2008年11月29日

インドのテロとタイのデモと・・・金融市場よりも実社会が揺れた1週間

今週は金融市場よりも実社会が揺れた感じがしましたね。今日はそのへんの話を中心に。



まずはやっぱり、インドかタイの話か・・・
今回の、インドのテロとタイのデモの話は、突拍子もない話とか、急に降って湧いた話とか、ではありません。急にリスクが顕在化したわけでもありません。ずっと前から続いている一連、です。

じゃあまずはタイから。タイの話はここでもあんまりしたこともないのでちょっと詳しくしときましょう。今日の話なら株やファンドの推奨っぽくなってしまう心配もないですし。
タイの混乱はここ最近で急に始まったわけではありません。少なくとも2006年からの一連の流れの中で、です。どこまで遡ったらいいのかわかりませんが、遡る前にまず、タイには国王と首相がいますよってところから。タイには立憲君主制の国王が国家元首として存在していて、国王とは別に国政の最高責任者としての首相、がいます。現在の王様はプミポン国王。大変優れた頭脳と人格を持ち合わせているそうで、国民からは絶大な信頼と尊敬を得ています。タイの街中にはプミポン国王の肖像画があっちこっちにありますし、プミポン国王の顔が印刷されている紙幣を粗末に扱うだけでも不敬罪に処されるって話です。日本の天皇のように、その存在や権限などが憲法で規定される立憲君主制の国王で、元首であり軍の総帥ではあるとはいえ、政治の表舞台に顔を出すような立場でないのですが、割と政治の表舞台にも出てくることで有名です。92年の革命の際にも2006年の軍事クーデターの際にも、プミポン国王が出て行って仲裁しましたし、そこで彼が出て行くことで事態が納まるあたりがプミポン国王が国民から信頼と尊敬を集めている証左、とも言われてます。

2006年の軍事クーデターや今回のデモ・空港占拠というのは、国王のほうをどうこうという話ではなく首相や政権を、って話です。分かりやすく日本に置き換えて言えば国王は天皇、首相はまぁ首相に相当するわけで、今回の件は天皇家は全く関係なくて、総理大臣と自民党に対してどうこう、という感じです。麻生総理大臣を引き摺り下ろせ!自民党政権を潰せ!というもの。タイの首相というは、しばらくタクシンさんという人がやっていました。タクシンさんという人は2001年の選挙で、経済改革と貧困対策を掲げて圧勝して首相になった人ですが、在任中も私腹を肥やしてるとか、私財を蓄えてるとか、一族でおいしい思いをしているとか、野党や国民から結構批判が続いていた印象があります。で、2006年に陸軍が「タクシン首相を引き摺り下ろせ!」「今の政権を倒せ!」と軍事クーデターを起こします。で、プミポン国王が仲裁に入ってなんとか事態を収め、軍人出身のスラユット首相の暫定政権が発足します。

なんかどっかの国とつい比べちゃいますよね。「すいません、私、体調悪いので総理大臣辞めますわ」と言って総理大臣が仕事をほっぽりだして総理大臣を辞職して、与党内の身内選挙で「ハイ!僕らの内輪での話し合いの結果、僕らの次のリーダーは福田君に決めました!僕らは政権与党ですから、したがって福田君が次の総理大臣になります。拍手!」で、「すいません、ねじれ国会で出す案、出す案が全然通らないし、もうなんか、やってられないので、私、総理大臣辞めますわ」でまたしても総理大臣の仕事を無責任にほっぽりだして、またしても国民の声を全く聞くこともなく、与党内の身内選挙で「ハイ!僕らの内輪での話し合いの結果、僕らの次のリーダーは麻生君に決めました!」で・・・ってもうええわい!早く解散総選挙やろうぜ!・・・って話が逸れちゃった。ハーハーゼーゼー。

で、スラユット首相の暫定政権が誕生したのが2006年10月。そして、昨年5月にはタクシン元首相の所属していたタイ愛国党が選挙違反で解党処分になりましたが、タクシンさんの愛国党の人たちは「国民の力党」という物凄い小さな政党に一斉にお引越しをし、元バンコク都知事のサマックさんを党首に据え、この「国民の力党」が去年12月の選挙で勝利、第一党になり、6党の連立政権を組んで連立与党となり、サマックさんが今年1月、首相になりました。これで一応、軍政から民生への復帰です。

