが現実になっちゃった状態、とでも言いましょうか。



クレジットのタチが悪いところは、「連鎖」するという点です。A社が潰れる、A社にお金を貸していたB社がA社から返してもらえると思っていたお金を返してもらえなくなって倒産、B社が大口顧客だったC社が倒産、みたいな。「連鎖倒産」という言葉は皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか。

もちろん、これは日本企業だけに限ったことではなく、アメリカの企業でも、ヨーロッパの企業でも同じです。クレジットが悪化しているのも欧米も同じです。アメリカなんかはGMの倒産とかの影響が少しずつ伝播していって、あっちこっちで影響が出るのはまだまだこれからだと思います。伝播するのには時間がかかって、結構な時差がありますし、さらに伝播していく間に広がり、増幅されていくこともあります。当然、連鎖倒産が増えれば失業率が上がり、消費が落ち込み、これらによって更に他の業種も悪影響を受け、みたいなことが起こっていきます。

失業率が上がってくれば、ありとあらゆる分野に影響が出ますからね。最悪期を脱した、というニュースや報道をちらほら見かけるようになってもう1年くらい経ちますが、その間の何度も上がったり下がったり、進んだり後退したりしてますよね。未来を見てきたわけでも、詳しいわけでも、保証してくれるわけでも、責任取ってくれるわけでもない人の言うことを鵜呑みにしてはいけません。眉にツバつけまくってツバでべちょべちょにして、眉間にシワ寄せて話半分8掛け3割引くらいで聞くようにしましょう。ご用心ご用心。

クレジットはこのあと1年くらいは慎重でいるに越したことはないと思ってます。あんまりクレジットに楽観的になるのは賛成できません。甘いプライシングするのも、低いリターンでクレジットリスクをとるのも。



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posted by ジョン太郎 at 00:31| Comment(3) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は専門家ではないので良くわからないのですが、いわゆる「格付け機関」がいい加減な格付けを行ったことが今回の一連の騒動の重要な原因である、という話を複数の論説で読んだことがあります。
それなのに、未だに格付け機関の格付けを気にするのは、とても不思議な気がするのですが?
どういうことなのでしょうか?
Posted by masasan at 2009年07月19日 13:00
masasanさんへ
こんにちは。コメントありがとうございました。

ご指摘のように、今回の金融危機の中で格付け機関がいい加減なプロセスで最高位のAAA格付けを与えていた証券化商品がゴミ同然になってしまったという面はあります。実際この間ご紹介した東京都が旗振り役になっていた証券化商品のようなケースもあります。

しかし、一方で格付け機関による格付けの代わりになるものがないのも事実で、以前のように鵜呑みにすること、強気のプライシングをすることはなくても、以前のように普通にみんな格付け機関の格付けを使っています。機関投資家だろうがプロだろうが普通に使っている、というのが現実です。

これからもよろしくお願いします。
Posted by ジョン太郎 at 2009年07月19日 14:34
私は医療関係者なのですが…
消化器専門の外科医師がいて、急性虫垂炎(一般的に言われる盲腸炎)の手術に失敗ばかりしている。で、その医師が「いや、私は大腸癌の手術は得意なんです」。
ジョン太郎さんが、大腸癌にかかった時に、その医師の手術を受けますか?

「格付け機関の格付けが信頼できない」のに未だに「格付け機関の格付け」を使っているというのは、科学者の一人としては理解しかねます。「所詮は他人の金だから」という発想だからなのでしょうか?

別にジョン太郎さんを攻めているのではないのですけどね!

こういうときこそ、マスコミが先導して、「今の格付け機関なんか信頼できない。何とかしろ!」「トヨタの格付けを落とす?バカヤロ〜お前らの格付けの信頼度はC-だ!!」位のキャンペーンでもはれば良いのに…。そういうことをしてこそ、『社会の木鐸』でしょうに。
まあ、今のマスコミにそんなことができるはずもないですか…
Posted by masasan at 2009年07月19日 21:02
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