2008年08月02日

1人当たりGDPランキング。ちょっと経済のことに詳しくなれますよ。【オススメ】

今日は1人当たりGDPランキングの話とか経済の話ですよ。って言ってもぜんぜん硬くないし、たぶんおもしろいですよ。しかも経済のことに結構詳しくなれちゃうと思います。



みなさんは「1人当たりGDP」って聞いたことがありますか?平たく言えば、経済の発展度合いとか経済の効率性とか、を表すもんです。

GDPってのはGross Domestic Productの略で、用語集なんかを引くと、「一定期間内に国内で生み出された付加価値の合計」なんて書いてあったりしますが、それじゃわかんないですよね。日本語とは思えないほどイメージが全く涌かないって人も多いんじゃないでしょうか。GDPってのは「経済の規模」を表す数字だと考えると分かりやすいです。もうちょっと踏み込むなら、その国で発生する「儲け」の合計。

付加価値ってのは物っ凄く簡単に言うと、「売上−費用」、です。これっていわゆる「儲け」ですね。例えば、私が大好きなアジを釣って、山田君に100円で売って、山田君はそれを開きにして150円で大松君に売って、大松君はそれを焼いていい匂いをさせて200円で販売して、食堂を経営している柴田君はめんどくさがりなので大松君が200円で売ってた焼いたアジを買ってきてそのままお客さんに出して300円もとった。この場合、それぞれの付加価値は

ジョン太郎:100円(コストなし)
山田君:150円−100円=50円
大松君:200円−150円=50円
柴田君:300円−200円=100円


これがそれぞれの人がつけた付加価値なのです。そしてもし彼ら4人と柴田君の食堂でアジの開きの焼いたやつを食ったお客さん、の5人だけが住む国で、1年間の経済活動がこれだけだったとしたら、この国のGDPは100円+50円+50円+100円=300円、ということになります。ちっちゃい経済です。でもこの300円という数字、ちゃんと経済の規模を表してますね。これを売上高でやっちゃうと大変。ジョン太郎の売上100円+山田君の売上150円+大松君の売上200円+柴田君の売上300円=750円、これが売上高の合計ってことになります。これってね、100円のものを100円で売って、それを買った人がまた100円で売って・・・ってのを繰り返していくだけでとんでもない数字になります。でもこれって経済活動じゃないですよね。何も利益を生んでない。何も儲けを生んでいない。何の付加価値もついてないんです。ただ、モノを人から人へ回しているだけ。

GDPってのは売上の合計じゃなく、その国で1年間に生み出された付加価値の合計、儲けの合計、利益の合計、です。なんで株の話でGDPが伸びる話がしょっちゅう出てくるのかが分かりますね。付加価値を生み、儲けを出し、利益を生むのは、企業だからです。で、企業の利益が伸びればその企業の株の配当が増え、株価が上がると。

ところで、さっきのプロセスを10人がかりの漁でアジを1匹釣って、10人がかりでアジを少しずつ開いて干して、50人がかりで焼いて、30人がかりで食堂のテーブルまで運ぶ・・・だと、ものっすごく経済の効率が悪く、同じ付加価値、同じ利益を生み出すのに物凄くたくさんの人が必要な社会、必要な経済、ということになります。それを表すのが「1人当たりGDP」です。GDPを人口で割るだけ。さっきの例だとGDP300円を5人で生み出したわけですから、1人当たりGDPは300円÷5人=60円。ところが今の大掛かりで効率の悪い経済だと100人でGDPは同じ300円ですから、1人当たりGDPは300円÷100人=3円。どっちの経済の効率がいいのか、1人当たりGDPを比べれば簡単に分かりますね。