ところがこの政権は、結局は軍事クーデターで政権を追われたタクシンさんが率いていた愛国党の流れを汲む、というか「国民の力党」というそれまで物凄い小さい政党の蓑を被っているだけなわけで、結局中身は愛国党。愛国党の人たちが一斉にお引越ししたわけで、メンバーのほとんどが愛国党なわけですから。当然、ふたたび反政権・反タクシン派による反政府運動、サムラック政権打倒運動が過熱、今年9月にはバンコクに非常事態宣言が出されました。そんな中でサマックさんがテレビ番組出演による不正報酬を受け取っていたことが発覚、違憲と判断されて退任。で、9月25日に現首相のソムチャイさんが就任。サマック政権で副首相だった人なんですが、この人はタクシンさんの妹と結婚していて、つまりタクシンさんの義弟なわけで思い切りタクシン一族なわけです。で、反タクシン・反政権派による反政府運動は更に過熱。反政府団体は今年の夏の首相府占拠に続き、今回のデモと空港占拠、となったわけです。ね。急に降って湧いた話じゃないってことがお分かりになるかと思います。

結局ね、タクシン派がずっとしぶとく粘ってて、反政府運動をやってる人たちはもうタクシン派にはウンザリなわけで、引き摺り下ろしても、引き摺り下ろしても、またタクシン派が政権をとって、選挙違反で解党に追いやっても別の党にみんなで引っ越して、結局タクシン一族でウマー、みたいなことをされるのが本当にイヤでイヤでしょうがないわけです。この構図が変わらない限りはいくら王様が出て行って沈静化しても、また同じことが繰り返されるわけです。これで事態がおさまると、ニュース番組なんかでキャスターが平気な顔して「よかったですね。」「これで一安心ですね。」とかズレたコメントをして、しばらくしてまたタクシン派がウマー!なことをしたのをきっかけに反政府運動が過熱して、また事件が発生したりすると、「タイでまた事件です」とか「タイで再び・・・」とか「一体何が起こっているのでしょう」という寝ぼけた報道をするわけですよ。実際に今、まさにそういう報道になってますよね。進歩がないナリよ。タイは急にこうなったわけではなくて、以前からこうですよっと。

私の知り合いや、友人の同僚などでも、今タイに行っていて帰国できなくなっちゃってる人が何人かいます。無事帰国することを祈ってます。


・・・このペースでいくとヤバイかな・・・全部読む頃には皆さんグロッキーになっちゃいますよね。ちょっとまいていきます。

次、インド。インドもねーーーーー。話すと長くなりますし、なんせこっちは政治の問題よりややこしい宗教の問題。あんまり深入りしたくないのでサラリーっといきますよ。インドのテロもそれだけ取り上げちゃうと何で急に!?みたいな話になっちゃいますが、別に突拍子もない話、ではないです。って報道の仕方をすべきです。マジで。部分的に切り取りすぎ。

皆さんご存知のように、インドの人の多くがヒンズー教徒です。国民の7割以上がヒンズー教徒。インドで今もなお影響が残っているとされる身分制度のカースト制度はこのヒンズー教の制度です。したがって、カースト制度ってのは他の宗教の人は一応関係ありません。まぁそうは言っても7割以上の人が・・・って話ですからね。そりゃあ実生活や社会的には他の宗教の人たちへの影響もあるわけです。で、イスラム教の人は1割ちょっと。でもなんせあの人口なもんで、たった1割ちょっとでも、「イスラム教徒の人数」では世界3位(インドネシア、パキスタン、に次ぐ。)。ってなると、インドとパキスタンとバングラデシュの話をしないといけなくなるけど、そもそもこの3国の地理的な位置関係はわかりますか?大雑把に言うと、左からパキスタン、インド、バングラデシュ、の順に並んでます。

パ  イ  バ
キ  ン  ン
ス  ド  グ
タ     ラ

こうね。
で、もともとパキスタンとバングラデシュは1つの国。つまり、インドをはさんで飛び地みたいになって、西側のパキスタン(現パキスタン)と東側のパキスタン(現バングラデシュ)でした。

パ  イ  パ
キ  ン  キ
ス  ド  ス
タ     タ
現     現
パ     バ
キ     ン

こうね。
もっと元々はインドも含めて1つの国。インドと東西パキスタンが分離独立して別の国になったのはヒンズー教とイスラム教の対立です。ヒンズー教のインドを挟んで、東西に飛び地になったイスラム教のパキスタンができて、さらにそのパキスタンの東側部分の東パキスタンが1971年に第3次インド・パキスタン戦争の後に独立してバングラデシュになりました。

