2009年06月14日

頂いたご質問へのお返事〜劣後債の話〜

こんにちは。今日はくあむさんから頂いたご質問へのお返事で劣後債についてお話しします。


まず、くあむさんから頂いたご質問はこちら。
http://jovivi.seesaa.net/article/120998348.html#comment

【前段略】
最近、銀行なんかが発行する劣後債が個人に人気、なんて記事を目にしました。
企業破綻時に劣後債に分配が戻ってくることなんてないでしょうし、どうせ紙くずになるリスクをとるなら株買えばいいじゃん、って個人的には思ってしまうんですが、どうなんでしょうね。
劣後債でなく普通の社債でも、企業破綻時に戻ってくる可能性がゼロではない、ってだけで実質は戻ってこないだろうからそれなら劣後債の方が利回りが高い分お得、ってことでしょうか。

てことで
@通常の社債で、破綻時に分配が戻ってくることってあるんでしょうか?
(劣後債より利回りが低い代償、として他にも何か劣後債に勝るメリットがあるんでしょうか)
A劣後債が人気、という状況について、ジョン太郎さんは個人的にどんな感想をお持ちですか?

という質問です。
Aはブログでは答えにくい面もあるかもしれませんが、可能な範囲でけっこうですのでよろしくお願いします。


くあむさん、ご質問ありがとうございました。
まず、皆さんの混乱を避けるために、言葉の修正をさせていただきますと、くあむさんの文章中の「分配」という言葉は全て「元本」あるいは「元金」です。



さらに、2つのご質問にお答えする前にその前段でも1つ修正をさせていただきますと、この部分、

企業破綻時に劣後債に「元本」が戻ってくることなんてないでしょうし、どうせ紙くずになるリスクをとるなら株買えばいいじゃん、って個人的には思ってしまうんですが、どうなんでしょうね。劣後債でなく普通の社債でも、企業破綻時に戻ってくる可能性がゼロではない、ってだけで実質は戻ってこないだろうからそれなら劣後債の方が利回りが高い分お得、ってことでしょうか。




「社債の元本は企業破綻時に戻ってくる可能性がゼロではないというだけで実質は戻ってこない」
というのは現実と反します。


「社債の元本は企業破綻時に優先して支払われるため、何らかの金額が戻ってくることが多い(雀の涙ほどの場合もある)が、全額が戻ってくる保証はない。」

というのが実際です。つまり「元本は、まず、戻ってこない」ではなく、「元本は全額ではないかもしれないし雀の涙ほどかもしれないけど戻ってくることが多い」くらいの感じでしょうか。


読者の方の混乱を避けるため、まず、この2点の修正をさせていただきました。


その上で、頂いたご質問にお答えしますと、まずご質問@

@通常の社債で、破綻時に「元本」が戻ってくることってあるんでしょうか?
(劣後債より利回りが低い代償、として他にも何か劣後債に勝るメリットがあるんでしょうか)



答え:あります。劣後債よりも利回りが低い代わりに、劣後債に勝るメリットとして、債務弁済順位が高いという点があります。



「社債」というのは「債券」です。

「債券」というのは「自由に売買できる借金の証書」です。

「社債」というのは「会社が発行する債券」です。



というわけで社債を発行している企業にとって、社債の発行で調達した金額というのは借金、つまり返さないといけないお金、ということになります。この点が株式と大きく異なります。

この違いが分からないという方はこら辺の記事をどうぞ。

2006年01月28日
株と債券の違い【オススメ】
http://jovivi.seesaa.net/article/12389773.html

2008年03月22日
REITと不動産ファンド業者の話。あと、株を買う時に注意したいこと。【オススメ】
http://jovivi.seesaa.net/article/90452269.html

2009年03月21日
今、市場で起こっていること、株を買うということ。【オススメ】
http://jovivi.seesaa.net/article/116019044.html


あと、今日の話は決算書の仕組みが分からないとちょっときついかもしれません。と言っても決算書の仕組みを知ることは非常にカンタンです。決算書の読み方知りたい!簿記の仕組み知りたいって方、当ファンドの人気コーナー「サルでもカニでも分かる簿記シリーズ」を是非ご一読ください。簿記がどんなものなのか、決算書がどんなものなか、が分かります。カニ簿記シリーズのリンクはこちら。

2006年05月29日
カニでもわかる簿記と決算書の読み方C【キャッシュフロー計算書って何さ】
http://jovivi.seesaa.net/article/18526897.html

2006年05月28日
カニでもわかる簿記と決算書の読み方B【貸借対照表って何さ】
http://jovivi.seesaa.net/article/18484924.html

2006年05月27日
カニでもわかる簿記と決算書の読み方A【損益計算書って何さ】
http://jovivi.seesaa.net/article/18426637.html

2006年05月26日
カニでもわかる簿記と決算書の読み方@【簿記って何さ/なんで決算書なんか作るのさ】
http://jovivi.seesaa.net/article/18412361.html