1980年のアメリカの1人当たりGDPは12,255ドルで、中国の1人当たりGDPは312ドルでした。中国人40人でアメリカ人1人が生み出す付加価値を出すという状態です。27年後、2007年にアメリカの1人当たりGDPは45,845ドルにまで増えました。30年弱で4倍近くになってます。一方の2007年の中国の1人当たりGDPは2,461ドル。30年弱で9倍近くまで増えましたが、それでもアメリカの19分の1です。なんだ、中国ってすごい成長してるっていうけどまだまだだなって思うかもしれませんが、よーく考えてみてください。

アメリカ人が45,845ドルを稼ぐ間に中国人が1万ドル稼げるようになることは可能でしょうか。トルコの今の1人当たりGDPが9,629ドルですから、そんなにメチャクチャな数字ではない感じします。

今のアメリカのGDPは13.8兆ドルです。一方の中国のGDPは3.3兆ドル。アメリカの人口は3億人、中国の人口は13.2億人です。
アメリカ:3億人×1人当たり46,000ドル=13.8兆ドル
中国:13.2億人×1人当たり 2,500ドル=3.3超ドル
ですが、もし中国の1人当たりGDPが10,000ドルになったとすると、
中国:13.2億人×1人当たり 10,000ドル=13.2超ドル
これだけでアメリカに肩を並べることになります。

ここで、問題、に行く前に。
米国、英国、ドイツ、ポルトガル、ノルウェー、イタリア、トルコ、ロシア、韓国、中国、インド、ブラジル、を1人当たりGDPが高い順に並べるとこうなります。

(単位:ドル)
83,922 :ノルウェー
45,845 :米国
45,575 :英国
40,415 :ドイツ
35,872 :イタリア
21,019 :ポルトガル
19,751 :韓国
9,629 :トルコ
9,075 :ロシア
6,938 :ブラジル
2,461 :中国
978 :インド


ね。なんとなく分かるでしょ。ノルウェーの経済効率が高いのはなんでか分かりますか?
原油です。
北海油田の原油。北海油田というのはそのほとんどがイギリスとノルウェーの領土の中にあり、ノルウェーは人口もそんなに多くないのにたくさんの原油がとれて、というわけガッツリ儲かっているわけです。原油掘って売るってのは極めて付加価値率の高い商売ですし、ましてやあまり大きくない経済規模の中にそういう効率のいい商売がドーンと含まれていると、全体の平均的はグンと上がるわけです。これがノルウェーの1人当たりGDPが高い理由。ルクセンブルグなんかもコアになってる商売の種類は違えど、同じような構造で1人当たりGDPが極めて高くなってまっす。ルクセンブルグはとても小さな国で、人の数も少ないですが、超付加価値率の高い商売が盛んです。なんでしょう?原油じゃないですよ。答えは、金融です。

で、問題。

次の10カ国を1人当たりGDPが高い順に並べてください。

日本、フランス、カタール、シンガポール、マレーシア、ベトナム、バングラデシュ、カナダ、アルゼンチン、オーストラリア
カタール




チク・・・タク・・・




チクタクチクタクチクタク・・・




いいかな?




正解は、こんな感じ。





72,849 :カタール
43,485 :カナダ
43,312 :オーストラリア
41,511 :フランス
35,163 :シンガポール
34,312 :日本
6,948 :マレーシア
6,606 :アルゼンチン
818   :ベトナム
455   :バングラデシュ
(単位:ドル)


日本はシンガポールより下です。

かつて、日本は高度経済成長の結果、先ほど挙げたノルウェーやルクセンブルグと並び、世界でも3本の指に入るほど高い1人当たりGDPを誇っていました。ところが近年、世界中の国が1人当たりGDPを上げていく中、日本は取り残され、順位を落とし続け、直近ではシンガポールに抜かれ、20年以上ぶりに世界ランキング20位外にまでランクを落としました。