つまり、

イ  ヒ  イ
ス  ン  ス
ラ  ズ  ラ
ム  |  ム

こうね。
西パキスタン(現パキスタン)と対立してたインドは、この東パキスタン(現バングラデシュ)の独立を応援してました。というわけで、インドにヒンズー教徒が多くて、パキスタンやバングラデシュにイスラム教徒が多いのも、パキスタンとインドが仲が悪いのも、パキスタンはイスラム教が国教でほとんどの人がイスラム教徒でイスラム教徒が他の宗教に改宗したら死刑って話ですが、バングラデシュのほうはもう少し緩くてイスラム教徒が8割くらいいるけど実はヒンズー教徒も結構多い、なんていうのも当たり前と言えば当たり前。

今回のテロでも、インドのシン首相は早い段階から武装グループのことを「恐らく外部との関連がある」と語ってましたが、あれは外部との関連があるってのは外国とつながりがあるってことであり、この場合はもう他ならぬパキスタンとつながりがある、ってことであり、要はパキスタンのイスラム勢力と関係のあるグループによる犯行だ、という内容です。もともと、インドとイスラム教、インドとパキスタン、ってのはそういう関係なんだって知ってれば今回の同時多発テロは、今TVで散々報道されてる内容とはちょっと違って見えてくるはずです。実際、今回の件は降って湧いたようなものとか、今に始まったこととか、突拍子もないこと、といった類のものじゃないです。インド国内でのイスラム組織によるテロはこの数年の間にも何回もありましたし、一昨年なんかは何百人もの人がなくなった列車同時爆弾テロがありましたよね。

そして、タイミングということでは、先週もアルカイダからオバマ氏に対する警告声明が出されてましたし、FBIはサンクスギビング中にアルカイダがNYなど米国内で地下鉄テロを計画中との情報があったため注意を呼びかけたりしたタイミングであり、「今回のオバマ氏の当選はこういう事態を招くかもよ」「オバマ政権への移行のタイミングではこういう恐れがあるよ」「揺さぶりかけられるかもよ」って声が各所から出ていたわけで、「なぜ今!?」「なぜこのタイミングで!?」というタイミングではなかったはずです。インドネシアでも先日、バリ島の爆破テロ事件の犯人の死刑が執行されて、テロの危険性が指摘されてましたし、世界的に今現在はテロの危険性が高まっていて、世界中のどこでテロが発生しても不思議ではないわけで、特にイスラム勢力との衝突がもともと多い地域ではその危険性は特に高まっていたはずです。

ターゲットという点でも、インドの資本主義の象徴都市ムンバイが狙われたのも、インドの資本主義の象徴のようなタタ財閥の創始者であるジャムセトジー・タタさんの作ったタージマハルホテルが狙われたのも、って話です。

今回占拠されたホテルは日本人のビジネスマンが行くと必ずと言っていいほど泊まるホテルばかり。私の周りでも、こないだ行って泊まったよとか、去年泊まったよ、なんて人が多くて、みんなぞっとしてました。


インドとタイの話でだいぶ長くなっちゃった・・・

今週はシティグループに対する大規模な救済策が発表されましたが、もうシティは完全に器として生かされてるだけ、という感じですね。もう完全に潰れてるし、終わってるし、本当にどうしようもないような状態なんだけど、潰せないから無理矢理いろんな管を身体に突っ込んで血液やら薬やらを送り込んで心臓を無理矢理機械で動かして、とにかく生かしている、という感じ。シティのリストラは物凄いことになってます。ってシティに限らないか。

ここに来て、あちこちの金融機関で物凄いリストラが加速してます。特に外資系の金融機関はこれから12月の年度末に向けて、という時期なので、バッサバッサいってます。私の知人の中にも突然のリストラの憂き目に遭ってる人が結構いますし、ボーナスカットは当たり前。友人・知人からは彼らが働く金融機関のリストラ話ばかりが聞こえてきます。金融機関は今こういう状態なわけですからリストラは当たり前です。それは会社としてみればそうなんだけど、リストラされる人たちの多くは今回の件とは全く関係がない人たちで、収益をちゃんと稼いでた部門の人たちも問答無用でバッサリ斬られて、そこら中でリストラやってるもんだから転職先もなかなかなくって、ってのを見てるとなんだかね・・・

そして新卒のほうにも、って話で内定取り消し者人数は331人で過去10年で最悪、というニュースが出てましたね。98年がワーストで1,077人だったらしいですが。最近4年は2桁台だったらしくそれが今年急増と。私もヨメさんも弟も思い切り前回の就職氷河期の時期に就職したので、あの頃を想い出すねぇという話をしてますが、あの頃も凄かったですよ・・・毎週1つ金融機関が潰れてましたしね。以前、その頃のことをちょっと書いたことがあるので、ご興味ある方はどうぞ。
http://jovivi.seesaa.net/article/89672424.html