このカニ簿記シリーズをもうちょっと詳しくして、決算書の読み方について具体的に解説した本がトップページや記事の最後にリンクしている「ど素人が読める決算書の本」です!まだお読みになってない方は是非!(照)



こんな会社が潰れたとします。まずB/Sの右側がこんな感じでした。

社債:100円
株式:100円

この会社のB/Sの左側の資産を処分したところ、全部で50円でした。この50円は優先順位の高い、社債の元本を弁済するために使われます。

社債:100円⇒50円
株式:100円⇒0円

ということになります。

だから、会社の資産がほんとにスッカラカンじゃない限り、何らかのお金が返って来ることが多いけど、それが8割なのか、1%なのかは、ケースバイケースでサッパリわからん、ということになります。


そして、社債のうち、普通の社債と「劣後債」の違い。

劣後債というのはその名の通り、債務弁済の優先順位が劣後する「債券」のことです。
会社が潰れた時に、まず通常債権や普通社債の元本返済が優先され、「それらを支払った後で、まだ残ってるお金があれば」返済されます。なければ当然ゼロ。その代わり、普通社債よりも金利が高く設定されています。

債務弁済の順位が劣る、劣後する、ということは万一会社が破綻した場合に元本の全額または一部を回収できる可能性に直結します。まさにリスクそのものということです。弁済順位が後なんだから金利が高いのは当然。

実際にその性格は債券より株式に近いです。

銀行の自己資本比率を計算する場合、例えばこんな状態だったとすると、

社債:100円
株式:100円
総資本:200円

この銀行の自己資本比率は
100円÷200円=50%
ということになります。

この銀行が、「ヤバイ!資金調達をしないと!」というわけで800円分の社債を発行して、資金を調達したとします。すると、自己資本比率は
社債:900円
株式:100円
総資本:1,000円
100円÷1,000円=10%と一気に低下してしまいます。銀行はBIS規制というやつで、「自己資本比率は最低何%以上ないとダメ」という風に規制されていますから、自己資本比率の低下は非常に困ります。

しかし、この時に、普通社債ではなく、「劣後債」で800円を調達をしたとすると、この劣後債は株式と同様に扱われるため、
社債:100円
劣後債:800円
株式:100円
総資本:1,000円
(株式100円+劣後債800円)÷1,000円=自己資本比率は90%、と全く事情が変わってきます。というわけで実際に株に近いものとして扱われてます。

で、この例の場合、後から発行された800円の「普通社債」を買った人と、800円の「劣後債」を買った人、では当然利回りは後者のほうが高くなりますが、万一この銀行が破綻して、破綻時の資産が50円しかなかった場合、前者は900円の普通社債保有者で50円を分けて「元本の一部」がが返ってきますが、後者の場合は50円は弁済順位の高い普通社債100円の返済に充てられて終わってしまうので、800円の劣後債保有者には1円も返ってきません。もちろん、もし、50円ではなく300円残っていたのならば、100円を先に返して残りの200円を800円分の人たちで分けることになります。

※分かりやすくするため簡略化してますから実際とは異なります。細かいツッコミはなしで。知らんで書いてるわけじゃないんで、そういう細かい話をしたい人はそういう細かい話をするサイトでやってください。


劣後債というのは発行する金融機関の側からすると、自己資本比率を上げながら調達ができ、既存の株主の利益を守ることができ、低コストの調達となり(株式同様に自己資本に勘定できて、株式並みの弁済順位なのに、株式のように利益分配をしたり会社の所有権・議決権を渡す必要がなく、金利は経費で落とせる。株の配当は経費で落せず、税引き後利益から。)、なんてメリットがあります。デメリットはもちろん、普通社債と比べた場合、支払い金利が高くなることです。

買う側にとってみれば、まさに、リスク・リターンのバランスで、これらの劣後債の性格を知った上で、自分の投資元本を毀損する確率やその程度などのいわゆる「リスク」と、「リターン」である利周り、が見合っているかどうか次第、ということになるでしょう。


というわけで、

◆当たり前だけど投資の原則は「ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターン」であって、利回りが高いのはリスクが高いから。リターンである利回りが高くてリスクが高くなっていないわけがない。

◆これよりもリスクの低い国債や銀行預金のリターンと比べて、「わずかばかりでも利回りが高く有利」「利回りが預金や普通社債などより少し高いという理由で人気」なんて書いてる新聞や雑誌がたくさんありますが、そんな記事を見つけたらその新聞や雑誌はその程度のレベルであり、その程度のレベルの人が書いてるものであり、その程度の信憑性のものなのだと見なし、以後鵜呑みにしないように気をつけましょう。リスクレベルの違うもののリターンを比べてどうすんだ。でもありがち。こういうのよくあります。なんせ素人が書いてることのほうが多いんですから。

◆劣後債は普通社債に比べて債務弁済順位が低く、破綻時の元本回収が他の人の回収が終わってからと後回しにされる。これが最大のリスク。

◆元本が返って来るかどうかはケース・バイ・ケース

◆「劣後債だからドーシタコーシタ」「劣後債は善ダ悪ダ」と言うよりは、個々の投資家がそれぞれのリスク・リターン感覚で個々の劣後債について考えたらよろしいのでは






ということで、ご質問のA
A劣後債が人気、という状況について、ジョン太郎さんは個人的にどんな感想をお持ちですか?