各年の、世界の1人当たりGDPランキングのTOP30の移り変わりを見てみましょう。

20080802-2.bmp

単位はドルです。表中の順位は各年の1人当たりGDPの高い順で、TOP30の国の1人当たりGDPと国名を表示してます。日本が見事にランキングをすべり落ちているのがおわかりになると思います。注目していただきたいのは、日本の1995年の1人当たりGDPと2007年の1人当たりGDPです。思い切り下がっちゃってます。しかも、1995年の1人当たりGDPを一度も超えることができていません。じゃあ95年1位のルクセンブルグはってえと、46,360ドルから104,673ドルに2倍以上に増やしてますし、95年2位のスイスは順位こそ6位に落としたものの、1人当たりGDPそのものは44,804ドルから58,084ドルにしっかり増やしてます。

同じ期間の、世界の主な国々の1人当たりGDPの推移を比べてみると、日本の成長が95年でピタリと止まり、むしろそこでピークを打ったかのようになっている様子がよくわかります。

20080802-3.bmp

左半分がGDP額(1人当たりGDP×人口)、右半分が1人当たりGDP(GDP÷人口)の推移です。
1人当たりGDPは付加価値の合計ですから、付加価値を利益として捉え、その付加価値を稼ぐ主体が企業で、多くの国で企業の経済活動のかなりの部分が上場企業によって行われてることを考えると、GDPの伸び→企業収益の伸び→配当や1株当た利益の伸び→株価の伸び、ということが期待できます。

ところで95年がピークでそれ以降一度も95年の水準を回復できていない日本の1人当たりGDPですが、もう1つ95年にピークをつけて、それ以降一度もその水準を越えることができていないものがあります。それは何でしょう。

チクタクチ(ry

ドル円の為替レートです。ドル円の為替レートは1995年4月19日に1ドル79円75銭をつけました。これが対ドルで最も円高になった瞬間です。そしてこの2年後の1997年にピークを打って、それ以降一度もその水準を回復できていないものがあります。それは日本の労働者人口です。人口のピークではなく、労働者人口の数です。少子高齢化が進み、働く人の数が97年をピークに減り続けているのです。そして今も毎年毎年ピークを更新し続け、今も史上最高水準にあるのは・・・国の借金の残高です。入ってくる以上に使う、借金してでも使う・・・を繰り返しているツケです。この辺の国力と為替の話は以前詳しくお話したことがありますよね。後で関連記事をまとめてご紹介しようと思ってるのでその中に載せておきますね。

あ、ちなみにGDPや1人当たりGDPは一般的に米ドルで表示されるので、ドルに対して自国通貨が強くなった国の数字は上がり、弱くなった国の数字は下がります。95年の1人当たりGDPが最も高かった理由をドル円が最高レートの79円を記録したからだ、という方もいますが、為替レートの下落なんかも含めて国力の低下だと思うんですけどね。


日本が1人当たりGDPランキングでこれ以上順位を落とさず、シンガポールを再度追い抜くためには、国の構造的な改革が必要なんじゃないでしょうかね。「構造改革」って念仏のようになっちゃってますけど。いくら口で言ってもね。念仏みたいに唱えてもね。選挙期間中になると近所迷惑も考えずにシャウトしてもね。
内閣改造してみたりしてもね・・・全くワクワク感がないですよね。


落ちぶれてきてるとは言っても、まだまだお金はあるんだし、国を挙げて世界最大の投資家になっちゃうとか、原油はとれなくても金融とか医療とかテクノロジーとか知的財産とか高付加価値ビジネスの一大センターにするとかね。まぁそんな計画は霞ヶ関のエリート官僚のみなさんによってこれまでにも死ぬほどたくさん計画されてきたんでしょうけどね・・・
プラットフォームになるためにはやっぱり英語が一番のネックか・・・金融も貿易も空港も香港やシンガポールにもってかれちゃね・・・存在感どんどん薄くなってっちゃうよね。そういや環境問題でもサミットがアレでしたしね。やっぱり私のお金をおいておく国はここじゃない、ってことになっちゃうんですよね。