続けますと、先日、日本綜合地所は来春採用予定の大学生53人全員の内定を取り消したそうです。10月1日の内定式ではえらい人が「不動産業界は大変だけど、うちは大丈夫」みたいなことを言ってたらしいけど。まぁ、「うちもそろそろヤバイわけですが・・・」とは言わんわな・・・

そしてモリモトが民亊再生と。不動産業の大型倒産が続きますねぇ。これでまた日本の銀行が貸し渋って・・・とか言われたらたまらんよね。銀行の友人とかがちょっと不憫で。もともとそっち系の融資とか不動産のリスクとる融資とかは、リスクが高すぎたし不動産の価格判断ができない融資できないし不動産価格の値崩れの可能性なんか考えるととんでもない金利になっちゃったり、で日本の銀行ではとてもとてもそんな案件にお金貸せなくって、そこに外資系金融機関がリスクとってバンバン貸付していて、その貸付をしていた外資系金融機関が潰れたり撤退して、じゃあ、と言って日本の銀行さん貸してよ、借り換えさせてよって言われても、そりゃ貸さんわ。元々貸せないって言ってんじゃん。これを貸し渋りとか言う?なんて構造も理解せずに、薄っぺらな原稿の上だけで得た知識で、「銀行には本来、社会的な使命があるはずなのに」「私たち預金者から預かったお金があるはずなのに貸し渋り貸し剥しを・・・」とか知った風な口で言うニュースキャスターがいると。ニュース番組は「ちゃんとした番組」、ニュースを読んでる人は「ちゃんとした人」「いろいろ知ってる人」、と妄信する人たちは信じちゃうんだからさ。適当なことばっかり言ってる人がいるなんて思ってないんだからさ。影響力あるんだからちゃんとしたコメントしてくれよって思うんですけどね。

木曜日には韓国の新興財閥のC&グループが破綻。また、同日、韓国中央銀行はFRBとの通貨スワップ協定で40億ドルのドル資金調達を発表。韓国もちょっと苦しくなってきてる感じしますね。

OECD(経済協力開発機構)が最新版の経済見通しを発表しました。

GDPの前年比実質成長率予想、単位%
左から08年、09年、10年の順

+1.4 -0.4 +1.5 OECD加盟国全体

+0.5 -0.1 +0.6 日本
+1.4 -0.9 +1.6 アメリカ
+1.0 -0.6 +1.2 ユーロ圏

+5.3 +3.0 +4.5 ブラジル
+6.5 +2.3 +5.6 ロシア
+7.0 +7.3 +8.3 インド
+9.5 +8.0 +9.2 中国

・・・まぁこんな感じか。

今週も日米欧でたくさんの経済指標が発表されましたが、どれも実体経済の悪化を示すものでした、の一言で済ませちゃおう。


今週はこんなんでした。インドとタイの話だけ読むだけでも疲れちゃいますよね・・・最後まで読んでくれてありがとうございます。


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posted by ジョン太郎 at 11:21| Comment(3) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも読ませていただいております。
今回のタイとインド特にタイのネタは、毎年遊びに行っているので気になるネタです。
タクシンさんの時は結構景気が良かったみたいですが、変わってから、あまり良くないとタイで駐在の友達が話してました。。
今回の件も早く落ち着いて欲しいです。
マスコミの件は心中お察しします…
読む方は記事をそのまま受け入れる方が多いから大変です。
ブログ頑張ってください。
Posted by ヨッシー at 2008年11月29日 23:36
いつも分かり易く解説していただき、
ありがとうございます。

ほんと、勉強になります。

これからもずっと読ませて頂きます!
Posted by kim at 2008年12月04日 08:04
ヨッシーさんへ
こんにちは。コメントありがとうございました!いつもながらお返事遅くなっちゃってすみません。
これからもどうぞよろしくお願いします。

kimさんへ
はじめまして。コメントありがとうございます。
kimさんから頂いたようなコメントを頂くと本当に励みになりますし、続けてきて本当によかったなと思います。というか、続けてくることができたのも、有難いコメントをくださる方や、いつも読んでくださっている方の応援があってのものです。みなさんの支えがなければ絶対にこんなに続けてるくることはできなかったと思います。
コメント本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
Posted by ジョン太郎 at 2008年12月06日 13:24
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