劣後債の性格を理解していて、個別の劣後債のリスク・リターンについて検討した上で妥当だと思って投資しているのならいいのでは。



もちろん、この1年くらいの間に消化された1兆円以上の劣後債のほとんどが、そういう感覚や検討なしに投資されたもんだと思ってますけど。
「預金より有利、国債より高利回り、高金利で人気」とかって言葉に踊らされて投資されたお金がほとんどでしょう。それは問題なんでしょうけど、とかくそういう時に販売する側の責任が問題視されますが、車だって宝石だって洋服だって家電だって、いいことをアピールするセールストーク中心なのは当たり前。むしろうるさい法律のおかげで金融商品のほうがリスクやデメリットの話を詳しく聞かされるんじゃないですかね。ろくに勉強もせず、説明の中身も咀嚼せず、都合のいい解釈や思い込みで判断し、勉強しないで投資する投資家にも問題があるんではないかなと思います。むしろ、勉強しない投資家のほうが問題か。わけがわからないのに、リスクも低くてリターンが高いなんて勝手な解釈して、思い込みで判断して、結果騙されたなんて言うのは厚顔無恥というものです。何度も言いますが「ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターン」です。リスクをとらずに高利回りなわけがありません。



どんな感想って、
「さもありなん。」
「今に始まったことじゃない」
「この件に限ったことじゃない」
というのが私の本当の感想に近いかもしれませんね。


私はハイリスクなものが好きです。ハイリスクなものの中で、私にとってはたいしたリスクじゃないと思っているものが世の中の人にとっては物凄くハイリスクに見えていて、ものすごいハイリスクなものとしてプライシングされてて、私にとってはたいしたリスクじゃないのに、物凄い安値で売買されてるものが好きです。劣後債に投資している人はそういう人じゃないですよね。




実際、みんなろくに検討せずに買うもんだから、劣後債の利回りはすごいプライシングになってます。債券ってのはみんなが買って値段が上がるほど利回りが低くなり、人気がなくて、リスクが高いと思われて、値段が下がるほど利回りが高くなります。

先ほど言ったように劣後債全体のプライシングを言ってみてもしょうがないと思いますが、いくつかの劣後債を見てみたところ、私個人のリスク・リターン感覚では、利回りが低すぎるという劣後債ばかりでした。すごい利回りで取引されているなぁというのが正直な感想。私の感覚だともっと高いリターンを提供してくれないとリスクに見合わないんですが、こんな利回りで取引されている、こんな利回りで買う人がいる、ってことはやっぱりリスクを知らないか、軽視しているか、無視している、ってことなんじゃないかなぁと思います。



以上長くなりましたが、くあむさんから頂いたご質問への回答と劣後債の解説でございました。

くあむさん、コメントとご質問ありがとうございました。


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posted by ジョン太郎 at 11:57| Comment(3) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
劣後債の事良くわかりました。ありがとうございました。よく分からないでマイカルの社債を買い
ひどい目にあいました。思ったのは社債はハイリスク ローリターンだと思いました。それからは社債は買いません。ましてや劣後債などは。名前からしていやですよね。劣後債なんて。
Posted by ろこ at 2009年06月14日 22:26
わかりやすいです。社債は会社によってはローリスクローリターンで投資するにはいい対象ですよね。
羹に懲りて膾を吹くような人は投資には向いてないと思います。
Posted by asd at 2009年06月15日 08:52
どうもありがとうございました。

まず「劣後債による調達だと社債と違って自己資本比率に悪影響が出ない」っていう点は理解してませんでした。
単に返済の順位が低い社債だと思ってましたので。

社債の場合で破綻時にどのくらい返ってくるものなのか、ってのが実際のところ全くイメージできなかったんですが、やっぱり「全く返ってこない」ってわけでもないんですね。


「預金や国債より高利回りで魅力が〜」みたいな解説はあちこちで目にし、すごく違和感を覚えたんで質問させていただいたんですが、いわれてみれば確かに今に始まったことでもこの件に限ったことでもなかったですね。

一つの知識として、今回の記事は本当に勉強になりましたが、実際の投資行動としては、私はやっぱり株だけでいいかなー、と思っています。
また時々質問をもってきますのでよろしくお願いします。
Posted by くあむ at 2009年06月15日 12:16
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