1人当たりGDPの話とか、中長期の国の成長の話とか、国の成長に伴う株の上昇の話なんかはこのへんの記事もよろしければどうぞ。

2007年09月08日
市場の上げ下げ、中長期投資、あとはインドと中国の話
http://jovivi.seesaa.net/article/54451767.html

2008年02月16日
為替のこと
http://jovivi.seesaa.net/article/84316988.html
(先ほど後で紹介しますと言った記事はこれです)

2007年05月28日
日本の失われた10年と今後のことをちょっと考えてみる。となりのビニールハウスは気になる?
http://jovivi.seesaa.net/article/43181442.html



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posted by ジョン太郎 at 23:51| Comment(2) | TrackBack(0) | ジョン太郎のマメ知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも興味深い記事、ありがとうございます。
先日、板のほうで、
「ずっと、ホールドしてるのがいいのか、下がったとき、買い直しするのがいいのか・・・」
という話がチラリと出たので、2007/2/18の記事を引用させていただきました。

インドの記事「インフレファイターの姿勢を鮮明に」、
適切な判断とそれに伴う発言と行動、むしろ安心できます。
株価はかなり下げたけど、慌ててポートフォリオから外す理由にはならないと思うんですけどね。
日本政府や日銀にも「適切な判断とそれに伴う発言と行動」を少しでも期待したいですけど・・・

そうそう、ジョン太郎さんの本を斜め読みしていたウチの副社長のその後の報告。
今期本決算で、「んん?」と思ったところを会計士さんに質問したところ、
単純ミス?があったようで「決算手当」として支給することに。
本気タックルにいつも「はぁ・・・」状態だったのに「ど素人が読める決算書」のおかげで、
チョット意識が変わったみたいです^^ありがとうございます。
会計士さんはお詫びと「親戚のウチのとうもろこし」を届けてくれました・・・おベンツに乗って。
「いい人だから」と副社長・・・甘いぞ!
いえ、とうもろこしも甘かったんですけど、安心してお任せしてても、こんなこともあるんですね。
知らないより、知っておいたほうがいいってことはあるようです。
公認会計士さんが高給だってことも、おベンツを見て知りました・・・コレは関係ないけど。






Posted by コジコジ at 2008年08月04日 12:00
コジコジさんへ、
コメントありがとうございました。

決算書の本がお役に立ったようで何よりです。そう言っていただけると、頑張って書いた甲斐があるというものです。決算書の読み方ってマスターしちゃおうと思えば割とカンタンにマスターできちゃう割にその効果は絶大です。決算書が読めるのと読めないのとでは様々な場面で大きな差が出ると思います。是非多くの人が読めるようになってほしいものです。決算書を読めるのは一部の人だけ、とか、決算書が読めるとちょっと周りに自慢できる、という現況のほうが普通じゃない気がします。

また、このブログの記事を紹介して下さってありがとうございます。そういう機会にご紹介して頂けるというのは大変光栄ですし、本当に励みになります。ありがとうございます。

私は知人から、「今売って利益確定しとくべき?」とか「とりあえず儲かった分だけでも確保しといたほうがいいんじゃないの?」とか「買い増しのタイミングってどういう時なの?」とか「いつ売ればいいの?」とかって聞かれた時は、大体このへんの記事

http://jovivi.seesaa.net/article/83403382.html
http://jovivi.seesaa.net/article/101217327.html
http://jovivi.seesaa.net/article/76115678.html
http://jovivi.seesaa.net/article/101217327.html
http://jovivi.seesaa.net/article/95490939.html

のリンクを送って、これ読んでから自分で考えて好きなようにしたらいい、と言ってます。投資は自分の判断で自分の責任で行うべきものですし、私は未来も正解も知らないですから、売れ買え、売るな買うな、を言うことはできなもんで、こういう話を教えてあげるのに留めてます。それでどう思うかは個々人次第ですし、それでいいんじゃないかなと思ってます。

これからもよろしくお願いします。
Posted by ジョン太郎 at 2008年08月04日 22:30
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